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IZ*ONE、“今”の心境を刻み込んだ新作『Oneiric Diary(幻想日記)』 サウンドの隅々から漂う刹那的なムード

リアルサウンド

20/6/22(月) 6:00

 新型コロナウイルスの流行が収まりつつある韓国では、そのタイミングを見計らったように人気アーティストのリリースラッシュが続いている。ガールズグループではBLACKPINKがレディー・ガガとのコラボレーション曲「Sour Candy」を5月末に発表したのを皮切りに、TWICEや宇宙少女といったビッグネームが新作を携えて活動を再開。そして6月15日、K-POPシーンをけん引するグループのひとつであるIZ*ONEも3枚目のミニアルバム『Oneiric Diary(幻想日記)』でカムバックを果たした。

(関連:IZ*ONE、新作『Oneiric Diary』に高まる期待 収録曲詳細やハイライトメドレーから感じる変化

 誰もが予想できたことではあるが、本作はリリース直後にMelOnやBugsといった主要オンラインミュージックストアのチャートで1位を獲得している。また、CDの売り上げもかなり良いようで、このまま順調に行けば、歴代ガールズグループで最も売れたアルバムとなった前作『BLOOM*IZ』(48万枚)を超えるかもしれない。

 とはいえ、過去の成功例を踏襲した無難な内容で勝負しないのが彼女たちらしいところだ。「La Vie en Rose」「Violeta」「FIESTA」といった花をモチーフにしたサウンドメイクは『BLOOM*IZ』でひと段落。今回は“優雅なカリスマ”と“日常の少女”というイメージを持つ12人のメンバーを、相反するふたつの要素ーー“幻想”と“日記”で表現した(PR用の資料から引用)という。言葉だけでは少々わかりにくいコンセプトだが、その狙いはリードトラック「Secret Story of the Swan(幻想童話)」を聴けばわかるだろう。

 この曲のテーマは「夢は叶う」。IZ*ONEは“想像していたすべての瞬間が/目の前に近づくそのときまで/あなたのためにダンスを踊るわ”と熱く歌い、リスナーを励ます。“日記”を書くように地道に続けていれば、“幻想”だと思っていたこともいつかは現実になるというメッセージは、エキゾチックな香りが漂うEDMサウンドによってさらに説得力が増しているようだ。

 『Oneiric Diary(幻想日記)』は他の収録曲も同様のカラーで仕上げている。ポジティブなオーラに包まれたダンスナンバー「Pretty」は、サウンドメイクの点ではそれほど新鮮さがないものの、歌詞は“私と夢を見よう/準備はできているよ”といった風に過去のどの作品よりも勢いがあるのが印象的だ。また、トライバルハウスの「Rococo」も“さあ、ここよ/私の手を握ってついてきて/もう退屈な観念から抜け出して”と、いつになく押しが強い。

 サウンドの面で最も評価すべきなのが、「Merry-Go-Round(回転木馬)」だ。ApinkやWanna Oneなどの作品で知られるe.one(チョン・ホヒョン)をコンポーザーとして起用した同曲は、きらびやかなストリングスを挿入した70年代ディスコミュージックである。これまでのIZ*ONEにはなかったタイプの曲だが、e.oneはグループのピュアでエレガントなイメージを一切変えることなく作り込んでいることに驚く。

 この曲はダンスも是非チェックしてほしい。『Oneiric Diary(幻想日記)』をリリースした当日にテレビ番組に出演した彼女たちは、大きなステージをフルに使った優雅なパフォーマンスを披露している。特にサビの部分で見せた回転木馬が上下する様子を表現した振り付けは斬新かつアーティスティックであり、多くのファンが魅了されたに違いない。

 “幻想日記”というコンセプトのほかにも、本作には注目すべきポイントがある。それは日本語の曲が収められていることだ。ご存じの通り、IZ*ONEは新型コロナウイルスをはじめ、さまざまな事情で日本での活動が十分にできていない。それゆえに日本で待っているファンたちに直接自分たちの気持ちを届けたいと思ったのだろう。「Secret Story of the Swan(幻想童話)」と「Merry-Go-Round(回転木馬)」の日本語バージョンは、どちらも、〈あなたのために歌い踊る〉ことを約束している。もちろん〈あなた〉とは、日本のWIZ*ONE(IZ*ONEのファンの呼称)だ。

 ニューアルバム『Oneiric Diary(幻想日記)』で新たなフェーズに入ったIZ*ONE。本来であれば手放しで喜びたいところだが、一抹の寂しさを感じるのはなぜだろうか。2021年4月の活動終了まであとわずかというのもあるが、サウンドの隅々から「とにかく今を楽しもう」という刹那的なムードが漂っているせいかもしれない。さきほど触れた「Secret Story of the Swan(幻想童話)」の歌詞の一節“想像していたすべての瞬間が/目の前に近づくそのときまで/あなたのためにダンスを踊るわ”も、解散が近づくメンバーたちの心境を反映しているとも考えられるが、それは深読みしすぎだろうか。(まつもとたくお)

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