人数の町
20/8/31(月)
(C)2020「人数の町」製作委員会
選挙の投票は操作されている、ネットの感想は「絶賛」も「ディスる」のもヤラセ――そんな、うがった見方をする人の“妄想”を、“現実”にあるものとして見せてくれる。すべて、巨大な組織が、居場所のない人を集めてやらせているのだ、と。
この映画を、“町”から脱出した人の証言に基づいて作られたノンフィクションだと言われでも、全面否定する自信はない。
資金源や経営陣を含め、“町”の全体像は描かれない。末端の職員と、そこに収容されている数十人が、氷山の一角として描かれるのみ。それでも、とてつもなく大きな組織だと感じさせる。ラスボスはいるのだろうが、最後まで姿を存在すら感じさせない。低予算であることを逆手にとった、みごとなシナリオだ。
全体に熱くない。どこまでも冷たい。お化け屋敷的怖さではないが、背筋が凍る。
ディストピアものは、現実を半歩先取りして描き、「このまま放置していると、こうなるぞ」と警鐘を鳴らすものが多い。しかし、もうとっくにこんなことは現実になっているような気になる。
消極的・受動的に生きている青年が、あるきっかけで、積極的・能動的になるのだが、その変化すらが消極的・受動的という難しい役を、中村倫也が汗まみれにならない熱演で、見事に演じている。
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