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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメは『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』

リアルサウンド

18/12/28(金) 15:00

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替わりでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部のわがままボーイ安田が『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』をプッシュします。

参考:<a href=”https://www.realsound.jp/movie/2018/12/post-299608.html”>大泉洋だからこそ演じられた鹿野靖明 『こんな夜更けにバナナかよ』は“自由”とは何かを問いかける</a>

・『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』
 ついに2018年最終週となりました。年が明けると1月から話題作が目白押し。すでに今年の映画ベストを確定させて、来たる新年に気持ちを向けている方も多いのではないだろうか。しかし2018年を締めくくるのはまだまだ早い。年末年始にピッタリな心温まる作品が『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』だ。

 筋ジストロフィーを患って体が不自由にも関わらず、病院を飛び出し、自分で大勢のボランティアを集め、風変わりな自立生活を始めた鹿野靖明。本作は、わがままで、おしゃべりで、ずうずうしくて、ほれっぽくて自由すぎる性格に周りの人々を振り回しながらも、そのまっすぐな生き方で愛された鹿野靖明と、彼に出会って変わっていく人々の人生を描く。

 映画館スタッフとして館内アナウンスをしていた身としては、「声に出して読みたい映画タイトル2018」ノミネート作品である(ちなみに対抗は、『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』)。

 「感動ポルノ」という言葉をご存じだろうか。身体障がい者が何かに取り組み奮闘する姿が、健常者に感動をもたらすコンテンツとして消費されている状況を皮肉する言葉だ。ここでの問題は、対象者が一般的な障がい者像というステレオタイプに押し込められてしまい、さも辛い人生を歩んでいるかのように加工され、健常者をインスパイアするための手段と化してしまうことである。

 本作も、一見するとこういった消費娯楽の一種に見えてしまうのだが、正面から向き合った誠意を感じる。大泉洋演じる鹿野靖明は筋ジストロフィーという難病を抱えながら、障がい者面を全く感じさせない。その傍若無人でわがままが過ぎる性格から、むしろ「助けてもらうのが当たり前」に感じている無神経な男のようにも写る。彼自身は、特別扱いを望んでいるわけでもないし、特別扱いされているつもりもないだろう。「俺が人生楽しんで悪いのか」「ボラだってみんな俺から学んでるんだから付き合いは対等だろ」と鹿野の言葉で語られると、どこかで障がい者に可哀そうと思っている自分に気づきハッとさせられてしまう。

 そんな視聴者と同じ視点で鹿野を見つめてくれるのが、高畑充希演じる美咲である。美咲は、恋人がボランティアをしているという理由で鹿野の元を訪れるが、「障がい者だったら何言ってもいいわけ⁉」とぶちまける。ひいきもしなければ、下に見ることもなくあくまで、人と人として接する。本作が、闘病記ではなく普遍的な他者とのかかわりを描くポイントともなっている。

 本作がいわゆる感動ポルノに収まらないのは、苦しい闘病生活の果てにあるカタルシスを描くのではなく、人と人が出会い、触れ合い、戦いながら人生を紡いでいくからだ。1人の男の記録として徹頭徹尾真摯に向き合っているのだ。よいお年を。 (リアルサウンド編集部)

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