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『なつぞら』脚本家・大森寿美男が明かす最終回に向けての構想 “開拓者精神”をどう描くのか

リアルサウンド

19/9/18(水) 6:00

 4月から放送が始まったNHK連続テレビ小説『なつぞら』も終盤にさしかかっている。

参考:岡田将生×広瀬すず×清原果耶がついに共演 『なつぞら』千遥の天丼によって蘇った奥原家の記憶

 北海道の十勝で育ったなつ(広瀬すず)は、当時、草創期だった漫画映画の世界を夢見て上京。東洋動画で作画監督というポジションまで登りつめ、今はアニメーターの先輩である麻子(貫地谷しほり)が立ち上げたマコプロダクションにて、かつての仲間たちとともに『大草原の少女ソラ』を制作中だ。

 『大草原の少女ソラ』は、海外の児童文学である『大草原の小さな家』を原案に、舞台をなつが育った十勝に置き換え、開拓者一家の生き様を描くもの。残り2週間を切った本作のラストスパートとして、なつたちの『大草原の少女ソラ』制作に焦点を当てた意図とは何だろうか。脚本を手がけた大森寿美男は、こう説明する。

「主人公が自分の生い立ちを題材にしたものを最後に作るという展開は、なんだか朝ドラの王道的なパターンのような気がして最初はあまり気が進まなかったんです。でも、今回は王道を最後まで貫こうと。なつの物語をそのままアニメにするわけではないので、その展開もいいなと思いました」

 主人公の物語をアニメーションで描く。作中では、なつの夫であり演出家でもある坂場(中川大志)は、「リアルな日常を描くような話を、アニメーションで表現したいと思ってる」と『大草原の少女ソラ』の企画を説明する。

 リアルな日常を描くために、大森は実際に参考にした作品があったという。

「いわゆる昭和のテレビアニメにおけるエポックメイキングな作品である『アルプスの少女ハイジ』のようなものを作ろうと考えていました。かつての世界名作劇場で放送していたようなものを、坂場となつが一緒に作るという展開にしたかったんです」

 世界名作劇場といえば、かつて日曜日の19時30分から放送されていたテレビアニメシリーズとして知られ、『フランダースの犬』や『母をたずねて三千里』など、現代に残る名作アニメーションを送り出した放送枠だ。

 ここで放送された『アルプスの少女ハイジ』は、高畑勲が演出、宮崎駿がレイアウト、小田部羊一が作画監督を務めた、日本のアニメーション史を語る上では外せない作品だ。のちにスタジオジブリを背負うことになる2人の才能が手がけた作品というだけでなく、宮崎駿が務めたレイアウトという役職は、この作品で初めて用いられ、絵コンテから直接背景と原画を起こすのが一般的であったアニメーション制作現場に革新をもたらした。

 日本アニメーションの草創期を描く『なつぞら』。だが実際の史実を参考にしつつも、あくまでフィクションとして再構成している。

「舞台をどうしようかと考えたときに、なつが生きてきた十勝という場所が浮かびました。でも、単純に十勝を舞台に『アルプスの少女ハイジ』をやると、ドラマ前半の北海道編で描いたものと被ってしまいます。それで、『大草原の小さな家』の舞台を十勝に置き換えてアニメにしようと考えたんです」

 戦災孤児となった幼いなつは、亡き父の戦友である剛男(藤木直人)に連れられ、十勝の柴田家へやってくる。開拓者一世の泰樹(草刈正雄)をはじめとした人々の厳しさと愛に触れて成長していく。そんななつと、アルムおんじに預けられ、アルプスの大自然とそこで生きる動植物を通じて育っていくハイジはどこか共通項を感じさせる。

 また、『大草原の小さな家』は、アメリカの西部開拓時代を舞台にしたローラ・インガルス・ワイルダーの自伝的小説で、連続ドラマ化もされ人気を博した。『なつぞら』の作中では、坂場は「日本にもささやかな日常を一生懸命に生きている開拓者たちがいることを、その作品を通して描きたいんだ」と語る。北海道の開拓者の家族の生き方に共鳴する坂場が描く『大草原の少女ソラ』は、なつが生きてきた世界を描きつつも、坂場なりの目線が込められているのだろう。

 また、『なつぞら』第1話からアニメーションがふんだんに挿入され、タイトルバックが全編アニメーションで作られたことも話題となった。アニメーションを手がけるチームからの後押しもあったと大森は明かす。

「アニメパートを作ってくださっている舘野仁美さんや刈谷仁美さんたちの意見も参考にしました。タイトルバックの絵を描いてくださった方たちは、実際に十勝に取材に行ってくださっていて、その方々が十勝の風景を題材に物語を描きたいと言ってくれたんです」

 タイトルバックでは、赤いワンピースをきた女の子が動物とともに草原を駆け回る姿、そしてそれをアニメーターとして描き出すなつの姿が描かれる。半年をかけ放送され、スピッツの主題歌とともに視聴者にはお馴染みとなった光景こそが、天陽(吉沢亮)が雪月の包装紙に描いた“開拓者精神”であり、その思いを受け取ったなつと、マコプロダクションのアニメーターたち、そして北海道に生きる開拓者たちが描く希望であったのかもしれない。

(取材・文=安田周平)

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