2020-2021年の年末年始は結構忙しくしていました。12月30日まで仕事があって、1月3日の夜から生放送の仕事があったので、お正月休みは31日、1日、2日の3日間だけ。東京でひとり静かに過ごそうとも思ったんですけど、愛知県に住む高齢の両親のことが気になるので、感染防止対策をしながらこっそり実家へ。

でも悩みました。緊急事態宣言が出る前ではあったものの、新幹線に乗って移動をするのはいかがなものかと。母親は「無理して帰って来なくてもいいんじゃない？」と言ってくれていたんですけど、その一方、3つ上の兄は、銀行の支店長のくせにすごいユルくて。「まぁ感染対策をしっかりやって帰ってくればいいよ。いや帰って来てよ」とやけに私を実家に帰らせようとして。

これには理由が。実は当初、この正月休み、Go To トラベルを使って、実家近くの温泉旅館を予約し、両親、兄の家族、いとこ家族、さらに兄の部下である次長家族と15人ほどでプチ旅行を計画していたんです。でも、Go To トラベルが停止となり「さすがに無理だろう」とキャンセル。なので兄としたら、その埋め合わせとして、次長ファミリーを家に招待し私と対面させたいという計画をしていたらしく。だから、やたらと帰省するように促していたんです。

兄の家は、実家の横に建っているんですけど、元旦、私が実家でくつろいでいると「次長の家族が来たから顔出してくれよ」と強めに言ってきて。顔を出すくらいならと兄の家へ行くと、奥様と子供3人がいて非常に賑やか。奥様はノリの良い人だし、子供たちは可愛いのでそれなりに楽しんでいたのですが。さらなる兄のお願いが非常にイラッとするもので。

「うちの銀行の女性の社員さんが今度結婚するのね。でも、俺も次長もその披露宴に出られないから、お祝いの動画を撮るんだけど佳代子も入ってくれない？」と。意味が分からなくないですか？　まったく知らない方だし、こっそり実家へ帰ってきているのに一緒に動画を撮ったらバレてしまうし。それに、まったく外を出歩くつもりはなかったからメイク道具を持ってきてない状況で。「メイク道具を持ってきてないから無理。スッピンは嫌だから」と断ると、兄は「化粧なんてしなくて良いから」とノンデリカシーなことを言ってきて。「いやいや、そっちが良くてもこっちが嫌なんだよ！」と抵抗するも「お願い！　頼むよ。今回だけ！」と頭を下げてきたので、さすがに折れてやりました。結局、マスクをしたまま、だいぶ無愛想な感じでお祝いメッセージを撮影。兄もあまり納得してないようでしたが、さすがにもう一度とは言えないようで「まぁ、いいか」と。

それで東京へ戻ってきたのですが、やはり気になるんですよ。その女性の社員さんからしたら、そんな経緯は知らないし関係ないわけで。せっかくのお祝いの場なのに、マスクをした無愛想な私が面白くもないコメントをしていて。シーンとした場内の雰囲気を想像したら、恐ろしくなってきて。

結局、撮り直しました。東京のマンションにて私ひとりで。でもしっかりメイクをしてテンション高めに。「愛知県の山の中にある銀行の支店なので、きっと綺麗な空気と水が新婦○○さんのような美人を生んだんでしょうかね。新郎の○○さん、50でも60でもバツイチでも構いませんので、良い男性がいらしたら是非紹介してください」などとオベッカを入れながら。

お正月早々ドッと疲れました。今年の正月の思い出は、「デリカシーのない兄にイラッときた」「兄の部下の方へのお祝い動画を2度も撮った」というとこですかね。

構成・文：松田義人（deco）

プロフィール

大久保佳代子おおくぼ・かよこ

1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
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