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深田恭子を巡る争いがヒートアップ 『はじこい』が問いかける“ゴールを見失わない”こと

リアルサウンド

19/2/20(水) 12:00

「今、いちばん何が大事?」

参考:“残念なところ”が最大の魅力? 『はじこい』永山絢斗演じる雅志に幸あれ

 『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)第6話。人生をかけて二人三脚で東大合格を目指す春見順子(深田恭子)と由利匡平(横浜流星)に、このシンプルな問いが立ちはだかる。目指すべきゴールはどこなのか。自分は今、何に向かって努力しているのか。そのゴールに近づくには、どんな手順を踏むべきなのか。

 その筋道を立てることは、ドラマの中で何度も出てきた数学的帰納法での証明問題に似ている。「nが正の整数のとき、次の等式 1+2+3+…+n=1/2n(n+1)が成り立つことを証明せよ」と言われると難しく聞こえるが、実は私たちが日常的に考えていることと、そう遠くはない。

 さながら、左辺は「今の自分」、そして右辺は「理想の自分」。nという不確定な部分に、一般的に明確なこと(n=1)を当てはめて成立するとき、仮定する未来(n=k)が成り立つなら、その先の未来(n=k+1)も成り立つ、と証明するもの。解き方は、左辺のnにそれぞれ代入し、右辺(ゴール)の形に近づけていく。

 例えば、今の順子にとって証明したい等式は「匡平の今の学力×n=現役東大合格」。匡平が何もしなければn=1。つまり学力はずっと変わらない、が成り立つ。では、nにどんなkを代入すれば、右辺のゴールが成り立つと仮定できるのか、を考える。

 そして「n=(東大に落ちた)順子の実力」では、ゴールが成り立つとは思えないと判断した順子。「n=東大専門塾」を代入しようと目論む。もちろん、匡平の右辺には「(順子と一緒に)現役東大合格」という大事なカッコ書き部分が含まれているのだが……。感情ゆえに揺らぎ、理論通りにいかないのが人生の証明問題。だからこそ面白くて、歯がゆいくて、愛しい。

 エリート商社マン・八雲雅志(永山絢斗)の思考回路は、さすが東大卒のロジカルシンキング。A=B、B=C、よってA=Cと数学的に進める仕事はスムーズに進むが、恋愛の証明問題では勘違いばかり。「男女が酔った勢いで一夜を共にする=一線を超えた仲」という公式に、山下一真(中村倫也)が「順子の部屋に泊まった。お互いに酔った勢いだった」という情報を代入して、ふたりが一線を超えたのではないかと早とちり。大いに狼狽え、勢い余って山下を殴ってしまう。さらに、順子の職場までおしかけて追求する始末。

 だが、順子の口から出てきたのは「(身内の)雅志にだけは知られたくなかった」という思いもよらない言葉。すると今度は「雅志にだけは知られたくなかった×恥ずかしそうに話す=雅志は特別! 順子は雅志が好き! 俺たち両想い!」と誤った解を導き、1人で大はしゃぎ。雅志よ、20年以上も順子が「自分を恋愛対象として見てもらえない理由=身内である」の要素を毎回見落としているから、いつも同じところでつまづくのだ……と、教えてあげたくなるいじらしさ。

 一方、匡平と山下の間も順子を巡る争いがヒートアップしていく。匡平が「東大に合格して順子と想いを通わせる」というゴールを目指す上で、山下の存在はさっさと変形して等式から消してしまいたい要素。「俺んだよ、引っ込んでろ」という強気な言動も、絶対に合格するんだと信じてやまないまっすぐさも、大人になった山下にとっては眩しい限り。そんな健気に理想の未来を信じる匡平に感化されたのか、山下も「今の自分×n=順子と会いたい」の式に「n=順子の気持ちの変化を待つ」を代入。会い続けた先に、順子と付き合う未来が成り立つことを信じて。しかし、鈍感女子の順子を、根っからの肉食系男子の山下が、どれほど待てるのか。予告編では、すでに我慢の限界らしい行動に出ていて、ニヤけてしまう。

 さらに、順子が一大決心して門を叩いた東大専門塾では怪しげな眼差しのライバル塾講師・百田明奈(高梨臨)が登場。そして、まさかの松岡美和(安達祐実)と雅志の部下・西大井司(浜中文一)が急接近……と、さらに複雑化していく人間関係。守りたいもの、手に入れたいもの、失いたくないものが増えていく中で、感情ばかりが先走ってしまいそうなとき、自分に問うべきは「今、いちばん何が大事?」。これは、私たちの日常でも活かすことができそうだ。ゴールさえ見失わなければ、なかなか解けない恋の証明問題も、しいてはややこしい人生そのものも、楽しむ余裕が生まれるかもしれない。(佐藤結衣)

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