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竹内アンナに聞く“独特のハイブリッド感”の原点「いまも音楽の境界線がない」

リアルサウンド

20/4/9(木) 12:00

 Spotifyが注目する、ニューカマー発掘プレイリスト『Early Noise Japan』と、リアルサウンドのコラボによる連載企画「Signal to Real Noise」。プレイリストでピックアップされた“才能の原石”たちへ、手練の音楽評論家がその音楽遍歴や制作手法などについて取材する。同企画の第六回は、森朋之氏による竹内アンナへのインタビューをお届けする。(編集部)【記事最後にプレゼント情報あり】

 竹内アンナの1stフルアルバム『MATOUSIC』が注目を集めている。「RIDE ON WEEKEND」(WOWOWオリジナルドラマ『有村架純の撮休』主題歌)、崎山蒼志がエレキギターで参加した「I My Me Myself」などを収めた本作。70〜80年代のソウル、ファンクから、現代的なハウス、エレクトロなどを取り入れたサウンドメイク、そして、リアルな体験をもとにしたリリック、洋楽的なメロディと日本語の響きを組み合わせたフロウなど、彼女の際立った個性が反映されている。踊るように飛び跳ねるギタープレイも、本作の聴きどころだろう。

 ストリーミングサービスでも人気を獲得、さらにFM局などでも数多くのヘビーローテーションを得ている竹内アンナ。今回のインタビューでは、彼女の音楽的ルーツ、独創的なライブスタイル、アルバム『MATOUSIC』の制作などについて語ってもらった。(森朋之)

第一回:福岡から世界へ、Attractionsが考える“アジアで通用するということ”
第二回:Newspeakが語る“リバプールと日本の違い”
第三回:CIRRRCLEに聞く、国やバックグラウンドを超えた音楽作り
第四回:Mega Shinnosukeに聞く、“何でも聴ける時代”のセンスとスタイルの磨き方
第五回:世界を見たShurkn Papに聞く、地元から発信し続ける理由

「ジョン・メイヤーがSSWの概念を壊してくれた」

ーー1stフルアルバム『MATOUSIC』がリリースされました。リスナーのみなさんからの反響はどうですか?

竹内アンナ(以下、竹内):リリースされた直後からSNSにたくさんメッセージをもらったり、ツイートしてくださる方もすごく多くて、ビックリしました。これまでに3枚のEPを出しているんですが、アルバムをリリースしたことで私の存在を知ってくれた方も多くて。“こういう音楽をやってる人なのか”“こんな歌を歌ってるんだな”ということが伝わってくれたのかなと。

ーー竹内さん自身も3作のEPを通して、ステップアップできた感覚もあるのでは?

竹内:そうですね。今までのEPシリーズはいろいろな竹内アンナの表情を感じてほしくて、1枚ごとにいろんなトライをして作品ごとにサウンドもかなり変化させてました。ただ今回のアルバムでは「竹内アンナは音楽を通して、何を伝えたいんだろう?」「どんなサウンドを作りたいのかな」と向き合ってきたことで、今の私を詰め込めたかなって。インプットとアウトプットのバランスも良かったと思います。

ーールーツミュージックに根差しながら、現在進行形のサウンドも取り入れていて。竹内さんの音楽には独特のハイブリッド感がありますが、これまで聴いてきた音楽の影響も当然、反映されてますよね。

竹内:音楽的な影響は、母親が作っていたプレイリストが大きくて。母親は新旧、洋邦を問わず、何でも聴く人で、ごちゃまぜのプレイリストを作ってCDに入れてたんです。それを聴きながら育ったので、いまも音楽の境界線がないというか、古いものから新しいものまで、ジャンルを問わず好きになって。それは自分が作る音楽にも反映されていると思います。

ーー子どもの頃に、特に印象的だった曲は?

竹内:Earth,Wind & Fireの「September」ですね。楽しいときはもっと楽しくなるし、落ち込んでいるときに聴くと元気になれるし、怒ってるとき、悲しいときも「大丈夫」という気持ちにさせてくれる曲で。いろんな場面、シチュエーションに寄り添ってくれる音楽だったんですよね、私にとって。「September」は、音楽の原点ですね。

Earth,Wind & Fire「September」

ーーギターを弾くようになったきっかけは?

竹内:小学校6年生のときに聴いたBUMP OF CHICKENです。それまで私は「洋楽しか聴かない」っていう生意気な子だったんですよ(笑)。でも、あるとき「カルマ」を聴いて、「たった3分半で、こんなに感動できるんや?!」と衝撃を受けて。藤原基央さんの声の良さ、バンドの世界観もそうだし、日本語の美しさに気づかされたことも大きかったです。そのときに初めて、「音楽をやる側に立ちたい」と思って、ギターをはじめました。

 中学までは漠然と弾いてただけなんですけど、高校2年のときにジョン・メイヤーを知って。「No Such Thing」の弾き語りをYouTubeで観てーーおそらく彼が23歳くらいの演奏ですねーー「これ、ホントに一人で弾いてるの?」とビックリしちゃって。すごく鮮やかでカラフルな音だし、何回観ても指の動きがわからないくらい複雑なプレイで。声はスモーキーで甘くて、歌詞も10代だった私にもすごく共感できて、なおかつ「カッコいいやん!」っていう(笑)。自分が思っていたシンガーソングライターの概念を壊してくれたし、もっとギターを弾けるようになりたいという気持ちにさせてくれたんです。

 それまでもギターは大好きだったし、相棒みたいな存在だったんですが、どちらかというと歌うためのツールとして捉えていて。ジョンは歌とギターがどちらも完全に確立されていて、それがすごくカッコよかったんですよね。「これだけ弾けたら、めちゃくちゃ楽しいだろうな」と思ったし、それ以来、さらにギターにのめり込みました。

ーーギターは独学ですか?

竹内:いえ、今も教えていただいている師匠みたいな方がいて。中3のときにライブハウスに出たことで、「プロとしてやっていきたい」と思って。それを師匠に伝えたら、「だったら、そういうレッスンをするし、僕もそのつもりで接する」と言ってくださって。ジョン・メイヤーみたいなギターが弾きたいと言ったら、ブルース、ジャズ、ブラックミュージックなどを教えてくれて、「完コピしなさい」と。ギターはもちろん、譜面の書き方、音楽理論、プロとしての礼儀も教えていただいて。怒られるたびに「そんなん初めてだし、わからんやん」と思ってたけど(笑)、厳しく、愛を持って教えていただからこそ、今があるんだと感謝してますね。

ーー地道な練習や勉強もあったと思いますが、それをやり遂げたモチベーションは何だったんでしょう?

竹内:負けず嫌いなんですよね。できないことが悔しいし、絶対にやってやろうと思うので。少しでもできるようになると楽しくて……。単純に“好き”で“楽しい”ということも大きいです。それはいまも同じだと思います。

ーー現在の竹内さんのライブのスタイルは、ギターの弾き語りだけではなく、ループ・ステーションやサンプラーも取り入れて、ダンスミュージック的な要素も加わっています。

竹内:新しいものを取り入れるのが好きなんです(笑)。きっかけになったのは、2枚目のEP(『at TWO』)に入ってる「Free !Free! Free!」。もともとエレクトロミュージックが好きだったんですが、それを思い切って取り入れてみたんです。いざライブでやることになったとき、ギター1本でも演奏できるんですが、思い描いていたサウンドを再現するためには、それだけでは足りないなって。何を加えればいいか考えて、RC-505(ループ・ステーション)を取り入れて。卓上に置けて、手元で操作しやすいんですよ。さらに数カ月前にサンプラーも入れて、いまの形になりました。といっても、完成形はないんです。トライ&エラーを重ねながら、どんどん変わっていくというか……。観ている人も楽しめるように、常におもしろいことをやりたいんですよね。

【Studio Live】竹内アンナ / SUNKISSed GIRL

ーー確かに見た目にも楽しいですよね、竹内さんのステージは。

竹内:いきなりギターを置いて、サンプラーを操作し始めたり(笑)。オケを流すという選択肢もあったんですが、せっかくのライブなので、そのときだけの表現をしたくて。たとえばコール&レスポンスしていて、「もっと伸ばしたい」と思ったとき、(オケを流していると)尺が決まっているからやれないじゃないですか。あくまでもライブは自由でありたいし、お客さんの反応によって、リアルタイムで変化していくのは楽しいので。

「中国のヒップホップや、英語圏以外の音楽にも興味がある」

ーーなるほど。ちなみに竹内さんにとって、エレクトロミュージックの入り口はどんなアーティストなんですか?

竹内:いろいろありますけど、Jamiroquaiもそうかも。2017年の来日公演も観に行ったんですが、ちょっとポッチャリしてて可愛かったです(笑)。Disclosureも好きですね。今年のフジロックに来るので、ぜひ観たいと思ってます。最近はストリーミングで国ごとのチャートを覗くのがおもしろくて。中国のヒップホップだったり、英語圏以外の音楽にもすごく興味がありますね。

ーー楽曲の制作についても聞かせてください。まずサウンドメイクですが、トロピカルハウス、フューチャーベースなども取り入れていますが、楽曲を作り始めた時点ではどのくらいイメージしているんですか?

竹内:デモの段階で自分でできるところまでやって、その後、アレンジャーの名村武さんと話し合いながら、作っていく感じです。「こういう音を入れたらおもしろくなりそう」と言いながら、足したり引いたり。その作業も楽しいんです。

ーーダンスミュージック的なトラックもありますが、歌詞を乗せるときに意識していることは?

竹内:基本的にメロディ先行なんですよ。歌詞は英語が合えばそうするし、日本語が合えば日本語を当てて。メロディがいちばん活きる言語を使うことを心掛けてます。あとは言葉数を決めて、「〇文字で、この韻で終わる言葉は何だろう?」という感じですね。色や景色もイメージしながら、連想ゲームしながら歌詞を書いてます。最近は俳句の影響もあります。芸能人のみなさんが俳句を詠んで、先生が添削するテレビ番組があって、それを見ていたら、「五・七・五という決められた字数で表現する俳句は、歌詞の書き方に似てる」と思って。自分で言葉を作ってもいいし、字数が決まってるからこそ自由な発想ができるんだなと。インパクトがある言葉で、自分が言いたいことを伝えるというのは、アルバムの制作中にも意識していました。

「伝えなきゃ、届かなきゃ、君に聞こえなきゃ。」

ーーアルバム収録曲の「伝えなきゃ、届かなきゃ、君に聞こえなきゃ。」の歌詞は、すべて日本語ですね。

竹内:日本語の曲名もアルバムのなかで1曲だけだし、歌詞が全部日本語というのも初めてですね。意図的ではなくて、書き終わったときに「日本語だけだ」と気付いたんです。その後で英語を付けたすこともできたし、サビを英語にすることもできたんですけど、日本語がすごくハマっていたし、「自然に出てきたものだから、このままでいい」と思って。この歌詞が書けたことは、自分にとっても驚きでした。

「すぐ心のシャッターを下ろしちゃうところもあった」

ーーアルバムには1st EP『at ONE』から、最新の楽曲まで収録されていて。歌詞にはこの間における人生観、価値観の変化なども反映されているのでは?

竹内:そうかもしれないです。デビューしてから、いろんな場所に行かせてもらって、いろんな人と出会って、新しい刺激をもらったので。そこで出会った方に頂いた言葉も大きな変化につながっていて。私はもともと出不精でめんどくさがりで。すぐ心のシャッターを下ろしちゃうところもあったんですけど(笑)、その方に「もったいないよ」と言われたんです。今しかできないことはたくさんあるし、苦手な人であっても、話していると、新しい出会いがあるかもしれない。「めんどくさいな」と思っても、ちょっと無理して足を運んでみると、思ってもみないつながりができるかもよって。そのとき「確かにちょっともったいなかったかも」と思ったんですよね、そのとき。もう20代だし、自分の意思でどこにでも行けるんだから、もっとフットワークを軽くしてみようと。実際、この1年の間にかなり変わったと思います。私は体験をベースに曲を書くことが多いし、自分自身を豊かに、おもしろくするために、まずは動かないと。友達も増えましたね。バンドのFAITHとは年齢が近いこともあって、最近よく遊んでます(笑)。

ーーいろいろな出会いのなかで、自分のアイデンティティを見つめ直すこともあったのでは?

竹内:曲を作っていると、どうしても自分と向き合うことが多くて。「自分って何だろう? 自分の個性とは?」みたいなことも考えました。弱いところだったり、あまり好きじゃない部分も認められるようになったことも大きくて。「そういうところもあるよね」って許せるようになったというか……。「I My Me Myself」は、まさにそのことを歌っているんです。

「I My Me Myself」

ーー〈どんなわたしもわたしなの〉というフレーズもあって。

竹内:はい。デビューしてから、インタビューなどで「趣味はなんですか?」とよく聞かれていたんですが、私、ホントに趣味がなくて(笑)。10代の学生の時に、趣味の音楽がちゃんと仕事になったから、というのも大きいと思うのですが。人に語れるもの、興味を持てるものが何もないことにショックを受けて、落ち込んじゃったんです。「趣味がない自分はカッコ悪い」と思ったから。でも、「それはそれでしょうがない。今から興味のあることを探してみよう」と思ったら、楽しくなってきて。いまは毎日やりたいことがあるし、趣味も少しずつ増えてきたんです。まずは自分自身を認めてあげることが大事だし、その先に自分らしさがあるんだなっていう。

ーーアルバムタイトルの『MATOUSIC』には“身にまとうような音楽でありたい”という意味を込められているとか。

竹内:「シンガーソングライターとしてどうありたいか?」と思ったときに、リスナーの方々に寄り添える音楽を作っていきたいなって。自分もそんなふうに音楽を聴いてきたし、デビューしてからも、その軸は変わってなくて。アルバムを作り終えたときも、そのことを確認したので、このタイトルにしました。メイクしているときとか、料理、掃除、ドライブ中もそうですけど、生活のなかのいろいろな場面に自然に馴染む音楽というか。ただ、BGMになっていいとは思ってなくて。サラッと聴けるんだけど、「今、何て歌った?」とか「すごい転調だな」とか……。

ーー「今のアコギのフレーズ、すごい!」とか。

竹内:そうそう(笑)。ワクワクできるポイントは、どの曲にも作るようにしています。

ーーアルバムのリリース後は、ソロツアー、バンドツアーと続きます。いろいろなスタイルでライブがやれるのも、竹内さんの魅力だなと。

竹内:ありがとうございます。ソロは完全に一人で、ギター、卓上のルーパー、サンプラーなどを使って、ソロならではのアレンジで聴いてほしくて。バンドのライブはとにかく生のグルーヴがすごいし、私もめちゃくちゃ楽しみ。トリオでもやってみたいし、ドラムと二人もいいだろうし、いろんな形態でやれるのはソロアーティストの強みだと思いますね。あと、竹内アンナ & Schroeder-Headzもはじまります。Schroeder-Headzの曲に私がギターで参加したり、私の曲をSchroeder-Headz にカバーしてもらったり、この組み合わせでしかできないことをやりたくて。これからもおもしろいことをどんどん続けていきたいです。

■リリース情報
竹内アンナ 1st Full Album『MATOUSIC』
2020年3月18日(水)発売

初回限定盤
CD+DVD【TECI-1689】
価格:¥3,273(税抜)

<CD収録内容>
1. RIDE ON WEEKEND  ☆WOWOWオリジナルドラマ「有村架純の撮休」主題歌
2. B.M.B
3. I My Me Myself
4. TOKYO NITE
5. If you and I were,
6. 伝えなきゃ、届かなきゃ、君に聞こえなきゃ。
7. 20 -TWENTY-
8. Midnight Step
9. SUNKISSed GIRL
10. Free! Free! Free!
11. ALRIGHT

<DVD収録内容>
ALRIGHT MusicVideo
Free! Free! Free! MusicVideo
20 -TWENTY- MusicVideo
B.M.B MusicVideo
RIDE ON WEEKEND Music Video
+
AT Studio Live

通常盤
CD【TECI-1690】                                                                
定価:¥2,636(税抜)

<CD収録内容>
1. RIDE ON WEEKEND  ☆WOWOW新ドラマ「有村架純の撮休」主題歌
2. B.M.B
3. I My Me Myself
4. TOKYO NITE
5. If you and I were,
6. 伝えなきゃ、届かなきゃ、君に聞こえなきゃ。
7. 20 -TWENTY-
8. Midnight Step
9. SUNKISSed GIRL
10. Free! Free! Free!
11. ALRIGHT

店舗別の購入者特典
・タワーレコード:オリジナルステッカー(タワーレコードver.)
・HMV:オリジナルステッカー(HMV ver.)
・TSUTAYA:応募者抽選サイン入りポスター(抽選はがき付き)
・楽天:アクリルキーホルダー
・テイチクオンライン:LP盤サイズジャケット

■ツアー情報
『1st ALBUM Release SOLO Tour 「MATOUSIC」』
3月21日(土)京都 磔磔
3月29日(日)横浜 O-SITE 【完売】
4月18日(土)福岡 LIV LABO
4月19日(日)広島 BACK BEAT
5月10日(日)仙台 KOFFEE CO. 【完売】

『1st ALBUM Release BAND Tour 「MATOUSIC」』
5月16日(土)名古屋 SPADE BOX
5月17日(日)渋谷 CLUB QUATTRO
5月23日(土)梅田 TRAD
Vo & Gt:竹内アンナ
Ba:名村武
Dr:オータコージ
Gt & Cho:谷川正憲 (UNCHAIN)
Key:別所和洋 (Gentle Forest Jazz Band)

■関連リンク
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<応募締切>
2020年4月22日(水)

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