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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

川本三郎の『映画のメリーゴーラウンド』

ワイルダーの『翼よ!あれが巴里の灯だ』の話から、『巴里祭』…最後は『オリエント急行殺人事件』につながりました。

隔週連載

第32回

19/9/3(火)

 ビリー・ワイルダー監督の『翼よ!あれが巴里の灯だ』(1957年、原題:The Spirit of St. Louis)の日本題名は出色といっていいだろう。
 「パリ」ではなく古風に「巴里」としたのが、1920年代の物語らしく、ノスタルジックでいい。
 日本では「パリ」ではなく「巴里」の時代が確かにあった。なんといっても、ルネ・クレール監督の『巴里祭』(1932年、原題:Quatorze Juillet)がある。この六月、生誕百二十年を記念して4Kデジタル・リマスター版として再上映されたが、フランスの革命記念日である七月十四日を『巴里祭』と訳したのは、名日本題名として映画史に残っている。
 ルネ・クレールには『巴里の屋根の下』(1930年)もあるし、ジュリアン・デュヴィヴィエには『巴里の空の下セーヌは流れる』(1951年)がある。
 パリが日本人にはまだ遠く、それゆえに憧れの芸術の都だった時代、パリは「パリ」ではなく、あくまで「巴里」だった。だから、1927年、チャールズ・リンドバーグが、大西洋無着陸単独飛行をなしとげた映画のタイトルも、「巴里」がふさわしい。

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