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「エセルとアーネスト」翻訳者さくまゆみこ、ブリッグズ作品の魅力を解説

ナタリー

19/10/9(水) 14:33

「エセルとアーネスト ふたりの物語」トークイベントに登壇した、さくまゆみこ。

「エセルとアーネスト ふたりの物語」のトークイベントが本日10月9日に東京・岩波ホールで行われ、原作本が初めて日本で出版された際の翻訳者・さくまゆみこが登壇した。

本作はイギリスの作家レイモンド・ブリッグズが、自身の両親の人生を描いたグラフィックノベルをアニメ化した作品。さくまは「サンタのなつやすみ」「風が吹くとき」といったブリッグズ作品の翻訳も手がけてきたが、「エセルとアーネスト」に関しては「別の方が翻訳したものを新たに訳すのではなく、最初からすべて自分で翻訳したので思い入れがあります」と語る。そして「若い頃のブリッグズさんは、ご両親と意見が合わないことも多々あったと思うんです。でも『エセルとアーネスト』ではご両親への深い愛情、今はいないことに対する哀切の念が深く表されていて、その思いが映画でもきちんと表現されていました」と完成度の高さをたたえた。

「風が吹くとき」と「ジェントルマンジム」に登場するジムとヒルダの夫婦も、ブリッグズの両親がモデルではないかと言われている。それに関し、さくまは「ジムはトイレ掃除人で、想像力が豊かな人。アーネストは牛乳配達人で、新聞や雑誌を読むのが好き。似ているところがあるなと思います。ただ実際のアーネストさんは毛がフサフサですが、ジムはやかん頭なのがちょっと違いますね」と笑いを交えて解説。「2人とも労働者階級の人間で、体制の力に巻き込まれてしまい負けていく姿は共通していると思います」と続け、ブリッグズが描こうとしたことに触れる。

また、さくまは「ブリッグズ作品は大きく2つに分けられる」と切り出した。一方は「風が吹くとき」や「ジェントルマンジム」「エセルとアーネスト ふたりの物語」といった作品で「一生懸命生きている庶民が権力者に利用され、その悲しみや怒りを描いている」と語る。もう一方は「くまさん」や「水たまりおじさん」、そして「スノーマン」として知られる「ゆきだるま」など。さくまは「子供がちょっと異質な存在に出会ってそれを受け入れ、子供は子供で自分の存在をしっかり持っている姿が描かれている」と表現する。また「さむがりやのサンタ」など「サンタ」シリーズについては、一見子供向けであるが「労働者階級のお話。一般的なサンタさんの絵本と違い、労働者階級が誇りを持っているところが表現されていて、そこが面白いです」とブリッグズ作品が子供から大人まで支持されるゆえんを説いた。

ロジャー・メインウッド監督作「エセルとアーネスト ふたりの物語」は全国で公開されている。なお現在、さくまが会長を務める日本国際児童図書評議会(JBBY)による「世界の子どもの本展」が東京・神保町の出版クラブビルで開催中。

(c)Ethel & Ernest Productions Limited, Melusine Productions S.A., The British Film Institute and Ffilm Cymru Wales CBC 2016

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