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2.5次元、その先へ Vol.3 海外進出も視野に、エイベックス・山浦哲也プロデューサーの飽くなき挑戦

ナタリー

21/1/15(金) 20:30

山浦哲也

日本のマンガ、アニメ、ゲームを原作とした2.5次元ミュージカルが大きなムーブメントとなって早数年。今、2.5次元ミュージカルというジャンルは急速に進化し、洗練され、新たなステージを迎えている。

その舞台裏には、道なき道を切り拓くプロデューサー、原作の魅力を抽出し戯曲に落とし込む脚本家、さまざまな方法を駆使して原作の世界観を舞台上に立ち上げる演出家など、数多くのクリエイターの存在がある。この連載では、一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会発足以降の2.5次元ミュージカルにスポットを当て、仕掛け人たちのこだわりや普段は知ることのできない素顔を紹介する。

第3回には、ジャンルレスな挑戦を続けるエイベックス・エンタテインメントの山浦哲也プロデューサーが登場。劇団四季で舞台監督を務めたのち、脚本・演出家として活動した経験を持つ山浦は、どのようなポリシーで舞台を制作しているのか。2.5次元ミュージカルの海外進出も視野に入れているという、今後の展望についても話を聞いた。

取材・文 / 興野汐里

元舞台監督であり脚本・演出家、今は“縁の下の力持ち”

エイベックスと聞くとまず音楽事業を思い浮かべる人が多いだろう。浜崎あゆみをはじめ、日本を代表するアーティストを数多く輩出してきたエイベックスは、現在、音楽のみならず、アニメ、映像、舞台と、幅広いジャンルのエンタテインメント事業を手がけている。同社が舞台事業に本格的に参入したのは、2007年に行われたブルーマングループの来日公演から。その公演を担当していたのが、のちにエイベックス・エンタテインメントの舞台事業を牽引することになる山浦哲也だ。演出家志望だった山浦は劇団四季に研究生として入団し、舞台監督として活動。退団後はフリーランスの脚本・演出家として活動するなど、プロデューサーのほかにもさまざまな立場で舞台に携わってきた。他社のプロダクションマネージャーとしてブルーマングループの来日公演に参加していた際、現・エイベックスの黒岩克巳代表取締役社長と出会い、入社に至ったという。

そして山浦は、2011年にスタートした舞台「銀河英雄伝説」を皮切りに、マンガ・アニメ・ゲームを原作とした舞台作品を次々とプロデュースしていく。CAPCOMのゲームをもとにした舞台「戦国BASARA」シリーズや「BIOHAZARD THE Experience」、マンガ作品から生まれた舞台「ReLIFE」舞台「義風堂々!!」のほか、多くの作品を手がけた。

山浦がこれまでに手がけた2.5次元ミュージカルで特に思い入れがあるのは、迫力あるアクションと作り込まれたキャラクター造形が魅力の舞台「戦国BASARA」だという。「舞台『戦国BASARA』自体は2009年にスタートしたのですが、2015年の舞台『戦国BASARA vs Devil May Cry』で他社さんから主催・制作を引き継ぎまして。当時、すでにネルケプランニングさんやマーベラスさんが開拓されてきた2.5次元ミュージカルに、この作品でようやく参入できた、という喜びが大きかったです」。また山浦は、2.5次元ミュージカルだけでなく、原作ものの作品を上演する際に、原作のイメージを保ちつつ、良い意味で壊していくことを大切にしている。「舞台でしかできない、舞台ならではの表現方法があると思うので、お客様にわかりやすく原作の魅力を伝えることができたら、原作にプラスオンした作品ができるんじゃないかと思っています」とこだわりを語った。

かつて脚本・演出家として活動した経験は、現在のプロデューサー業にどのように生かされているのだろうか。山浦にそう問いかけると、「クリエーションに関しては、脚本・演出家を全面的に信頼してお任せしているので、彼らの領域にはできるだけ立ち入らないようにしています」と意外な答えが返ってきた。「プロデューサーの仕事は、1枚でも多くチケットを売ること。お客様に認めてもらって、前向きに観劇を検討していただくところからすべてが始まるので、そのためにどうすべきかという方策を練るのが僕たちの仕事だと思うのです。最終的には、キャスト・スタッフに『この作品に携わってよかった』と胸を張ってもらえるような環境作りができたらと思っています」と、あえて一歩引いたところから作品作りに関わっているのだと話す。クリエイターの気持ちがわかるからこそ、山浦は“縁の下の力持ち”に徹し、陰ながら舞台を支えている。

ジャンルレスな挑戦、IR事業も視野に

山浦が所属するエイベックス・エンタテインメントには、山浦を含む5名の演劇プロデューサーが在籍しており、2.5次元ミュージカルからストレートプレイ、ミュージカルまで十人十色、多様な舞台を手がけている。ある意味、ジャンルレスであることが特徴とも言える。これについて山浦は「プロデューサーそれぞれに、やりたいことや得意分野があると思うのですが、あえて担当するジャンルは固定していないんです。あくまで僕個人の考えですが、ジャンルを限定しないほうが、今後広がっていくであろうIR事業(統合型リゾート)に参入する際に可能性が広がるのではないかと思っていて」とビジョンを明かしつつ、「もともとエイベックスは音楽事業から始まった会社なので、ほかのジャンルに挑戦するときに、“参入させていただく”という思いが会社としても常にあるのだと思います。何も武器がない中で皆さんに存在を認めていただくには、いろいろなジャンルを幅広く一生懸命やるしかない。その経験から得たものを次につなげて、新しいエンタメを作っていこうという思いが強くあります」とエイベックスの根幹にあるエンタメ事業への熱い思いを語った。

海外進出──エイベックスならではの新しい2.5次元ミュージカル

2012年から2014年にかけて、エイベックスはアメリカ・ニューヨークの企業と共同でサーカスを制作し、アラブ圏、オセアニア、北米ツアーを行った。この経験を生かし、エイベックスは自社制作による2.5次元ミュージカルの市場拡大──海外進出を目標に掲げている。これまでの山浦の発言に表れているように、同社はその業界での先人をリスペクトしつつ、別の切り口で新たなコンテンツを生み出してきた。また、山浦自身もその中で試行錯誤を繰り返しながら新事業にチャレンジしてきたという。「皆さんと違ったことをやらないといけない、目線を変えないと生き残っていけないと常々思っていて。そういう意味でも新たに海外進出することによって、ほかとは違う僕たちなりの新しい2.5次元ミュージカルの形を提示できたらと思っています」。そう語った山浦の晴れやかな表情から、一筋の光が見えた。

プロフィール

エイベックス・エンタテインメント株式会社のライヴ事業本部シアター制作グループにて、ゼネラルマネージャーと同グループのマーケティングユニットのマネージャーを務める。

関連公演・イベント(日程順)

「『Mogut』~ハリネズミホテルへようこそ~」

2021年1月15日(金)~17日(日)
大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

2021年1月21日(木)~31日(日)
東京都 品川プリンスホテル ステラボール

「ミュージカル『モンティ・パイソンのSPAMALOT』featuring SPAM」

2021年1月18日(月)~2月14日(日)
東京都 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

2021年2月18日(木)~23日(火・祝)
大阪府 オリックス劇場

2021年2月26日(金)~28日(日)
福岡県 福岡市民会館 大ホール

「舞台『ドクター・ブルー』~いのちの距離~」

2021年1月23日(土)~2月7日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 ホール

2021年2月13日(土)・14日(日)
愛知県 御園座

2021年2月26日(金)~28日(日)
大阪府 NHK大阪ホール

「朗読劇『私立探偵 濱マイク』-我が人生最悪の時-」

2021年2月17日(水)~23日(火・祝)
東京都 ヒューリックホール東京

ミュージカル「BARNUM」

2021年3月6日(土)~23日(火)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス

2021年3月26日(金)~28日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

2021年4月2日(金)
神奈川県 相模女子大学グリーンホール

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