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令和の「倍返し」がいよいよスタート! 『半沢直樹』続編でも理不尽に立ち向かうテーマは健在

リアルサウンド

20/7/20(月) 6:00

 先の見えないビジネスの隘路を切り開く緊張感と、息つく間もない怒涛の展開にノックアウトされる。7年の空白を一気に埋めるような知略と言葉の応酬。ためて、ためて、最後の最後に放たれる、あの決めゼリフ。「やられたらやり返す。倍返しだ」。『半沢直樹』(TBS系)が帰ってきた。

参考:上戸彩、『半沢直樹』新シーズンでの活躍に「違う女の戦いがある」 妻としての花との共通点

 『半沢直樹』待望の続編は、伊佐山泰二(市川猿之助)の独白で始まる。「組織に楯突いたらどうなるか思い知らせてやる」。前シーズン最終話で半沢直樹(堺雅人)によって不正融資を暴かれ、土下座の屈辱を味わった東京中央銀行元常務の大和田暁(香川照之)。その「愛弟子」が証券営業部長の伊佐山である。大和田の失脚によって、伊佐山の将来にも暗雲が垂れ込めていた。

 冒頭から不穏な空気に包まれる新章で、半沢の新たな肩書は東京セントラル証券の営業企画部長。前作で西大阪スチールの不良債権を回収し、老舗ホテルの経営を建て直した半沢が出向先で手がけるのは、企業買収だ。顧客はIT大手「電脳雑伎集団」で、買収先は同じくIT企業の「スパイラル」。独自の経営方針を打ち出すスパイラルには敵対的買収の方法が考えられたが、そこには想定外の事態が待ち受けていた。

 出世コースから外れた銀行員にとって「片道切符の島流し」とされる出向。セントラル証券は東京中央銀行の子会社であり、出向組が多く在籍する。半沢の出向に憤慨し、銀行に戻れないかと知恵を絞る渡真利忍(及川光博)や苅田光一(丸一太)は、同期入行の間柄だ。そんな2人に、半沢は「いちいち上に逆らっても仕方ない。もうそんな時代じゃないんだ」と気のない返事をよこす。一瞬、半沢が、現在の境遇を受け入れて諦めてしまったようにも思えた。

 一方、半沢の下で働くプロパー社員の森山雅弘(賀来賢人)は、親会社からの出向組が目障りで仕方ない。自分が獲って来た買収案件のプロジェクトチームから外されて、一度は怒りをあらわにするが、諦めの早い森山の姿にはプロパー社員の悲哀が漂う。出向組の上司とプロパーの部下は、電脳からの一方的なアドバイザリー打ち切りを知って奮い立つ。理不尽に立ち向かうという『半沢直樹』のテーマは健在だった。

 銀行への返り咲きを狙う出向組の裏切りや、メインバンクの地位を利用して子会社の案件を横取りする銀行。その背後には伊佐山や副頭取の三笠洋一郎(古田新太)がいた。前作で、行内融和を図る頭取・中野渡謙(北大路欣也)のはからいによって、常務から取締役への降格ですんだ大和田。中野渡の前で、いけしゃあしゃあと「施されたら、施し返す。恩返しです」と言ってのける大和田の変わり身の早さもすごいが、それ以上に強烈なのが三笠だった。

 三笠が伊佐山に対して「上司を裏切れば返り討ちに遭いますよ。そうならないためにも、裏切るときは徹底的に裏切らなければなりません」と表情をまったく変えずに話す場面には、ドスの効いた迫力があった。怪優と称される古田をキャスティングしていることからもわかるが、圧倒的なラスボス感を放つ三笠に、子会社社員でしかない半沢は太刀打ちできるのだろうか?

 キャスティングも豪華だ。市川猿之助、尾上松也たち歌舞伎役者や、井上芳雄や土田英生ら舞台、ミュージカル出身者など、実力派がひしめく。また、電脳・土田美幸役の南野陽子が披露する出身地の兵庫弁や、出向組の三木重行を演じる角田晃広(東京03)による『これは経費で落ちません!』(NHK総合)のキャラクターにちなんだ台詞など、細かいネタも豊富だ。

 前作の特大ヒットを受けて、TBS日曜劇場は池井戸潤原作による『下町ロケット』や『陸王』、『ノーサイド・ゲーム』などを次々と送り出してきた。その間、撮影・演出も進化し、作品への期待値も上がり続ける中で、『半沢直樹』続編は、そのハードルを軽々と超える仕上がりとなった。

 最後に、第1話から半沢のセリフを紹介したい。「どんな仕事も、目指すところは同じはずだ。そこに勝ちも負けもない。大事なのはどこで働くかじゃない。どう働くかだ」。第2話まであと7日。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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