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大久保佳代子 (オアシズ)の 人生そろばん

AIも素晴らしいけど…

毎週連載

第85回

20/8/23(日)

今から2年くらい前の話ですけど、NHKの番組で「大久保佳代子の弟子AI『パコ代』育成プロジェクト」という企画が。この企画、まずスマホを1個渡されて、そのスマホで毎日16問くらいの大喜利のお題にせっせと答えていきます。それを続けていくと、「私の回答」がデータとして蓄積していき、スマホの中にいるAIの弟子という設定のパコ代さんが「私の回答」の傾向を捉えていきます。

最終的には、大喜利でパコ代さんが「私が言いそうな回答」をどこまで出せるようになるかっていうのを楽しむ内容で。冷静に考えたら、非常に怖いです。これで面白い答えが出せるようになるなら、お笑い芸人は要らないということになってしまうから。

期待と不安が混じりつつ、毎日16問の大喜利をしていたのですが、これだけではデータが全然足りないわけで。なので、人力舎の後輩芸人の皆さんに「私になったつもりで、私っぽい大喜利の答えを出して」とお願いしたり、私のツイッターのフォロワーさんにも同様のお願いをしたりして、データをどんどん貯めていき。

結果、1ヵ月後の本番収録では、そのデータをもとにパコ代さんが大喜利に挑戦したのですが、これがなかなか面白い結果に。パコ代さんの他には、千原ジュニアさん、ロッチ中岡君、みちょぱが育てたAI弟子が一緒に大喜利を。それぞれのキャラを生かした答えがちゃんと出たりしたからスゴイですよ。

ジュニアさんの弟子なら、ひねった上手い答えを出すし、みちょぱの弟子なら、ギャルっぽい答えを出したりして。パコ代さんは、やや下ネタよりが多かったかな。確かに、私が何かにつけ、回答に「アナコンダ」とか「夜の○○」みたいなのを入れていたからなんですけど。

あと、パコ代さんのヒットは、「RIKACO」という固有名詞を回答に入れてきたこと。私は、「RIKACO」をそんなに使ってはなかったけど、後輩やフォロワーさんが答えに入れていたんでしょう。例えば「全然盛り上がらない紅白歌合戦、その理由とは?」に対して「RIKACOがアレンジしすぎた」なんて優秀回答も。問題と回答が全く合わない時もあったけど、これはこれで愛嬌な感じで非常に興味深い企画でした。

ただ、人間特有のニュアンスだったり、哀愁や切なさだったりは、どれだけ技術が進化しても難しいだろうなとも思いました。

もともと私は、昭和の超アナログ人間なので、ウェアブルとかスマート化って苦手なほう。家にある唯一のAI電化製品と言えば、ロボット掃除機のルンバくらいで。たまに使いますが、結局使う前には、ゴミ箱や扇風機なんかを自分でソファーの上にあげる作業が必要なわけで、非常に面倒臭いんですよ。さらに、ルンバを起動させて外出し家に戻ってくると、何かに引っかかってコロンと転がっていたりもするし。でも、この姿は、愛らしいなと思いますが。やはり、完璧なのは怖いと思ってしまうので、コロンと裏返っていてくれるほうが安心します。

最近、今田耕司さんのYouTubeでAIロボットのPepper君とのやりとりが面白くて、観ているのですが、Pepper君が欲しいかと言われたら、そうでもなくて。昔、犬型ロボットのAIBOが出たときも、やはり欲しいとは思わなくて。だって、そもそも冷たいじゃないですか? 人も犬も、柔らかくて温もりがあって感情があってこそだし、なんなら体臭なんかも愛おしく思いたい。我が家には、犬臭くて口臭もあって、温かいウンチもしっかりするパコ美がいるから、もう充分なんです。



構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

大久保佳代子おおくぼ・かよこ

1971年、愛知県生まれ。相方・光浦靖子とともに、1992年にオアシズを結成。OLと並行してお笑い芸人として活動をし、2010年以降はお笑い一本に。数多くのレギュラー、連載を持つ。
http://www.p-jinriki.com/talent/oasiz/

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