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“マルチストーリー”に挑んだDAZZLE新作『NORA』観劇レポート

ぴあ

DAZZLE『NORA』より (c)飯野高拓

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ダンスカンパニーDAZZLEが最新作『NORA』を上演中だ。これまでマルチエンディングやイマーシブシアターなど、様々な観客参加を仕掛けてきたDAZZLEだが、今回は、ダンスのほか録音の音声や文字を使って進行する物語のうち幾つかの分岐点で、観客が専用のプレートの青色/赤色で二択のどちらかを掲示し、その多数決で展開が決まっていくという、マルチストーリーに挑んでいる。

舞台は、国民監査局によって査定された社会貢献度に応じて人々がポイントを得、それに応じた生活レベルを送るという、ディストピアめいた “東京”。監視され続ける人々の心は荒んで、幾つものトラブルが起きている。そんな中、人々の口の端に上るのが、「東京C」という名の、いわくつきのオンラインゲームの存在だった。

幼少期に両親を亡くし、孤児院で育ったノラ(金田健宏)は、国から劣等者とされ、社会の底辺に生きているが、ひょんなことから「東京C」に招待される。そこは21世紀の東京を舞台とする仮想世界。「Follow Instinct(本能に従え)」がスローガンとなっており、人々は現実世界の社会貢献度のポイントを消費することで欲望を叶えることができる。しかし、その分、現実世界のポイントは減ってしまう。

この「東京C」を開発したのは神谷ルベル(長谷川達也)という男。彼は国民監査局に勤めていたが、孤児院への補助金不交付を独断で行ったことで、大規模なデモを招き、責任を取る形で監査局を辞めた。しかし、神谷の行動は全てを計算した上でのものであり、貢献ポイントシステムをゲームにつなげる形で、「東京C」に君臨しているのだった。そんな「東京C」の異常さに感づいたのが、捜査官(高田秀文)だ。彼は紙谷が招いたデモの日に妻を亡くした過去を持つ。実は深い因縁を持つノラ、捜査官、そして神谷の三者の物語が、少しずつ明かされていくーー。

マルチストーリーとは言っても、プレートを使うタイミングはよく考えられており、観客はダークでミステリアスな世界にしっかりと入り込むことができる。シャープでスタイリッシュなDAZZLEのダンスに、高い身体能力を持つBLUE TOKYOの高さのある動きが加わった舞台は立体的で、フォーメーションも多彩。林ゆうきらの鮮やかでどこか諧謔的な音楽に乗せ、次から次へと繰り出されるダンスはドラマティックだ。

1回でも楽しめる内容ながら、その日選ばれなかった場面がどうなっているのか、どのくらい印象が変わるのか、気になってしまうのも事実。「東京C」のスローガンのように、本能に従って、気になったら何度でも観に行くのが吉、かもしれない。

取材・文:高橋彩子

DAZZLE新作公演
『NORA』
演出・脚本:長谷川達也
振付:DAZZLE
音楽:林ゆうき
出演:DAZZLE / BLUE TOKYO

2021年7月4日(日)まで上演
会場:東京・あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)

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