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相葉雅紀、初めて悲しみの表情を見せる 『僕とシッポと神楽坂』が描く獣医師たちの苦悩

リアルサウンド

18/11/3(土) 11:20

 テレビ朝日の金曜ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』。東京・神楽坂にある「坂の上動物病院」を舞台に、若き獣医師・高円寺達也(相葉雅紀)と、そこへ訪れる動物や飼い主たちの交流を描いたドラマだ。

参考:相葉雅紀とイッセー尾形が伝える命の重み 『僕とシッポと神楽坂』愛情が滲む演出が光る

 第4話では、救えなかった動物の死に対する達也たちの姿が印象的だった。動物の死を知った後、達也とトキワ(広末涼子)、広樹(小瀧望)の背中には、どうすることもできない悲しみや悔しさが満ちていた。

 「坂の上動物病院」に心臓腫瘍を患った犬・ぐりとその飼い主・早苗(滝沢涼子)がやってくる。「ナルタウン動物病院」の田代(村上淳)にぐりを診てもらった早苗は、「ぐりの年齢や心機能の低下を考えると手術は難しい」という田代の見解に納得がいかず、達也のいる病院へとやってきた。達也は田代と同じ診断を下すが「1%でも可能性があるのなら見捨てるわけにはいかない」と手術を敢行する。手術は無事成功し、早苗とともに達也たちはほっとした表情を見せる。しかし、その晩ぐりの容体は急変し、達也が見守る中、ぐりは息を引き取ってしまう。

 ぐりの1件は「医療ミスでペットを死なせた」という噂として拡散され、「坂の上動物病院」では予約キャンセルが相次ぐ。受診者の減った病院で過ごす達也の表情は暗い。しかし、達也の表情に影を落とした原因は噂ではない。達也は、ぐりを救えなかったことに対する無力感や悲しみを抱え続けていた。

 ぐりの容体が急変して以降、相葉はいつもの穏やかで優しげな表情をほとんど浮かべなかった。顔をこわばらせ、無力感に苛まれる達也を演じ、命を救うことの責任感と難しさを表現していた。病院に1人残り、立ち尽くす達也の背中は言い難い悔しさに満ちていて、動物たちの命と日々向き合い続けている獣医師の苦悩が思い知らされる。ぐりの死に打ちひしがれていたのは達也だけではない。トキワは達也から報告を受けると、達也を気遣いながらもその場にしゃがみこみ、無力感を感じさせた。広樹もいつもの無邪気な笑顔を抑え、その顔に影を落として落ち込んだ様子を見せた。ぐりの死後、達也とトキワ、広樹の背中が1人ずつ丁寧に映し出されたとき、そこには台詞を介さずとも伝わる「命の重み」が感じられた。

 噂を拡散したのは早苗の息子だった。大切なペットを亡くし、ふさぎこんだ母親の様子を見た息子は、ネット上にその憤りを書きなぐったのだが、本人の予想に反して広まってしまったのだと言う。息子は達也に謝罪するが、達也は「謝らなければならないのは僕のほうです」と頭を下げる。

 おそらく獣医師は、さまざまな動物の命を助けると同時に、助けられなかった命も目の当たりにしているはずだ。ドラマでは描かれなくとも、達也が獣医師を続ける限り、彼はこれからも動物の死を目の当たりにすることだろう。第1話から第3話までは、相葉は達也の優しさを感じさせる穏やかな演技をしていた。しかし第4話では、相葉らしい朗らかな雰囲気を抑え、「命に向き合いたいんです」という達也の思いを受け止めながら、いつもとは違う達也の姿を見せていた。患者やトキワの前では“いつも通り”の姿を見せる達也。しかし相葉は、そんな達也から無力感や悲しみ、よく眠れていないような疲労を感じさせ、第4話の主題である「家族の一員を亡くす悲しみ」を獣医師の立場から表現した。

 重たい主題である動物の死を描いた第4話だったが、物語全体が重苦しくなることはなかった。それは、趣里演じるすず芽やトキワに想いをよせる田代のシーンがコミカルに描かれていたからだろう。彼らのシーンが挿入されることで、『僕とシッポと神楽坂』の穏やかさが失われることなく、重みのある内容を丁寧に描くことができたのではないだろうか。相葉が優しげな表情を抑えた分、彼らがコミカルな雰囲気を演じる。演出のバランスの良さにも感動させられる回だった。(片山香帆)

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