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いま、最高の一本に出会える

初登場1位WANIMA、2位再浮上ヒゲダン……両者の躍進から実感する“チャートの定説”の変化

リアルサウンド

19/11/2(土) 8:00

参考:2019年11月4日付週間アルバムランキング(2019年10月21日~10月27日/https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2019-11-04/)

 2週間前に当連載で取り上げられたOfficial髭男dism、その後の話から始めましょう。『Traveler』は初週8.5万枚、次週は2.8万枚、今週は1.8万枚で2位に再浮上するなど、すでに累計13万枚セールスを突破しています。すっかり巷に浸透した「ヒゲダン」の愛称が、いよいよ“今売れているJ-POP”の枠に入ってきた。そんな気配を感じますね。

 “今売れているJ-POP”は、当然毎週のチャートごとに主役が入れ替わります。ただ、ミリオンヒットがほぼ生まれない現在では、CDに思い入れのある世代をファンベースに持つアーティスト、つまり90年代にブレイクし、その後も人気を保ってきた人たちが長く玉座にいるかのように語られがちです。たとえば「安室奈美恵、ミリオン4世代達成は史上初」とか、「ミスチルやスピッツは相変わらず安定」というように。かつてスガ シカオは私の取材に対し、「僕もミスチルみたいに国民的ヒット曲が欲しいけど、ルーツが違うからか、桜井くんにはなれない」と自虐的に笑っていたものです。

 でも、時代は確実に変わっています。今最も勢いのあるポップスターは星野源ですが、彼のブレイク以降はわかりやすく“売れるJ-POP”の定義が変わってきた。ヒゲダンにしてもゴスペルやソウルなど、ブラックミュージックの血がちゃんと通っている。アルバム収録曲の「FIRE GROUND」なんてスガ シカオがやっても全然おかしくないファンクナンバーですからね。J-POPのフォーマットというか、“2010年代らしい”ヒット曲は明らかに変わってきたのだなと、彼らの躍進を見ながら実感します。

 そして今週の1位はWANIMA。前作に引き続き2作連続の初登場1位です。タイトルの『COMINATCHA!!』は“Coming At You”を縮めたヒップホップ用語。ボーカルKENTAの発語の速度と滑舌の良さは、彼のルーツにラップ/ヒップホップがあることから来ていますし、バンドのロゴやアルバムのジャケットがラスタカラーなのは、やはり彼らのルーツにレゲエも入っているから。WANIMAがシンプルなロックバンドなのは事実ですが、その音楽は決してロックの血だけで作られているわけではありません。

 メジャーからの2作目となる本作は、得意なパンクだけでなく“こういうWANIMAもあるのか”と思わせることを意識しながら作ったそうで、まったりしたレゲエ、ストリングスを入れた美しいバラード、遊び心たっぷりの短いダンスチューン、ロカビリー風のビートが新鮮な曲など、お馴染みのWANIMA節を次々と更新していく内容。それでいて真摯なメッセージは一貫しているから、テレビで見る“元気!”のイメージは表面的なものに過ぎないと気づくはずです。私自身WANIMAには何度も取材していますが、これだけ真面目に音楽と向き合って、辛いこと苦しいことを歌にしているのに、明るさばかりが独り歩きしているバンドって珍しいですよね。ちゃんと聴かれて、届けばいいなと思います。

 ちなみにWANIMAのセールスは初週で7.3万枚。第1週だけを見ればヒゲダンと僅差。そして、ここからが重要なのですが、両者はサブスク解禁済のアーティスト。いくらでも聴き放題の状況下にありながら、それでもパッケージを手にしたいと考えたファンの数が数字に直結しているのです。なかには生まれて初めてCDを買った層も少なくないでしょう。

 CD世代をファンに持つアーティストは強い。先ほど書いたチャートの定説も怪しくなってきました。売れる音楽のかたちが変わっていくのと同様に、パッケージの意味や価値も、どんどん変わり続けています。
(石井恵梨子)

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