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早見沙織、降幡愛、内田雄馬、『Paradox Live』……多彩な音楽ジャンル味わえるアニメ/声優ソングの注目作

リアルサウンド

20/9/6(日) 10:00

 世間ではアニメや声優の音楽を一括りに扱うことが多いですが、もちろんその内容は多種多様。そもそもアニメやキャラクターコンテンツに関わる楽曲、あるいは声優が歌っている楽曲であれば、どんな音楽性であっても“アニメソング/声優ソング/キャラクターソング”と括ることができるわけで、結果として、そこには様々なタイプの音楽が存在することになります。今回は、そういった音楽ジャンルとしての多彩さを味わうことができる、アニメ/声優ソング周辺の注目新譜をご紹介します。

 最初に取り上げるのは、今年でアーティスト活動5周年を迎えた声優・早見沙織によるミニアルバム『GARDEN』。アーティストデビュー前から数々のキャラクターソングでファンを魅了し、女性声優のなかでも随一の歌唱力の持ち主として人気を集める彼女。音楽鑑賞を趣味に挙げ、ジャズボーカルを習っていた経験を持ち、作詞のみならず自身で作曲も行い、さらにライブでは自らキーボードを弾くこともあったりと、音楽偏差値の高さでも知られています。

 そんな彼女の作品には、いわゆるソウル/ジャズ/ファンクのテイストを採り入れたグルーヴィーな楽曲も多く、アーシーなゴスペル調ナンバー「Let me hear」、シティポップ路線の「メトロナイト」、DJ/プロデューサーのKenichiro Nishiharaが楽曲提供したジャジーヒップホップ×AOR風味の「yoso」(Michael Kanekoも作曲に関与)など、洗練されたサウンドが持ち味のひとつとなっています。

 ほぼ全曲の作詞・作曲を自ら手がけた最新作『GARDEN』も、彼女らしい魅力が詰め込まれた作品に。表題曲「garden」では冨田ラボの冨田恵一をアレンジャーに迎え、パイパーなどのデジタルビートを敷いた80’sシティポップにも通じる、ライトメロウなシンセファンクを展開していたり(MVも画面比率を4:3に設定した昔の映像風に)、松本良喜が編曲した「瀬戸際」はビターな香りの充満するアーバンポップに仕上がっていたりと、お洒落で粋なサウンドがたっぷり。アーティストとしてのデビュー曲「やさしい希望」を、ライブではお馴染みとなっているボサノヴァアレンジで新たに録音しているのも、5周年ならではの特別感が感じられます。なにより主役の上品で優雅な歌声が、これらのサウンドと素晴らしくマッチしており、うるさ型の大人も唸らせるであろう、高品質なポップス集になっています。

早見沙織「garden」MUSIC VIDEO

 ちなみに海外でのブームを受けて逆輸入的な盛り上がりを見せているシティポップ再評価の波は、アニメ/声優ソング界隈にも押し寄せているようで、『ラブライブ!サンシャイン!!』のAqoursのメンバーとしても活躍する降幡愛が、9月23日にリリースするデビューミニアルバム『Moonrise』は、そのものズバリ“80’sシティポップ”をテーマにした作品に。プロデューサーの本間昭光を迎え、バブル前後の空気を封じ込めたようなアーバンデジタルポップ「CITY」など、まだJ-POPという言葉が定着する前のジャパニーズポップスのクリシェを散りばめた世界観を広げています。

降幡 愛「CITY」Music Video

 さらに10月7日にリリースされる西山宏太朗のデビューミニアルバム『CITY』も、シティポップをコンセプトにしているとのこと。先行曲「真昼どきのステラ」は、ORESAMAのぽんが作詞、でんぱ組.incなどへの楽曲提供で知られる三好啓太が作曲・編曲を担当。こちらは往年のサウンドを踏襲するというよりも、いわゆる2010年代以降にリバイバルされたシティポップの流れを汲むようなサウンドになっています。なんでも彼はtofubeats「ディスコの神様」をきっかけにディスコにハマり、そこからシティポップを聴くようになったのだとか。

西山宏太朗『真昼どきのステラ』~Music Video~span>

 続いては、内田雄馬のニューシングル『Image』をピックアップ。2018年にアーティストデビューして以来、爽快なロックサウンドを軸に数々のヒットを放ってきた彼ですが、一方で1stアルバム『HORIZON』(2019年)収録の「ERROR」「VIBES」や、シングルのカップリングなどでダンサブルな楽曲にも積極的に取り組み、ライブでもダンサーを従えたパフォーマンスを行ってきました。その流れを受けるかのように、今回はシングル表題曲としては初のダンスナンバーに挑戦。彼の楽曲を多数手がけているShogo×早川博隆コンビが提供したこの「Image」は、EDM以降の現代的なポップスの意匠を纏った、ハイクオリティーなダンスチューンに仕上がっています。音数を絞ってストイックに進んでいくA・Bメロから、サビで一気にイメージを爆発させるような展開もエモーショナルのひと言。クールさの中に情熱を宿した歌声、MVでのしなやかなムーブを含め、見どころ・聴きどころが満載の一曲です。

 カップリング曲のうち、「SummerDay」もまたダンス欲を刺激するナンバー。こちらはハウスミュージックを基調とした夏らしい解放的なサウンドになっていて、サックスの印象的なリフ、跳ねるようなピアノ、サビ後半などでトロピカルに変化するリズムなど、とにかく楽しくなる要素だらけです。伸びやかな歌声の魅力を存分に楽しめるバンド曲「You Are Special」と共に、表題曲とはまた違ったアーティスト・内田雄馬の側面を知ることができるのではないでしょうか。

内田雄馬「Image」MUSIC VIDEO
内田雄馬「SummerDay」Drive Video

 また、近年は『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』(以下『ヒプマイ』)のヒットの影響もあってか、アニメ/声優の楽曲においてもラップソングが増加傾向にありますが、その『ヒプマイ』の対抗馬となりそうなキャラクターコンテンツが、“HIPHOPメディアミックスプロジェクト”として昨年に始動した『Paradox Live』です。楽曲やドラマトラックを収録したCDを中心にストーリーが展開し、4チーム総勢14名のラッパーによるステージバトルが繰り広げられる本作。声優のみならず96猫や志麻といった歌い手がキャストとして参加しているのもユニークですが、何より面白いのは、現行のヒップホップやポップスのトレンドを積極的に楽曲に組み込んでいることです。

 例えば、個性派揃いの新世代カリスマ3人組ユニット・BAEは、1曲の中に日本語・英語・韓国語のリリックが飛び交う多言語ラップが特徴で、カラフルでポップなトラックも含めてK-POPの色が強く感じられます。大人なメンバーを中心とした孤高の実力派4人組ユニット・The Cat’s Whiskersは、生音風のサウンドが軸になっていて、いわゆるジャジーヒップホップ風。スラム出身のダウナー系双子ユニット・cozmezはトラップ系のビートを嗜好し、結束の固いギャング5人組ユニットの悪漢奴等はギャングスタなラップが映えるトラックと、チームごとにサウンドカラーを明確に分けていることが、楽曲を聴けばすぐにわかります。

 その『Paradox Live』より、cozmezと悪漢奴等によるステージバトルを収めたCDが、9月2日にリリースされた『Paradox Live Stage Battle “FAMILY”』。要は各チームが“FAMILY”というバトルテーマに沿った新曲を収録しているのですが、どちらもかなり攻めた音作りになっています。まずcozmezの新曲「This Is My Love」は、従来のトラップ路線とは趣きを変え、切なげなギターサウンドをフィーチャーしたエモラップ的な曲調に。cozmezの二人は、双子の兄弟であるお互い以外に身寄りがないなかスラムで生き抜いてきた身で、そんな彼らが哀愁たっぷりに〈いつまでも離れたく無い〉と歌う姿にはグッとくるものがあります。きっとKvi Babaのような世界観が好きな人はハマるはず。

【MV】cozmez / 「This Is My Love」 -Paradox Live(パラライ)-

 一方の悪漢奴等が歌う「CALL FOR FAMILIEZ -悪漢奴等 is Forever-」は、近年の音楽シーンで人気を集めているアフロポップ〜レゲトン系のゆったりとしたトラックに乗せて、はみ出し者のメンバー5人の血の繋がり以上に濃い絆を表現した一曲。悪漢奴等の楽曲のリリックは、Yuly、Mt’、ES-PLANT、心之助の4人から成るヒップホップグループのWAYZが書いていることが肝のひとつで、そのうちMt’と心之助の2人が作詞したこの曲も、例えば日本語ラップのクラシックであるOZROSAURUS「AREA AREA」のラインを引用したフレーズも忍ばせつつ、同じくグループで活動している彼らだからこその悪漢奴等とのシンクロが生まれています。

【MV】悪漢奴等 / 「CALL FOR FAMILIEZ -悪漢奴等 is Forever-」 -Paradox Live(パラライ)-

■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。

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