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SHINee、『The Story Of Light』で示した“今まで”と“これから” 音楽的視点で3作を考察

リアルサウンド

18/7/9(月) 8:00

 SHINeeが、韓国で6枚目の正規アルバム『The Story Of Light』でカムバックした。同タイトルEPをEP.1からEP.3まで連続でリリースしていくという、少し変則的なリリース方式である。同作のパフォーマンスや歌詞に込められたコンセプトなどについてはすでに多く言及されているが、今回は音楽的な面からアルバムについて考察してみたい。

「外部から見たイメージ」を体現したEP.1

 「Good Evening」をタイトル曲として5月28日にリリースされたEP.1は、フューチャーベースやディープハウスといったアイドルEDMソングの王道路線の楽曲を収録している。一聴すると2枚前のアルバム『Odd』の延長上にある“SHINee的コンテンポラリー・シック”といった印象だが、アレンジは適度に洗練されつつもよりチルで、エモーショナルな要素は極力抑えているように聴こえる。カムバック期間中にメンバー自身が語ったアルバムのコンセプトは「ep.1は『大衆から見たSHINee』ep.2は『SHINeeから見たSHINee』、ep.3は『ファンから見たSHINee』」であった。EP.1は楽曲としても一般的に持たれている、「SHINeeらしい」イメージーー例えば、トレンディであったり爽やかで優等生的なイメージを想起させるーーを体現したアルバムのようだ。昨年末、突然メンバーを失うというグループ的にも個人としても大きな喪失があったことを伺わせないような、個人的な感情をサウンド的に極力抑えたクールな仕上がりは、まさに「外部から見たイメージ」を体現している。

SHINee 샤이니 ‘데리러 가 (Good Evening)’ MV

「今現在のリアルなSHINee」を表すEP.2

 一方、次にリリースされたEP.2はよりエモーショナルだ。トロピカルなアレンジが印象的なタイトル曲「I Want You」や、夏のイメージをより野性的にアピールするダンスホールトラック「Chemistry」など、洗練されているだけではないアレンジや歌い方は、より感情的でチャレンジングだ。EP.1が「外側から見たイメージ」を体現した1枚だとすると、「SHINeeから見たSHINee」をイメージしたというこちらはメンバー達の内面から描かれたSHINeeである、という点でより生き生きと強烈に感情を描き出している。一方で、リスナーがどうしても探してしまうであろうジョンヒョンの不在を否定することも強調することもなく、現状の4人で完成されたものなのだと感じられるアルバムでもある。サウンドとしては少し前のものをなぞり直しつつ、それでいて従来のSHINeeらしい品格は失われない程度の逸脱もある。まさに「今現在のリアルなSHINee」を表した形なのだろう。

SHINee 샤이니 ‘I Want You’ MV

EP.3は「ファンへ贈る1枚」に

 シリーズ最後のEP.3 は先の2枚に比べてスロー&ミドルテンポな落ち着いたナンバーで構成されており、メンバーの歌声そのものをより堪能できる。タイトル曲「Our Page」の歌詞も直接的であり、ファンソングに近い。「ファンから見たSHINee」というコンセプトの通り、アレンジや楽曲コンセプトそのものに新奇性や斬新さを求めるというよりは、装飾が少なく、「メンバーの素の持ち味」など変わらないものにスポットが当たっている。離れていく愛をしっとりと歌い上げた「I Say」の余韻のうちに明るく始まるアップビートな「Lock You Down」にジョンヒョンの歌声が入っているサプライズも含め、「ファンへ贈る1枚」というコンセプトが明確だ。

SHINee 샤이니 ‘네가 남겨둔 말 (Our Page)’ MV

 1〜3までを通して聴くと、今までのアルバムと比べてユニゾンやコーラスの割合が増えたように感じられる。韓国のアイドルソングは日本のグループの楽曲と比べるとユニゾンが少ない傾向があり、特にSHINeeのようなダンスパフォーマンスがメインとなるグループは、曲中でユニゾンやコーラスを取り入れることは少ないようだ。SHINeeは「Alarm Clock」や「Love‘s Way」のように、R&Bスタイルの曲でフレーズ的にユニゾンを使うことはあるが、今回のアルバムではそれ以外のジャンルの曲でもコーラスパートが多い印象だ。

 特に「I Want You」は、サビの部分をまるごとユニゾンコーラスでまとめている。これはむしろ、日本での活動曲「Fire」や「Your Number」などに近い処理のようにも感じられる。「Good Evening」の振り付けを菅原小春(テミンの日本活動での振り付けを担当)に依頼したように、今までの日本活動で得たエッセンスがサウンド面にも取り入れられているようだ。『The Story Of Light』は、“今までのSHINee”と“これからのSHINee”をまさにストーリー仕立てで順番に見せたシリーズと言えるのではないだろうか。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

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