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赤い公園、新曲「消えない」MVに反響 二分割映像と楽曲に込められたバンドの意志

リアルサウンド

18/11/9(金) 15:00

 赤い公園が、10月29日に新曲「消えない」のMVをYouTubeに限定公開し、多くの反響の声が挙がっている。新曲「消えない」に触れる前に、まずは石野理子を新ボーカルに迎えたこれまでのグループの流れを振り返りたい。

(関連:赤い公園新ボーカリスト抜擢で話題 元アイドルネッサンス石野理子、歌手としての実力は?

 2010年に結成された赤い公園からボーカルの佐藤千明が、2017年8月31日にグループを脱退。赤い公園のホームでもあるライブハウス・立川BABELにて、結成記念日である今年1月4日に津野米咲、藤本ひかり、歌川菜穂での3人体制、新曲のみのライブを開催はしていたが、それ以来バンドはほぼ沈黙状態が続いていた。一方、石野が所属していたアイドルネッサンスが2月24日に解散。そこから2カ月余りの、5月4日に『VIVA LA ROCK』のステージで新体制が初お披露目となる。

 石野加入にあたって、メンバーコメントでは「いつでも出逢えるよう、三人での活動を始めたばかりですが、どうやら音楽の神様からの贈り物が届いたようです」(津野米咲)、「先月の今頃はまだ決まっておりませんでした」(藤本ひかり)とあるが、5月9日放送の『赤い公園 津野米咲のKOIKIなPOP ROCKパラダイス』(NHK-FM)にてパーソナリティーを務める津野が石野加入までの経緯を語っていた。赤い公園として“大きな景色”を単独で見ていないことに気づき、新たにボーカルを探そうという結論に至ったのが、2017年の冬。それから様々なボーカルを紹介してもらった候補の中に、Base Ball Bearの小出祐介が石野を滑り込ませていたという。津野がこのエピソードを話す前日の5月8日には、小出が『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)に出演し、ギターの湯浅将平が脱退した2016年に、サポートメンバーとして津野が参加してくれていたことへの“恩返し”として、石野を紹介したことを明かしている。

 その後、少し期間を置き、9月8日に『BAYCAMP 2018』、9月15日に『Talking Rock! FES. 2018』と2つのロックフェス、イベントへの出演を経て、今回の「消えない」MV公開に至る。

 「消えない」を聴いた時に、最も鮮烈に残ったのは、このラストのフレーズだった。ボーカルを失った赤い公園と、歌う場所を失った石野。惹かれ合うように巡り合った彼女たちの、“進む”という強く熱い意志が、「消えない」には前面に溢れ出ている。

 「消えない」は、『BAYCAMP 2018』のステージでのラストに初披露されていた。その際のMCで津野が話していたのが、広島在住で高校生の石野が、週末に上京し音楽制作を行なっているというエピソード。瀬戸内海の島々をバックに歌い踊る石野と、バンドセットを構え演奏する3人が2分割にされたMVは、広島に住む石野と東京の3人の関係性をイメージさせる。MV公開後の放送となった『KOIKIなPOP ROCKパラダイス』にて、津野は「私の感覚では、広島の理子と東京の3人が出会って、赤い公園としてやっていこうとなるまでの誕生秘話的な、創成期って感じがしている」と語っていた。

 監督・振付を担当したのは、志村知晴。本田翼が出演するLINEモバイルのCMやCHAI「GREAT JOB」の振付を担当している。石野のダンスは、『BAYCAMP 2018』の時点では存在していなかったが、今回MVではアグレッシブかつ華麗に腕を旋回する仕草や、〈声を荒げる〉〈見ちゃいけない〉〈消さない〉といった歌詞からイメージされたと思われる振付が多く見られる。このMVが示すのは、今後、石野のダンスパフォーマンスが赤い公園でも活かされるということ。石野は、PerfumeやSU-METAL(BABYMETAL)を卒業生に持つアクターズスクール広島出身で、アイドルネッサンスでもメンバーからも一目置かれる存在であった。アイドルネッサンスでの活動を踏襲した今回の形は、パフォーマンスの面に置いても、新たな体制を予感させるものである。

 昨今のJ-POPシーンにおいて、ボーカルが交代したバンドはいくつあっただろうか? 真っ先に思い浮かぶのがフジファブリックで、2009年に志村正彦が亡くなり、ギター&コーラスを務めていた山内総一郎がメインボーカル&ギターを担当している。フジファブリックの場合、同じバンドメンバーが志村の意志を継いでいるが、赤い公園は違うグループ、シーンから石野をボーカルとして起用したという点においても、異例の抜擢だったと言える。先述した小出の働きかけや、津野がハロー!プロジェクトのファンでありアイドルシーンをフラットに見ることができること、石野のボーカリストとしての実力など、理由は様々に思い当たるが、何よりも赤い公園と石野理子における境遇の歯車がガチッと噛み合ったこと。太く、真っ直ぐな信念のベクトルが、「消えない」という思いに行き着く。

 「消えない」の作詞・作曲も担当し、バンドの中心的存在にいる津野は「曲づくりがまた楽しく、、」と『VIVA LA ROCK』出演前日にツイートしている。「消えない」は津野のカッティングギターをイントロに、歌川の変則的なドラム、Bメロからサビへのフェーズでは着火するような勢いの歪んだギターと藤本のベースサウンドが、津野のコンポーザーとしての記名性を感じさせる。ライブでは、石野のボーカルのもと「NOW ON AIR」や「闇夜に提灯」などのバンドの代表曲、「消えない」のほかにももう1曲「スローモーションブルー」という新曲を披露している。藤本が初めて詞曲を担当したというこの曲は、「NOW ON AIR」に匹敵するような爽やかでポップな楽曲。バンドの次の一歩として、「スローモーションブルー」がどのような形で発表されるかも、今後の指針を定める要素であり、今年1月に開催した自主企画で多くの新曲が披露されていたことにも触れておきたい。

 年末は『COUNTDOWN JAPAN 18/19』を筆頭に、3つのロックフェスやイベントに出演する赤い公園。『BAYCAMP』で赤い公園のアクトが終わり、次のステージに移動している際、「俺、昨日、石野理子って調べたんだけどさ」と話している男性2人組の会話が耳に飛び込んできた。年末の出演でも、そんな新たな出会いが多く生まれることを、今から想像している。(渡辺彰浩)

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