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脚本家 新藤兼人

20/2/7(金)

『雲がちぎれる時』(2/8〜2/10、2/12〜2/14 ) シネマヴェーラ渋谷「脚本家 新藤兼人」(2/8〜3/6)で上映 中井貴一の父佐田啓二が交通事故で亡くなったのが1964年だから、それから56年もの歳月が流れている。 『雲がちぎれる時』は佐田が亡くなる3年前、35歳の時の主演作。代表作『君の名は』『喜びも悲しみも幾歳月』『秋刀魚の味』の影に隠されて見られる機会は皆無だが、監督五所平之助の平明な演出、佐田の静謐な演技が光る佳作としてもっと評価されていい作品だ。 だから今回の「脚本家 新藤兼人」特集上映30本のなかにラインナップしたプログラム・ディレクター氏に深謝しつつ、本欄でおススメする次第。 本作の原作は田宮虎彦の『赤い椿の花』。脚本家新藤兼人の代表作群に含まれるといっても過言ではない『銀心中』と『足摺岬』の2作も田宮が原作を提供、二人の縁は深い。だが『赤い椿の花』の評価は低く、現在は絶版。原作タイトルよりも映画タイトルの方が、はるかに文藝の香気を放っているのも珍しいケースだ。 舞台となった高知県四万十市と土佐清水市の境にあった伊豆田峠は、大小のカーブと切り立った崖、狭い道幅、急勾配がある危険極まりない山道だった。そのバスの運転手(佐田)と車掌(倍賞千恵子)、今は零落したがかつては名家だった医院の娘(有馬稲子)の運命が絡み合うメロドラマ。既に失われてしまった四国の風景がふんだんに映されている“風景映像遺産”としても貴重。本作出演の3年後に交通事故で亡くなる佐田の人生を予兆したかのようなラスト・シーンが痛々しい。 今回の上映が35ミリプリントで見られる最後の機会かもしれない。

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