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倖田來未、再メガブレイクの日は近い? クールなパフォーマンスを見せたホールツアーレポ

リアルサウンド

14/8/10(日) 16:00

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 今年の3月に倖田來未の最新アルバム『Bon Voyage』が一位を獲得した時、自分はこの(「テレビ」から「ライブ」へ――倖田來未のALチャート1位に見る、Jポップの主戦場の変化)ような原稿を書いた。これは、出産後にテレビをはじめとするメディア上での露出が極端に減りながらも、かつてのセールスパワーとライブにおける動員力を維持している倖田來未の状況を客観的に分析をして書いた原稿だったが、これを読んだ倖田來未のスタッフから、是非現在のツアーをその目で見て欲しいと連絡をいただいた。

 自分が足を運んだのは、ツアーも終盤を迎えた7月24日の東京国際フォーラム公演。これまでもイベントなどでは何度か倖田來未のステージを見たことはあったが、実はフルセットのライブを見るのは初めて。アルバムタイトルと同様に『Bon Voyage』と銘打たれたツアータイトル通り、豪華客船が模されたステージセット。宙吊りにされた巨大な錨に乗って現れる倖田來未。さらにステージ全体が動きだし、客船の先端が現れる。ホールライブとしてはこれが臨界点と思えるようなステージセットのスケールに、まずは圧倒された。

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 ライブ本編は三幕に分かれていて、まずは新たな旅立ちを華々しく祝福するような明るくてポップな第一幕、続いてメドレーも交えながら近年の代表曲を連発していく第二幕、そしてEDM的なクールなダンストラックを中心に演出もグッとワイルドになる第三幕。多くの人のイメージ通り、その三幕を通して最初から最後まで倖田來未は歌いまくり踊りまくるのだが、少々意外だったのは、決してこれ見よがしに歌い上げることもなく、ダンスもバキバキに踊りまくるということもなく、あくまでも様々な趣向を凝らしたステージの全体を見せていくというバランスを保っていること。ステージ上でポップスターとしての存在感を誇示するのではなく、総合芸術としてのライブパフォーマンスの中心にいるのが倖田來未、といった感じなのだ。

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 そのバランス感覚は、MCにおいても同様。倖田來未といえば、あの親しみやすい関西弁の印象が強くあったので、もっとベタにオーディエンスを煽っていくのかと思いきや、集まってくれたオーディエンスへの感謝の言葉や、客席にいる子供たちへの気遣いなど、伝えるべきことをしっかりとした言葉で伝えて、あとはひたすらパフォーマンスに専念していく。そのショーマンシップ溢れる姿勢に、自分が持っていた彼女への先入観や偏見は吹き飛んでいった。

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 来年、デビューから15周年を迎える倖田來未。今回のホールツアーは、その15周年イヤーに向けての力強い助走といった意味合いも大きいのだろう。ヒットパレード的な内容というよりは、前半の白のイメージと後半の黒のイメージのコントラストの中で、最新型の倖田來未をしっかりとオーディエンスの目に焼き付け、過去でも現在でもなく、何よりも未来の倖田來未への期待を増幅させるステージ。この日は、8月6日にリリースされたばかり(ライブのタイミングでは発売前)のシングル『HOTEL』のカップリング曲「MONEY IN MY BAG」も披露されたが、自分が最も興奮したのはその時のパフォーマンスの問答無用のクールさだった。

 「最近あんまりテレビで見かけなくなったなぁ」という世間の漠然とした印象と、現場における熱量のギャップというのは、過去にもいくつか例が浮かぶが、そういうアーティストは必ずと言っていいほど、しばしのタイムラグを経て、やがてその熱が世間にも拡散していく。2014年の倖田來未の現場には、まさにそんな再メガブレイク前の空気が充満していた。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

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