Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ずっと真夜中でいいのに。が“アート的な遊び心”で示す、配信ライブの新たな可能性

リアルサウンド

20/8/10(月) 12:30

 ずっと真夜中でいいのに。が8月6日、『オンラインライブ NIWA TO NIRA(有料)』を開催した。

 ライブでは、8月5日にリリースされた3rdミニアルバム『朗らかな皮膚とて不服』の楽曲も披露。演奏、演出、映像、パフォーマンスを含め、“ずとまよ”の新たな進化と配信ライブの新たな可能性を示す内容となった。

 まず特筆すべきは、シアトリカルな要素を取り入れた映像。これまでのライブでも、調理器具や家具をステージに置くなど、楽曲の世界観ともつながる意匠を施してきたが、今回の生配信ライブでは、その側面をさらに押し進めていたのだ。たとえばオープニングでは、野菜を包丁で切る女性の手元を映し出し、包丁とまな板の音と打ち込みのビートを重ねていた。どこか演劇的な演出は、すでにずとまよの個性と言っていいだろう。こんなことが可能なのはもちろん、その楽曲のなかに豊かな“物語”が含まれているからだ。

 ライブは、ステージとプールのあるデッキを行き来しながら進行。バーベキューをする場面、水面の揺らぎなどを映し出す映像とともに、現実と非現実が溶け合うような空間を作り出していた。パフォーミングアート、インスタレーションの要素を効果的に取り入れた構成からは、配信ライブというプラットフォームの大きな可能性を感じ取ることができた。

 またOpen Reel Ensemble(和田永、吉田悠、吉田匡によるオープンリール式テープレコーダーとコンピュータを融合させ“楽器”として演奏するグループ)が参加していることも、ずとまよのライブの可能性を拡大していた。ブラウン管打楽器”が使用されたり、扇風機型の楽器やテープを叩くパフォーマンスも取り入れられた。アナログとテクノロジーを融合させたステージングは、ずとまよのコンセプトと重なりつつ、際立った個性につながっていたと思う。既存のライブのフォーマットに捉われず、“アート的な遊び心”をふんだんに取り入れるセンスもまた、ずとまよの魅力だ。

 演出やそのパフォーマンスにより、画面を通して様々な刺激を受けた今回のライブ。だがやはり、すべての中心にあるのは、ずとまよの音楽そのものだ。ギターロック、ボカロ系、アニソンなどのテイストを凝縮した密度の高いアレンジ、卓越した演奏テクニック、豊かな物語性を含んだ歌詞も素晴らしいが、特筆すべきはやはり、ACAねのボーカル。緻密に積み上げられたサウンドや演出を突き抜けるように、歌という表現の身体的な気持ち良さを与えてくれる彼女の歌声は本当にすごい。ボカロのカルチャーが出現して以降、日本のシンガー/ボーカリストのレベルは確実に上がり続けているが、高い技術と豊かな表現力、そして、どこまでもブッ飛んでいく爽快さを兼ね備えた彼女の歌は群を抜いていると思う。

 ACAねを中心に、ミュージシャン、アレンジャー、映像作家などが加わって構築される、ずっと真夜中でいいいのに。の音楽世界は確実に表現の幅を広げている。ポップミュージックというアートフォームの在り方をさらに更新できる存在であると、改めて実感できるライブだった。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■リリース情報
3rdミニアルバム『朗らかな皮膚とて不服』
発売:2020年08月05日(水)
<初回生産限定盤 [2CD] >
価格:¥3,300(+税)
<通常盤[CD] >
価格:¥1,800(+税)
※全て新曲となる全6曲収録。

<収録内容>
初回生産限定盤:
DISC1:新曲6曲+ボーナストラック「サターン(Acoustic ver.)」1曲 
DISC2:DISC1のオフボーカル(インスト)6曲
※豪華魔導書パッケージ仕様
※オリジナル漫画冊子封入

通常盤:
新曲6曲+ボーナストラック(初回生産限定盤とは異なる楽曲)1曲

■ライブ情報
クリーニングライブ『定期連絡の業務』【振替公演】
会場:幕張メッセ幕張イベントホール
2021年5月15日(土)※2020年5月5日(火・祝)→8月5日(水)の振替
2021年5月16日(日)※2020年5月6日(水・振休)→8月6日(木)の振替
会場:幕張メッセ幕張イベントホール
・公演時間の詳細やチケットの再販売に関しては後日発表

■ずっと真夜中でいいのに。関連リンク
ACAねTwitter
Official Twitter
HP

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む