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松坂桃李が明かす、人や物事との向き合い方 「信じる気持ちと、聞く力が大事」

リアルサウンド

20/3/1(日) 6:00

 「微笑む人」と聞いて、ぴったりと顔が浮かぶ、松坂桃李。しかし、テレビ朝日のゴールデン帯ドラマで松坂が主演を務めるドラマスペシャルのタイトル『微笑む人』とは、「本の置き場所が欲しかった」という理由だけで妻子を殺害したと供述するエリート銀行員・仁藤俊美のこと。“微笑み”のイメージが濃い仁藤の柔らかな印象からは、誰もが「そんな理由で」「本当に仁藤さんが殺したとは思えない」という声が上がる。

 貫井徳郎の同名小説を映像化する本作では、オリジナルキャラクターとして登場する女性記者・鴨井晶(尾野真千子)が、事件を追ううちに彼の過去に隠された事実が次々と明らかになっていく。

 リアルサウンド映画部では、仁藤役の松坂桃李にインタビュー。彼自身の知られざる裏側、そして人に対しての向き合い方に迫った。

【写真】殺人鬼の笑みを浮かべる松坂桃李

■「僕たちが決めつけるのは簡単」

ーー仁藤は登場人物たちにとっても見ている側としても、理解し難いキャラクターでした。役作りの上で松坂さん自身は仁藤をどう理解していきましたか?

松坂桃李(以下、松坂):仁藤の発する言葉通りの人物だと思うようにしました。好印象だからこそ、人を殺した時に他人から見たら「そんなわけない、絶対何か理由がある」と考えてしまうけど、彼には裏があるわけではなくて、微笑む顔も殺害してしまう顔も全てが表なんだよなと。ニュースを見ていても理解し難い事件もあったりしますが、そんなことをするなんて信じられないと僕たちが決めつけるのは簡単だけど、この役を演じてみて、その人は本当にそう思ってるだけなんだなと考えられるようなりました。

ーー仁藤をそのように理解するのは難しくなかったですか?

松坂:自分の中での“普通”と相手の思う“普通”は違うと思うので、そのズレが大きかっただけなのかなと思うんです。自分の価値観とかものさしは人と違うなというのも改めて感じましたね。分からなかったり、不安を抱えるものに対してだと、どうしても気持ちの良い部分に落とし所を持っていきたくもなるしなと。

ーー犯罪者のキャラクターって、不気味な笑みを浮かべてる役が多いなと思うのですが、仁藤もずっと微笑んでいますよね。

松坂:彼が浮かべる笑みは、彼の中での面白いポイントがあったときや、余裕からくるものである気がします。彼好みのシチュエーションだったり、好きなものに出会ったり、普通に微笑む人となんら変わりないくらいで。おそらく、仁藤の範囲内での笑みをやればやるほど、シチュエーションによってはその笑みは怖く映ったりするのかなと思います。

■「人気者だぜと思われてるんだったら絶対そんなことないぜ(笑)」

ーー仁藤を演じる際に、「感情の起伏を持たずにフラットに演じた」とコメントしていましたが、やりにくさはありましたか?

松坂:共感を呼ぶような役ではなかったけど、気持ちを抑えることは全くしませんでした。大多数が「そうじゃないだろう?」と思うはずだけれど、それはその人が思っただけの、第一印象の勝手なイメージということでしかないからなと。記者の晶を通して物語を見ていくと、本当に人って第一印象だけでその人の全てを完結させてしまうことがあるなとも思って。そこのちぐはぐ具合が、この作品の面白さだとも感じました。

ーー確かに、第一印象で相手を判断しがちな傾向はありますね。松坂さんはどのように人を見ているんでしょうか?

松坂:仕事でもなんでも一緒に何かをする時は第一印象から入り、そこから、もしかしたらこんな部分もあったりするのかなと膨らませて、相手をどんな人なんだろうと考えるようにはしていますね。あとはコミュニケーションを取りつつ、こういうの好きなのね、みたいなことは話したりしながら相手のことを知っていくことが多いです。

ーーでは、松坂さん自身が、世の中とか周りからこう見られてるけど、実はこうなんです、というところはありますか?

松坂:世間はこう思ってるだろうけど、実は俺こうなんだぜ、的なことですか(笑)? なんですかね。そもそもどういう風に思われてると思います?

ーーえー……人気者?

松坂:本当ですか(笑)。

ーー嫌いな人いないと思います(笑)。

松坂:実はこうなんだぜ、か、うーん難しいな。人気者だぜと思われてるんだったら絶対そんなことないぜと思います(笑)。

ーーインタビューとか会見でも笑わせる回答が多いですよね。

松坂:本当ですか(笑)。嬉しい限りです。舞台挨拶では、その場で思いついたことを言ってるのではなく、マネージャーさんから「キャッチーなことを言わないと、取り上げてもらえないぞ」と最初に教わって(笑)。頑張って考えて臨んでます。

ーー発言が取り上げられること多いですよね。

松坂:ただ派手な発言をすればいいわけではないから、難しいです(笑)。「どうも皆さんこんにちは、松坂桃李です。今日はよろしくお願いします、ありがとうございました」のように伝えるのはたぶん簡単だけど、記者の方たちも来てくださっていますし、しっかりと作品をいろんな人に届けるためにも良い意味でキャッチーになるような言葉を言えるように、日々何が1番ベストなんだろうか……と考えながらやっています。

ーー真面目なんですね。それと、松坂さんは稀有な人というイメージがあって、ヤバい役とか今回も少しサイコ的な役でしたが、好印象のイメージが全く崩れなくてすごいなと思うんですけど、意識していることはあるんですか?

松坂:ありがとうございます(笑)! マネージャーさんとよく「バランスだね」と話しをするんです。自分好みばかりをやっていくとバランスが偏ってしまいます。やれるのであれば、いろんな色が入っている作品に挑戦したいし、それが後々に自分が40代、50代になった時に生きてくるはずだと思っていて。あまり偏りすぎずにやっていきましょうという方向性なのと、何より僕の事務所は「品とPOP」という社訓を掲げているので、そこは守らなきゃいけないみたいです(笑)。

■「信じる気持ちと、聞く力が大事」

ーー『微笑む人』を観ると人に対していろいろなことを考えさせる作品だと思いました。松坂さんがこの作品で学んだことはありますか?

松坂:この作品のベースラインとして、簡単にその人物を、いい人・悪い人と決着させることができるのは容易だけど、そういうことではないよねというメッセージを込めて作っているので、そこは非常に興味深かったです。視聴者の方にこうやってある種、石を投じてみるような作品でやりがいも感じました。自分が人や物や事柄に対して簡潔にしすぎているかもしれないなと気づいたきっかけにもなりました。

ーー簡潔にしすぎているかもしれないというと?

松坂:改めて第一印象だけでは片付けられないことはたくさんあるなと気づいたから、咀嚼する時間は必要なんだなと。情報がたくさんある中ですごい速さで答えが手に入りやすくなったからこそ、自分で物事とか人との向き合い方に対して考える時間が短縮されてるような気がするんです。その人のことを知りたいと思ったら、Wikipediaとか大抵のことは携帯電話で調べるとすぐに出てきますし。だからこそ、自分で物事を考えて判断するのが、大事だなとすごく思いました。

ーー「第一印象だけで分からない」と言われたら、すごく人間不信になっちゃうなと。

松坂:ありえますね。

ーーいろんな人と接していく中での松坂さん自身の人との向き合い方について教えてください。

松坂:やっぱり人や物事と向き合う時は、自分が信じているものが、最終的には気持ちを揺るがせることなく、進む原動力になり得るんだと思います。疑ってもキリがないし、自分の考え方を信じるというか、そこに左右されすぎるのもよくはないと思うんですけど。1番は信じる気持ちと、聞く力が大事なんじゃないかな。自分の気持ちだけを信じてやっていくと、たまに間違った方向に行ったりもするから、そこで誰かからの助言とかアドバイスを聞けるような力も必要になってくるんじゃないかなと思います。

(大和田茉椰)

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