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西島秀俊が全身全霊込めた「ドライブ・マイ・カー」の魅力語る「真実が映っている」

ナタリー

「ドライブ・マイ・カー」壮行会イベントの様子。左から濱口竜介、西島秀俊、三浦透子、霧島れいか。

「ドライブ・マイ・カー」の壮行会イベントが本日7月4日に東京・スペースFS汐留で行われ、キャストの西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、監督の濱口竜介が登壇した。

本作では妻を亡くした舞台俳優・演出家の家福が寡黙な専属ドライバーのみさきと出会い、自身の喪失感と向き合っていくさまが描かれる。家福を西島秀俊、みさきを三浦透子が演じ、家福の亡き妻・音に霧島が扮した。

西島は「架空の人物が架空の物語を生きているんですが、そこに真実が映っていると感じる瞬間が多かったです。日本の今の人たちの心の中を描きながら、普遍的なものとつながっている」と感想を伝え、「『3時間切りました!』って聞いて、2時間59分だったんです(笑)。長い映画は観る側も覚悟すると思うんですが、物語の中に没頭できるのであっという間でした」とアピールする。三浦も「目も耳も捉えて離さない。緊張感をずっと味わえる映画体験でした」と伝えた。

濱口について「ほかの監督とは違う演出方法をたくさん持っている方」と述べる西島は「本読みをひたすらやり続けたり、撮影はしないけれど、登場人物がかつて経験したであろう場面をリハーサルでやったり。いろんな作業を用意してくださって、すごく刺激的な体験でした。本読みが好きになっちゃいましたね」と笑みをこぼす。また三浦が「本読みはテキストに目を落として、相手の顔を見ないので、音だけで表情や心を読み取る。それは運転しているときのコミュニケーションの取り方に近いので、本読みの時間が家福とみさきの時間に直結したと思います」と話すと、西島も「特に家福とみさきは一番距離が遠い2人。車の中で会話を重ねていく中で、誰よりも理解し合っていく過程が描かれていく。本読みの作業が、演じるうえでプラスに働きました」と同意した。

村上春樹の短編小説を映画化した本作。濱口は「短編作品の中に長編にし得る魅力をもったキャラクターがいる。1つの問いかけみたいなものにどう答えていくのか? 村上さんにとってはそれが文章で、自分の場合は役者さんと一緒に作っていくもの。だから、なかなか苦い物語ではあるんですが、演じる喜びを感じられるような環境を整えたいと思っていました」と明かす。

村上の反応について問われた濱口は「原作と映画のディテールは違いますし、村上さんのほかの作品の一部をこの映画に取り入れています。こういう形でないと映画化はできないと思っていました。最初に映画化の許可をいただきたいとお手紙を書いた際に、原作との違いを説明しました。具体的な感想はありませんでしたが、“許可”だけお返事として返ってきました」と明かし、まだ村上が本作を観ていないことに触れつつ「『私の地元の映画館で拝見します』と言っていただきました。実際村上さんがどう感じられるのか、誰よりも気にしています。どこかで感想を伺う機会があれば、こんなにうれしいことはないです」と思いを口にする。

村上に伝えたいことはあるかという質問が飛ぶと、西島は「高校生の頃から村上さんの作品のファンでした。どこかで、村上さんの作品の登場人物を演じることがあればと考えていたように思います」と話し、「この作品のオファーをいただいたとき、どうしてもやりたいと思いましたし、文字通り、全身全霊を込めてやらせていただきました。村上さんに気に入っていただける場所があれば幸せです」と述べた。

イベント中にはキャストが濱口作品の魅力を語り合う場面も。西島は「人と人の気持ちがつながり切れない。それを厳しく描きつつも、言葉で乗り越える瞬間が映っていると思います」と語り、三浦は「濱口さんは言葉というものが持つ恐ろしさ、大きな力というものをわかっている方。そんな濱口さんがたくさん時間を掛けて、キャラクターに選んだ言葉のパワーがものすごくて。言葉に引っ張ってもらうような、不思議な体験ができました」と説明した。そして霧島は「言葉の1つひとつが真実を突いていて、繊細。人が自分のことなのに見つけられない、見失っている何かを見つけてくれる。教えてくれる力があると思います」と力説する。

第74回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されている「ドライブ・マイ・カー」。この日、三浦、霧島、濱口が映画祭に参加することが発表された。濱口は西島がスケジュールの都合で参加できないことに関し、「この件についてだけは、西島さんの事務所を恨みます(笑)。西島さんあっての映画。ずっと出ずっぱりで、出ていないシーンはわずかです。参加できないことは寂しい。ですが、きちんと日本に素晴らしい俳優がいるんだと示していきたい」と意気込み、「今日は皆さんの作品をめぐる言葉を聞いて、本当に感動しました。この人たちに出ていただけてよかったと改めて思う機会になりました。皆さんの演技を見て何度も驚いた。ですから素晴らしいものが映っていると監督として断言できます」と言葉に力を込めた。

「ドライブ・マイ・カー」は8月20日に東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開。

(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

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