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王道の「タイムリープモノ」が功を成した? 『テセウスの船』深まる謎解き考察

リアルサウンド

20/3/14(土) 6:00

 今クールドラマの中で確固たる人気を誇っている『テセウスの船』(TBS系)。毎回SNSではトレンド入り、様々な考察や主人公である心(竹内涼真)に対して「なぜその行動をしたんだ!」「心さんの脚力だけはすごい」などのツッコミも飛び交っている。

 本作には、様々な伏線が張られ、徐々に犯人が明らかになっていくミステリー的側面が盛り上がりを見せているが、それに加えてタイムリープ要素があることで、よりおもしろさに拍車がかかっているように感じる。

【写真】みきおが執着する鈴の演技に絶賛の声

 物語の軸は、警察官である父・佐野文吾(鈴木亮平)が音臼村で起きた殺人犯として罪に問われ、現代で家族がバラバラになり後ろめたさを抱えながら生きる心が、過去にタイムリープし事件の真相を追っていく。1度目のタイムリープでは、ノートに記載のある一連の事件が起こる前の平成元年に戻る。心は父親が犯人でないことを知り、事件が起きないように一人で奮闘していくが、やることが全て空回りし現代に戻ったときには、文吾は変わらず冤罪で獄中に、母・和子(榮倉奈々)と兄・慎吾(番家天崇)は心中して亡くなっており、状況をむしろ悪化させてしまった。

 そんな中でも文吾の冤罪を晴らすことを諦めない心。タイムリープ前は婚約者で、タイムリープ後は記者になっていた由紀(上野樹里)と再びの出会い、協力もあり、戻った現代でついに真犯人を暴き、捕まえるあと一歩のところまで迫った。しかし、健闘むなしく、2度目のタイムリープで音臼小事件が起こる予定の2日前にたどり着く。そして、文吾と協力しながら、真犯人のみきお(柴崎楓雅/安藤政信)を止めるため、そして現在を変えるためにさらに奮闘が続いている。

 これまで、タイムリープモノといえば、アニメ映画、実写映画の『時をかける少女』や、『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系)、『僕だけがいない街』(映画、Netflix)、『トドメの接吻』(日本テレビ系)、『JIN-仁-』(TBS系)、『信長協奏曲』(フジテレビ系)とジャンル問わずに名作がたくさん作られてきた題材だ。ちなみに、実写ドラマ化された『時をかける少女』(2016年、日本テレビ系)で、主人公役の黒島結菜、未来人役の菊池風磨がタイムリープをしている中、何もできずにいた竹内は、本作で4年越しの念願のタイムリープを果たしているとも言える。

 タイムリープは過去を変えることで現在(過去から見ると未来)が変わる設定を使い、現実だけでは為せない物語を作ってきた。成就しなかった恋愛を過去を変えることで相手に素直な気持ちを伝えようとしたり、復讐のために過去を変えたり、家族や大切な人を守るために過去を変えることなど、それぞれの主人公が色んな目的を持って、奮闘してきた。現実を生きている私たちは決して不可能な展開だからこそ、ロマンも感じるというのも大きいだろう。

 また、本作ではミステリーパートを助長するようにタイムリープがうまく盛り込まれている。ミステリーの醍醐味といえば、張られた伏線をヒントに、その後の展開を謎解きしていく考察。本作では、山下智久の前に妖精が登場したり、山崎賢人がキスしたりするわけではなく、未だにタイムリープする仕組みが明かされていない。不明瞭なその仕組みは黒幕を推理する上で、色んな可能性を広げられる要素にもなっている。例えば、現に、タイムリープできているのは心さんだけではないかもしれないとも推測できるのだ。

 そして、タイムリープにより事件が起こる前の佐野ファミリーそれぞれの人柄や生活、そして関係性が明らかになっていき、心はどんどん家族への愛が深まり、どんどん感情移入して思いが熱くなっている視聴者も多いだろう。本筋のミステリーだけでなく、家族ドラマとしての感動も生まれる『テセウスの船』。犯人探しというわかりやすい楽しみ方に加えて、涙を流せる深みのある骨太さも持ち合わせる構造が、功をなした結果かもしれない。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

(岡田拓朗)

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