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新田真剣佑×北村匠海W主演映画『サヨナラまでの30分』を支える、劇中バンドECHOLLのボーカル力と存在感

リアルサウンド

20/1/24(金) 12:00

 ECHOLLというバンドの名前を知ったのは、「瞬間(sayonara ver.)」と「もう二度と」という曲を耳にしたのがきっかけだった。

 第一印象で「お、いい声」と思った。伸びやかで情感に満ちたハイトーンの歌声と、太い芯を持った力強く色気のある歌声。タイプの違う、けれど、どちらも浸透力を持った二人のボーカリストが、センチメンタルなメロディをわけあっている。

 歌っているのは、新田真剣佑と北村匠海(DISH//)。ECHOLLというのは、2人がダブル主演をつとめ1月24日に公開される映画『サヨナラまでの30分』の劇中バンドだ。

 1月22日には「瞬間(sayonara ver.)」「もう二度と」を含むECHOLLのナンバーと作曲家/ピアニストRayonsによる劇伴音楽を収録したオリジナルサウンドトラック『サヨナラまでの30分』もリリースされた。

ECHOLL 「もう二度と」 (MV フル ver.)

 「青春音楽ラブストーリー」を謳う本作では、バンドが一つの重要なモチーフになっている。新田真剣佑が演じるのはECHOLLのボーカリストとして将来を嘱望されつつも1年前に他界した「宮田アキ」。そして、彼が遺したカセットテープを偶然拾ったことをきっかけに、そのテープが再生される30分だけ「アキ」と入れ替わるようになった「窪田颯太」を北村匠海が演じる。

 物怖じしないキャラクターでポジティブな「アキ」と、人付き合いが苦手で就職活動に苦戦している「颯太」は、対称的な性格ながら共に音楽に対する情熱と才能の持ち主として描かれる。二人が一つの身体を共有しながら、メンバーの「ヤマケン」(山科健太/葉山奨之)、「重田幸輝」(上杉柊平)、「森 涼介」(清原翔)、そして「アキ」の恋人だった「村瀬カナ」(久保田紗友)を巻き込み、メジャーデビューを前に解散したECHOLLを再び動かし音楽の喜びを蘇らせていくというストーリーだ。

 なので、なにしろ歌に説得力がないと始まらない。まだ未完成だけど荒削りな才能を持つバンドが起こす化学反応のマジックが楽曲に封じ込められていないと意味をなさない。

 そういう意味では、ECHOLLというバンドも、劇中で歌われる6曲の作られ方も、とても興味深いものになっている。

 というのも、楽曲に携わっているそれぞれの立場に「挑戦」が見受けられるのだ。

 音楽プロデューサーをつとめたのはandropの内澤崇仁。デビュー10周年を迎えたバンドでの活動に加えて楽曲提供や映画の挿入歌の制作も行ってきている内澤だが、劇中に登場するバンド「ECHOLL」全体をプロデュースするというのは初めてのことだ。

 さらには、内澤自身が作詞作曲を手掛けた「風と星」に加え、雨のパレードが「もう二度と」、odolが「瞬間」、Ghost like girlfriendが「stand by me」、Michael Kanekoが「真昼の星座」、mol-74が「目を覚ましてよ」という劇中歌を手掛けている。それぞれのアーティストにとっても、楽曲提供は一つの挑戦だっただろう。キャリアを重ねた作曲家や音楽プロデューサーによる職人的な仕事ではなく、あえて若手のロックバンドやシンガーソングライターが曲を書き下ろしたというのは、おそらく、そのことによって宿る“熱”のようなものを物語とシンクロさせるという狙いがあったはずだ。

 そして何より、新田真剣佑と北村匠海の存在感が映画を支えている。

 特に、ミュージシャンとしてのキャリアを重ねてきたわけではない新田にとっては、今回の役柄は新境地だっただろう。バンドのボーカリストとしてのレコーディングも初めてだったはず。けれど、おそらくこの先、彼は歌手としてほうぼうから求められることになっていくんじゃないだろうか。そう感じさせるほど、その歌声には表現力と色気がある。

 一方、北村はさすがDISH//でステージ経験豊富なだけに、バンドマンとしての骨のようなものを声にも感じる。役柄では内向的な性格だが、劇中でも歌い始めた瞬間に場を掌握するようなパワーを感じさせる。俳優と歌手というのはシームレスな存在であるけれど、二人の歌声からは「俳優が歌う」ということの必然も感じる。

 6曲それぞれにバンドのカラーが出てきているのも面白い。mol-74が手掛けた「目を覚ましてよ」は、シンプルながらアコースティックギターと歌だけで掴むフックを持った曲。雨のパレードが手掛けた「もう二度と」は、劇中で「アキ」が思いを寄せる「カナ」に贈ったという設定の曲なのだが、その向こう側にソングライター福永浩平の情緒的なメロディセンスが透けて見える。

 Ghost like girlfriendが手掛けた「stand by me」は、いわゆるギターロックとちょっとテイストの違いを感じる曲になっていて、それが「颯太」が加わったことで変わっていくECHOLLというバンドの表現になっていることも上手い。そして物語ではロックフェスのステージが一つのクライマックスになっているのだが、Michael Kanekoによる「真昼の星座」もまさにそれをイメージさせる半径の大きな曲になっている。劇中で「アキ」がしっとりと歌い上げるピアノバラードの「風と星」も含め、作曲者が異なることで生まれる幅の広さをストーリーと絡めていくような構成だ。

 そして、エンディングで流れる「瞬間(sayonara ver.)」が効いている。スネアの連打から始まるこの曲だけは内澤ではなく楽曲を提供したodol自身がアレンジを手掛けていて、エッジの立った聴き応えを感じさせる。昨年に配信リリースした「身体」もすごくいい曲だったし、odolはもっと飛躍していくと思っている。

 ECHOLLは、あくまで「劇中バンド」だ。パーマネントな活動をしていくわけではない。でも、関わったそれぞれにとって、今後に向けての一つのターニングポイントになるかもしれない。そんな予感もする。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter

■サウンドトラック・アルバム情報
ECHOLL/Rayons『サヨナラまでの30分』
1月22日(水)発売
初回生産限定盤(CD+フォトブック)¥3,300税抜
通常盤(CDのみ)¥3,000税抜
完全生産限定カセット¥3,000税抜
※映画公開劇場とSony Music Shopでの限定販売

■配信情報
「もう二度と」ダウンロードはこちら

ECHOLLオフィシャルTwitter
SONY MUISC オフィシャルHP

■映画情報
新田真剣佑 北村匠海
久保田紗友 葉山奨之 上杉柊平 清原 翔
牧瀬里穂 筒井道隆 / 松重豊
監督:萩原健太郎 脚本:大島里美  
エグゼクティブプロデューサー:豊島雅郎、茨木政彦
企画・プロデュース:井手陽子 
音楽:Rayons 音楽プロデューサー:内澤崇仁、安井 輝
制作・配給:アスミック・エース 
©2020『サヨナラまでの30分』製作委員会
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(C)2020『サヨナラまでの 30 分』製作委員会

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