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家族で唯一耳が聞こえる女子高生の葛藤:『CODA』

ぴあ

21/2/1(月) 11:00

『CODA』 Sundance.org

2016年の監督デビュー作『タルーラ〜彼女たちの事情〜』をサンダンスでお披露目したシアン・へダーが、その次の作品『CODA』で再びこの映画祭に戻ってきた。

タイトルは、『Child of deaf adult』。つまり耳の聞こえない大人の子供という意味。主人公の高校生ルビーはまさにその例で、両親も、兄も、耳が聞こえず、生まれた時からずっと家族の通訳の役割を果たしてきた。父、兄は漁師だが、収穫物を売るためにも、ルビーの助けが必要だ。そんな中、音楽が好きなルビーは学校のコーラス部に参加し、顧問のヴィラロボス先生に優れた才能を発見される。卒業後も家業を助けるのだろうと思っていたルビーに、先生は、ボストンの名門音楽学院バークリーの試験を受けるよう勧めた。しかし、ルビーがいなくなると聞こえる人たちとのコミュニケーションが絶たれると、両親は賛成しない。

高校生が自分の将来について悩む、あるいは親が期待するのと違う道に進みたいと葛藤する話は何度も語られてきたが、この状況は独特。両親の仲が良く、愛に満ちた家庭であることも、ルビーのジレンマを強くする。ルビーが舞台で歌うシーンで、しばらく音を遮断し、両親と兄の視点で体験させるのも感動的だ。

今作は、2014年のフランス映画「エール!」のリメイク。へダーは自分が育ったマサチューセッツ州に舞台を据え、ルビーの両親と兄の役には全員、実際に耳が聞こえない俳優を雇った。へダーも、ルビー役のエミリア・ジョーンズも、撮影前に手話の特訓を受けている。プレミア上映後のヴァーチャル会見で、へダーは、手話の通訳はもちろんいたが、できるかぎり自分でもコミュニケーションを取りたかったし、休憩時間におしゃべりをしたりしたかったからだと語った。家のセットを作ったりする上などで、耳の聞こえない彼らからアドバイスを受けたともいう。この撮影体験は自分の人生を大きく変えたというジョーンズは、これからも手話を学んでいきたいと語っている。

今作はバイヤーの間でも強い関心が集まり、競売の結果、アップルが2,500万ドルで全世界配給権を取得した。この金額はサンダンスの歴史で最高記録。来年度のアワードシーズンでも、早くも健闘が期待される。

文=猿渡由紀

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