Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

春奈るなが明かす、楽曲の表現を広げるテクニック「歌詞を朗読することで自分の言葉に組み替わる」

リアルサウンド

18/8/24(金) 12:00

 春奈るなが、8月22日にシングル『桃色タイフーン』をリリースした。配信のみで発表された前作「JUSTICE」のロックサウンドから一転し、キュートでポップな面を前面に打ち出した本作は、現在放送中のTVアニメ『ゆらぎ荘の幽奈さん』(TOKYO MXほか)のオープニング曲として、その名の通り日本中に早くも“桃色タイフーン”を巻き起こしている。今回のインタビューでは、本作の制作への向き合い方、さらに今後の展望について聞いた。(編集部)

(関連:藍井エイル、強く美しい魂の帰還ーー再会の“約束”果たした日本武道館公演を見て

——暑い日が続いてますけど、夏ってお好きですか?

春奈るな(以下、春奈):一番好きな季節が夏だし、満喫したいタイプですね。今年は行けてないんですけど、できる限りはプールに行ったり、花火大会に行ったりしてますし、水着も毎年買ってますし。

——じゃあ今回のシングルの表題曲「桃色タイフーン」みたいな世界観も……。

春奈:好きですね。夏祭りにもけっこう行くので、しっくりくるというか。

——ただ、春奈さんのディスコグラフィーを追ってみると、ここまで“かわいらしい”にパラメーターを振り切った曲も珍しいですよね。6月に配信リリースした前作「JUSTICE」はシリアスでハードなロックナンバーでしたし。

春奈:短期間のうちにすごい振り幅ですよね。衣装も黒1色からピンク1色と色味が真逆で。リスナーさんが混乱しないか、若干不安です(笑)。

——とはいえ、さすがというか「JUSTICE」も「桃色タイフーン」も見事にご自分のものにされている。

春奈:そういうギャップにだいぶ慣れてきたというか(笑)。この振り幅の大きさが自分の魅力の一つなのかな、という気はしています。

——聴かせるバラード「Startear」(2014年8月の6thシングル曲)のあとに、アッパーなブラスロック「君色シグナル」(2015年1月の7thシングル曲)をリリースなさったりしていましたしね。

春奈:そうなんですよね。でもそれぞれ違う曲調であっても、それをかみ砕いて理解していくことが好きなんです。以前は自分は楽しく歌ってるつもりだったのに、改めて聴いてみるとなんかそういうふうに聴こえなかったり、曲ごとの表現方法に悩んだりもしたんですけど、その頃から妄想というか(笑)、想像をすることが好きではあったというか。1曲1曲、歌詞を読み込んで「主人公はこういう女性かな?」「こういう少年かな?」ってイメージを膨らませながら歌うことは常に心がけています。例えばこれは今回に限らず、デビュー当時から毎回やっていることなんですけど、歌詞が届いたら絶対に一度は朗読してみたり。そうすることで歌詞が自分の言葉に組み替わるというか、歌詞に込められた感情がより自分の中に伝わってくるんです。

——「桃色タイフーン」の歌詞はどう読みました?

春奈:恋愛の真実を見たというか「恋愛ってこういうことだよな」という気がしました。

——〈ラブ・ヘクトパスカル〉、〈ハート・デストロイヤー〉とユニーク極まりない造語を連発する上に、〈キミ〉について〈大好き メガ好き 明日はもっと好き〉と明け透けに歌う、ご陽気なこの歌詞の中に恋愛の真実を見ましたか(笑)。

春奈:確かにすごい歌詞ではあるんですけど(笑)、こういう言葉で自分の気持ちを表現してしまえることって純粋だなと思っていて。この曲の主人公は打算や下心なんか持っていなくて、なんなら恋が叶わなくてもいいと思っている。「今、恋をしていること自体が幸せ」「好きな人のためにキレイになろうって思えていることが楽しい」っていうすごくプラスのイメージをもたらしてくれる子だったので、レコーディングのときには、いかにかわいらしい女の子像を抽出して歌うか、ということを考えていました。

——で、実際この曲の春奈さんのボーカルはすごくかわいらしいんですけど、具体的にはどうやって“かわいらしさ”を抽出しました?

春奈:もうめいっぱいぶりっ子しました(笑)。口角を上げて楽しげな感じを出しつつ、声色もかわいらしく変えて。あとこの楽曲がオープニングテーマになっている『ゆらぎ荘の幽奈さん』(TOKYO MXほか/以下、『幽奈さん』)のヒロインの幽奈さんの気持ちに寄り添うようにした感じですね。アニメのテーマソングなんだから当たり前のことではあるんですけど、幽奈さんとこの歌詞の主人公にはすごく重なるところがあると思っていて。幽奈さんはまさに「自分は幽霊で、恋した相手は人間。だから叶わないかもしれないけど、恋する気持ちがあれば幸せ」っていう女の子だったので、等身大の春奈るなではなくて、ある意味幽奈さんの気持ちになって歌ってみましたね。

——ただ、これが春奈さんをはじめとした人気のアニソンアーティストの面白いところであり、同時に悩ましいところだとも思うんですけど、シングルをアニメのテーマソングとして買う『幽奈さん』ファンもいれば、アニメはまったく観ないけど、春奈さんのファンだからシングルを買うっていう方もいらっしゃいますよね。

春奈:アニメのタイアップでありつつも、アニメを知らない人にも届けたいっていうのは確かに目標であり課題ではありますね。

——当然この曲も楽曲単体で楽しめるんだけど、これもこれでそういう目標を持つ春奈さんならではのテクニックのおかげかな? という気がするんですけど……。

春奈:ありがとうございます。もし、なにか私なりのテクニックがあるんだとしたら、それはやっぱり歌詞を朗読して読み込んでいることだと思います。この曲の2コーラス目のAメロが〈いつも同じ 電車に揺られ 行って帰って〉〈だけど時々 アイス食べれば ご機嫌でした〉っていうフレーズから始まるんですけど、ここは誰にでも刺さる歌詞だなという気がしていて。社会人の方の中にも学生さんの中にも、毎日毎日同じことを繰り返してうんざりしていたんだけど、ちっちゃい楽しみを見つけてすごくハッピーになれちゃうっていう経験のある人は少なくないと思いますし。確かにさっき「アニメに寄り添う」とは言ったんですけど、それだけではなくて、アニメを観ない方にも刺さるところをいかにピックアップできるか、ということも考えてはいますね。

——そこまでロジカルに楽曲の世界を分析した上で臨むと、さすがにレコーディングもスムーズでした?

春奈:いやこれが……(笑)。1コーラス目も2コーラス目もBメロがメロディのついているラップ、いわゆるメロラップになってるんですけど、メロラップを歌うのが初めてだったので。ラップっぽく声の抑揚や言葉の流れでリズムを作りつつ、それをメロディに乗せなきゃいけない。このバランスをとるのが難しかったので、ボイストレーニングの先生にけっこうご指導いただきました。「円を描くことをイメージしながら歌ったらグルーヴが生まれると思うよ」みたいなアドバイスをいただきながらのレコーディングだったので、自分の中ではすごく挑戦の多い楽曲っていう印象がありますね。特に1コーラス目のBメロの終わり〈やばいやばい 気づいて~〉のところはプリプロの段階でも全然納得いかなくて、レコーディング直前にギリギリ仕上げたという感じでしたし。

——あと大サビの手前に〈やっぱり君が……好きだー!〉とシャウトしています。

春奈:今までもセリフの入っている曲を歌ってはいたんですけど、それはセリフといってもひと言だけ。〈あのね〉とか〈いつかきっと〉みたいなフレーズが入っているだけの曲だったので、今回のシャウトはチャレンジではあったんですけど、これはこれですごく楽しかったです。もうこの曲はリリースイベントで披露しているんですけど、私が〈やっぱり君が……好きだー!〉って叫んだら、“るな充”(春奈ファンの総称)に「オレもー!」って返してもらうっていうことをやっているので、徐々に浸透してきている感じもありますし。……まあ、無理強いしているだけとも言えるんですけどね(笑)。

——そしてカップリング曲1曲目は「桃色タイフーン」のアレンジャー・Sakuさんがプロデュースする「恋せよ乙女」。ギミックを効かせまくったポップチューン「桃色タイフーン」から一転、かなり正統派のジャンプブルースです。

春奈:スウィングジャズとロックンロールとポップがいい具合にかわいく融合した曲ですよね。ただこの曲はすごくもったいないな、と思っていて……。

——もったいない?

春奈:カップリング曲にしておくのはもったいないなっていうくらい破壊力がある曲なので、ぜひみなさんに聴いてもらいたいなと思ってます。私自身レコーディングの日が楽しみでしょうがなかったくらい歌っていて楽しい曲なので。

——「桃色タイフーン」同様ストレートなラブソングではあるものの、春奈さんのボーカルスタイルはちょっと違う。この曲で春奈さんはちょっとカッコいい側にパラメーターを振ってます。

春奈:「桃色タイフーン」ではキャピっとした女の子をイメージしたんですけど、この曲ではちょっとツンとした女の子。〈ほら よそ見なら もう やめなさい!〉と割と言葉が強かったので、相手のことがすごく好きなんだけど、いざとなると言いたいことを言えなくなっちゃう王道のツンデレみたいな子を思い浮かべてました。でも「桃色タイフーン」と同じっていうのは実は合っているというか。〈来世まで愛してあげますわ〉とか〈ドキドキで死んじゃいそうよ〉とか、幽奈さんとも共通する、ポップな「死」を連想させる言葉を盛り込んでいます。なのでやっぱり「桃色タイフーン」と合わせて楽しんでもらいたいですね。

——確かに今おっしゃっていたとおり「恋せよ乙女」は「恋せよ乙女」で大胆なことを歌ってるなあ、という印象を受けました。

春奈:〈ドキドキで死んじゃいそうよ〉ってすごいパワーワードですよね(笑)。

——でも歌うのは楽しかったんですよね?

春奈:こういう気持ちはすごくわかりますから。推しの二次元キャラが尊すぎて死んじゃいそう、みたいな……。

——そこで出てくる恋愛対象が二次元キャラなのがすごく残念です(笑)。

春奈:でもドキドキする出来事なんて二次元の世界にしか転がってないじゃないですか!

——そんなことはございません! ちなみに今ハマってるタイトルは?

春奈:『イナズマイレブン』です。

——ということは推しは中学……。

春奈:3年生ですね。中3の男の子を観ながら〈ドキドキで死んじゃいそう〉になってます。ホントに推しが尊すぎて画面を直視できないことがありますから(笑)。

——そこまで実感を込めて歌っていらっしゃいましたか(笑)。

春奈:はい!(笑)。でもこの曲って誰にでも共感してもらえる曲だなとは思っていて。皆さんは対象が三次元なのかもしれないけど(笑)、誰かを好きになってドキドキしたことっていうのはあるでしょうから。

——確かにそうですね。で、カップリング2曲目は「Again」。「桃色タイフーン」「恋せよ乙女」と同じラブソング、しかも作詞作曲はSakuさんではあるものの、かなりメロウな1曲です。

春奈:ミドルバラードは得意というか、こういうゆったりとした曲はすごく好きで。歌の中で一番表現したいのは登場人物の感情の動きだったりするので、ゆっくりしたメロディに乗せて一つひとつの歌詞を粒立って聴かせることができるバラードやミドルバラードはやっぱり春奈るなの一つの大事なジャンルにしていきたいな、と思ってます。

——アマチュア時代からバラードやミドルバラードがお好きでした?

春奈:そうですね。昔から聴く楽曲とかカラオケで歌う楽曲はそっち系でした。デビューしてからキラキラした楽曲を歌うことが増えた感じですね。

——じゃあ今回のシングルの1曲目、2曲目をアマチュア時代の春奈さんが聴いたら……。

春奈:ビックリすると思います。だって私、デビューのきっかけになった『全日本アニソングランプリ』の予選会場で審査員の方に「アップテンポってなんですか?」って聞いちゃったんですよ。

——へっ? 「アップテンポってなんですか?」ってなんですか?

春奈:その日もバラードを歌ったら、審査員の方に「アップテンポの曲は歌わないんですか?」って聞かれたので、思わず「アップテンポってなに?」と(笑)。

——テンポの速い曲のことです(笑)。

春奈:そうらしいですね(笑)。今思うとそこまでアップテンポな曲じゃないんですけど、当時の私にとって最も速い曲は高橋洋子さんの「魂のルフラン」だったので。あれこそが激しい曲なんだっていうイメージがあったくらい、アップテンポになじみのない生活を送ってました(笑)。

——そうおっしゃるだけあって「Again」のボーカルはさすがというか。こういうミドルバラードを歌いこなすテクニックってなにかおありになったりは?

春奈:息づかいをすごく意識してますね。フレーズの一番最後、音が抜けるところのブレスを少し多めに残したり、ため息みたいなものをあえて入れてみたり。声優さんの演技なんかもそうなんですけど、重い物を持ち上げるときにウッ! と息を貯めたり、息づかいで伝わる感情っていうものもあると思うんです。ちっちゃいときからアニメを観ていて、なんとなくそういうことに気付いていたからかもしれないんですけど、特にバラードでは息づかいを意識的するようにはしてますね。

——確かにそう言われてから「Again」のボーカルを思い返してみると、声の抜き方がフックになっていますね。

春奈:「メロディはどんなにかわいく歌っていても、最後のビブラートや音の抜き方はちょっと渋い」みたいな聴かれ方をしたらいいな、とは思ってるし、それがちゃんと耳に残ってくれているとうれしいですね。

——そして10月には、まさに「桃色タイフーン」からインスパイアされたのだろうタイトルのワンマンライブ『LUNAtic Typhoon』が開催されますけど、もう演出プランやセットリストは固まりつつある?

春奈:今は『アニサマ』の準備もありますし、まだ演出プランもセットリストも皆無って感じですね(笑)。

——「こういうライブにしたい」みたいなイメージは?

春奈:ありがたいことに持ち曲が増えてきたこともあって、最近ライブで歌えていない曲も少なくないので、そういう最近日の目を見ていない曲を披露したいな、って思ってます。もうMCはいらないから全曲ライブをやりたいです!

——いや、るな充の皆さんはどう考えても春奈さんのおしゃべりも聞きたがってますって。

春奈:じゃあ当日物販コーナーで売っているグッズの紹介くらいはします!

——文字どおり“言うに事欠いて”、宣伝だけはする、と(笑)。

春奈:でも本当に曲をたくさん聴いてもらいたいっていう気持ちが強いんですよね。

——最後に、2018年後半の目標ってあります?

春奈:これも予定は皆無な状態なんですけど(笑)、クリスマス時期に何かイベントをやりたいな、とは思ってます。リア充の巣くつである魔のクリスマスにるな充の素晴らしさを知らしめてやりたいな、って(笑)。(成松哲)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む