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柄本佑は誰かを愛するとき、最高に魅力的になる “尾高さん”の虜になってしまう理由

リアルサウンド

20/3/8(日) 6:00

 『おしゃれイズム』まで! 柄本佑は、3月1日に放送されたトーク番組『おしゃれイズム』(日本テレビ系)でも瞳が少女まんがのように光っていた。要するに照明で目を光らせる撮影テクニックである。たとえば、レフ板の向きを傾け、太陽光を反射させて眼に光を入れるのはカメラアシスタントのお仕事。これがなかなか難しい。ほかに、特殊な照明を使用して光らせるのは主として女性の撮影で駆使される。どんな光を入れるか工夫のしどころ。ハートや星などいろいろある。昔はプロテクだったが、昨今はInstagramやYouTubeで一般人が発信するときのために皆さん、自撮りライトを活用している。決め手は光。

参考:『知らなくていいコト』最後の鍵は『エデンの東』? ついに浮かび上がった乃十阿の本性

 このテクニックが、柄本がヒロインの元カレ役を演じているドラマ『知らなくていいコト』(日本テレビ系)ではふんだんに用いられ、ドラマがはじまるやいなや、「柄本佑、イケメン!」とSNSを中心に盛り上がりを見せた。そうしたら、『おしゃれイズム』でもしっかり眼に光が入って、ドラマモードになっていたので恐れ入りました。

 柄本佑が、瞳のなかに光をいっぱいたたえ、照明のせいか眩しそうな表情をして、髪の毛をふわっとさせ、お肌も美肌メイク(血色がよくなってる)、眉、アイラインなどしっかり描いて、口を大きくあけずややウィスパー気味にしゃべり(『花より男子』で花沢類を演じたときの小栗旬的な)、姿勢もちょっとよくして、すっかりイケメンキャラとなり、吉高由里子相手にキュンとするラブシーンを演じている。

 柄本佑演じる尾高由一郎は動物カメラマン。優しい笑顔とスマートな仕草、それがカメラを構えたとき一転、鋭くなるギャップも魅力的。吉高演じる週刊誌記者・真壁ケイトとはかつて同僚であり恋人だったが、いまは別れて尾高は別の女性と結婚し、子供もいる。ところが、ケイトと恋が再燃してしまう。禁じられると燃えるもので、ふたりが遠慮しながら接近していくラブシーンはぞくぞくするものがある。

 映画『火口のふたり』で昔なじみの女性と抑えきれない熱情でひたすら睦み合うシーンの生々しさ、本能というつかみどころのないものを見せつけていた柄本佑は、『知らなくていいコト』でも全力で愛情を表現する。ケイトと車のなかやスタジオ、ラブホテルなど閉ざされた場にふたりきりのときは、本能が破裂しそうに見える。妙に生々しい恋人感に注目が集まった末の第6話、海でケイトにジャケットを着せる場面は秀逸だった。着せる角度とスピードが完璧で、完全に「決めた!」と思ったら、第7話でケイトがスクープの逆恨みで刺されたとき、とどめをさせられそうになったところを、身を挺して助ける場面というダメ押しの一撃。世の女性はもう柄本佑の虜。ここまでくると、もはやビジュアルがどうこうは関係なくなっていて、ただ視る者の心を駆動するのである。

 よく見れば、唇の形もきれいで、まつげも長く、元々背は180センチ以上あって、痩せていて見栄えはいい。とはいえ、はじめてこのドラマのゆるふわイケメン柄本佑を見たとき、柄本佑を知っている誰もが眼をこすったと思う。個性派演技派俳優として認識されてきて、ラブストーリーの相手役という属性とは距離があると誰もが思っていたからだ。

 だがそこは柄本佑。演技職人の才能をふんだんに発揮して、みごとに二枚目に化けている(褒め言葉です)。それを見て私は、弟の柄本時生も、父の柄本明も、性格俳優や怪優の部類かと思うが、やろうと思えば“イケメン”を演じることができるんじゃないだろうかと思ったほどだ。ヘアメイク、照明という技術と、演技の力で、人はある程度美しくなれる。だがやっぱり柄本佑の場合、演技の力に注目したい。

 以前、柄本佑にインタビューしたとき、「『できない』と思ったときこそ絶対チャンスで。それをいかにしてやるのかが演劇の楽しさのはずなんですよね」(ワニブックス「plusact」playact より)と言っていたから、『知らなくていいコト』でもそれをやっているんじゃないだろうか。

 前述の柄本明、弟・時生、亡くなった角替和枝(母)の俳優一家に生まれた柄本佑は子供のときから家族で映画の話ばかりしていたという話は有名。映画も演劇もものすごい量を見ているので、古今東西、二枚目の芝居を脳裏に焼き付けているのだと思う。おそらく、どういう立ち方、どういう喋り方、どういう角度がかっこいいかわかって取り入れているはず。例えば、往年の映画スター、ジェームズ・ディーンの斜に構えた立ち方や仕草など一時期の俳優たちは研究し取り入れていたと聞く。

 柄本佑も膨大な映画アーカイブの中から誰かの仕草を取り入れているに違いない。なんなら、先日、日本テレビで深夜放送されたルキノ・ヴィスコンティの古典的名作『ベニスの死す』の究極の美少年・ビョルン・アンドレセンのアンニュイな表情すら尾高に見えてくる(妄想過ぎ)。でも、あのやや伏し目がちな眼は、なんともいえず色っぽい。朝ドラ『あさが来た』(NHK総合)で「白蛇はん」と呼ばれていた若旦那役も思えば、あやしい色気があった。そういえばこれも宮崎あおい演じる妻を愛し抜いて、すごく魅力的な人物になっていた。誰かを愛する気持ちを演じているとき、柄本佑は最高に魅力的になる。前述した“本気”とは演技に対する“本気”である。

 素敵な彼氏的な柄本佑の新たな魅力も良いが、第9話では、ケイト尾高の仲を不倫だとして異常なまでの執着を見せた野中春樹(重岡大毅)に殺気に満ちた眼を向けたときが最高だった。やっぱりこういうダークなほうがいいかも。若手の重岡が柄本の芝居に刺激されてスリリングな場面になっていたのも良かったと思う。

 妻子はいるが、ケイトを想う尾高。いまのところ不倫なわけだが、最終的にどうなるのか。最後はどんな表情を見せてくれるのか。『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)の佐藤健と並ぶ、最高に素敵な彼氏感を出してくれるだろうか。いずれにしても最後まで“本気”で挑むことは確信できる。(木俣冬)

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