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石橋静河、映像界で引っ張りだこ 気鋭のクリエイターからのオファーが相次ぐ理由

リアルサウンド

20/9/5(土) 8:00

 FODで配信された『東京ラブストーリー』でヒロイン・赤名リカを演じ大きな話題になった女優・石橋静河。父に石橋凌、母に原田美枝子を持つ、いわゆる二世女優だが、独特の佇まいと説得力のある演技で、いま映像界では引っ張りだこの存在となっている。

 石橋が映画界で注目を集めたのは、石井裕也監督作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年)だろう。石橋はほとんど映画出演経験がないなか、池松壮亮と共にダブル主演を務めた。石橋が演じたヒロイン・美香は、昼は看護師、夜はガールズバーで働く女性。常になにかに対して不満を抱いているような佇まいを醸し出し、抜群の存在感をスクリーンに焼きつけた。

 本作で石橋は、第91回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。その後、映画、ドラマ、舞台はもちろん、ミュージックビデオやCMなど、幅広いジャンルで表現を続けているが、一流の制作陣による作品の質の高さには舌を巻く。

 『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』についで印象的だったのが、三宅唱監督がメガホンを取った『きみの鳥はうたえる』(2018年)だ。石橋は柄本佑、染谷将太という才能溢れる俳優と共にときを重ねる女性・佐知子を演じた。3人の空気感は芝居をしているというより、ドキュメンタリーを撮っているような感覚。観客はまるでそこにいるかのような没入感に浸れる。柄本、染谷のリアリティはもちろんだが、なかでも石橋のなまなましさは特筆ものだった。

 その後も、広告業界で数々の賞を獲得し、Mr.Childrenや奥田民生、安室奈美恵などのMVを手掛けた関根光才監督の『生きてるだけで、愛。』(2018年)や、脚本家・岡田惠和と峯田和伸原作の小説を映画化した『いちごの唄』(2019年)などの作品で、しっかりと余白を想像させる芝居はとても文学的。映画の間にピッタリの女優だと感じられる。

 質の高い映画に出演し、キャリアを積むなか、2018年にはNHKの連続テレビ小説『半分、青い。』で、石橋は佐藤健演じる萩尾律の妻・より子を演じた。朝ドラと言えば、撮影スピードのタイトさが有名だが、こうした状況下でどんな芝居を見せてくれるのか、楽しみでもあり、怖さもあった。

 そんななか石橋は、律と鈴愛(永野芽郁)の関係性への不安をどこかに抱えながらも、理性的にふるまおうとする心の揺れを捉えた演技を見せた。主人公・鈴愛の視点から見れば、ある意味でヒール役だが、しっかり感情移入できる役柄に落とし込んでいた。

 2020年は、映画『君の膵臓をたべたい』などの月川翔監督×坂元裕二脚本のドラマ『スイッチ』(テレビ朝日系)や、前述した『東京ラブストーリー』での赤名リカ、さらに映画『37 Seconds』、9月4日より公開された映画『人数の町』(テレビ朝日系)、鬼才・手塚眞監督が稲垣吾郎×二階堂ふみで描く『ばるぼら』、そして星野源の「折り合い」のMV出演など作品が続く。

星野源 – 折り合い (Official Video)

 『人数の町』のインタビューでは、これまで過去を振り返ることがなかったというが、コロナ禍のステイホームで、改めて自身がどれだけ素晴らしいクリエイターと仕事を共にしてきたかを実感し「とても幸せな時間だった」としみじみ話していた(参照:石橋静河、デビューから5年 女優として大切にしたい――“考えること”|クランクイン!)。

 しかし、言葉の裏を返せば、それだけ石橋の演技や佇まいがクリエイターたちを惹きつける魅力に溢れているからこその出会いと言えるだろう。幼少期からクラシックバレエを始め、コンテンポラリーダンサーとしての活動実績もある。立ち姿も美しく、纏う雰囲気はスクリーン映えする。石橋の同世代は、非常に才能溢れる俳優たちが多いが、彼女もその一人としてどんな活躍を見せてくれるのか――今後がとても楽しみだ。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■公開情報
『人数の町』
新宿武蔵野館ほかにて公開中
出演:中村倫也、石橋静河、立花恵理、橋野純平、植村宏司、菅野莉央、松浦祐也、草野イニ、川村紗也、柳英里紗、山中聡
脚本・監督:荒木伸二
製作総指揮:木下直哉
製作:木下グループ
配給:キノフィルムズ
制作:コギトワークス
(c)2020「人数の町」製作委員会
公式サイト:https://www.ninzunomachi.jp

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