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水野美紀、“鬼”になる 『あなたには渡さない』木村佳乃に向ける激しい敵意

リアルサウンド

18/11/11(日) 13:30

 11月10日にテレビ朝日系土曜ナイトドラマ『あなたには渡さない』の第1話が放送された。原作は連城三紀彦の『隠れ菊』。舞台を現代に置き換えてリメイクされた今作は、普通の専業主婦だった上島通子(木村佳乃)の前に、“夫の愛人”と名乗る女性・矢萩多衣(水野美紀)が現れることで始まる、激しく濃厚な大人のラブサスペンスだ。通子の夫・旬平(萩原聖人)や通子の兄の友人で通子に秘かに想いを寄せる笠井(田中哲司)を巻き込み、女と男の壮絶な修羅場が期待される。

参考:木村佳乃×水野美紀、壮絶な演技バトルに注目 『あなたには渡さない』激しい愛憎劇の幕開け

 20年間普通の専業主婦として過ごしてきた木村演じる通子と、彼女の目の前に現れ「ご主人をいただきにまいりました」と発した水野演じる多衣の対比が印象的な第1話だった。平凡な日常をあっという間に壊される通子の絶望と、6年間通じ合った男を手に入れた多衣の余裕は、今後発展するドロ沼劇を容易に想像させる。

 通子は料亭の御曹司である夫・旬平と結婚しながらも、料亭に関わることなく20年間「家庭を守る堅実な専業主婦」の役目を全うしてきた。夫に頼まれ、夫が世話になっている酒造会社の社長を迎えることになった通子。そんな彼女の前に現れたのが多衣である。多衣は通子と出会った直後から意味深な言葉ばかりを口にする。多衣の言動の真意を理解できない通子の表情を見て、早くも勝ち誇ったような表情を浮かべる水野に不穏な空気を感じとった視聴者も多いことだろう。多衣は昨年亡くなった料亭の女将の話を始める。夫の母親と折り合いが悪かった通子にとって、多衣が話す義母の姿は全く別人に感じられるものだった。いよいよ通子が多衣への不信感をあらわにするとき、多衣は言う。

「ご主人をいただきにまいりました」

 この丁寧な口調でありながら強い執念に満ちた台詞を、水野は飄々と発する。多衣は、旬平と共に過ごした夜のことを悪びれもなく話し、当然通子は怒りをあらわにする。そんな通子を「怒ると怖いのね」と軽くあしらう多衣。余裕ある表情を崩すことなく、それでいて正妻・通子を牽制するほどに強い旬平に対する執念を感じさせる水野の演技には恐ろしささえ感じる。

 夫の不倫を知り、打ちひしがれる通子。しかし「後ろを振り向かない」という彼女の性格が、この愛憎劇を盛り上げていく。夫と対面し、夫の口から不倫について語られた通子は涙を流すも、その表情からは凛とした強さが滲み始めていた。

 ドラマ終盤、旬平が通子との離婚を決意したのは、料亭の倒産危機から家族を守るためだと明かされる。彼なりの妻への思いでもあったようだ。しかし通子は旬平の頰を叩き「バカにしないでよ!」と一喝する。平凡な主婦として過ごしてきた日常を、夫の不倫によって破壊されたことで、通子の”1人の女”としての強さが開花した瞬間だった。旬平を一喝した通子の表情には、ドラマ冒頭の平凡な主婦の顔は見られない。

 離婚を条件に料亭「花ずみ」の女将になることを決意した通子。通子は多衣に婚姻届を渡しに行く。その行動に戸惑う多衣だが、通子は婚姻届を「6,000万円で売りに来ました」と言う。全ては「花ずみ」の再建のためだ。後ろを振り向かない彼女らしく、凛と前を向き多衣と対峙する通子。

 木村はたった1時間のドラマの中で、絶望的な出来事に打ち砕かれた女の姿と、本来の強さを開花させた女の姿を演じ分けた。冒頭で劣勢だった通子の顔はそこにない。最後の対峙シーンでは、多衣のほうがたじろいでいるように見える。第2話以降は、2人の激しいマウンティングが繰り広げられることだろう。これから始まる愛憎劇にふさわしい幕開けだった。

 また第1話では、通子と多衣の対峙を印象づける特徴的な演出があった。多衣が通子に対して辛辣な言葉を浴びせるシーンがある。通子の存在を憎み、通子のことを「嫌らしい女」と吐き捨てる多衣の顔には、燃え盛る炎のようにメラメラと動く照明が当てられていた。旬平を手に入れるために「鬼になった」と話す多衣。その顔は歪み、炎のような照明と合わさって、多衣が通子に対して抱く激しい敵意が存分に伝わってくる。

 今後も彼女たちの鬼のような心が伝わってくるシーンが登場することだろう。特徴的な演出にも注目していただきたい。(片山香帆)

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