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千葉雄大と伊藤沙莉の魅力が最大限に 最終回を前に『いいね!光源氏くん』制作統括に聞く

リアルサウンド

20/5/23(土) 8:00

 NHK総合の「よるドラ」枠にて好評を博しているラブコメディ『いいね!光源氏くん』が、23日に最終回となる最終絵巻「光くんばいばい?!」の放送を迎える。同名の女性コミックがベースの本作。『源氏物語』の登場人物、光源氏が地味に生きる現代のこじらせOLのもとに現れるという奇想天外な物語を、千葉雄大と伊藤沙莉の主演により、ふたりの魅力を最大限に引き出して成功した。

【写真】スイーツを差し出す千葉雄大と伊藤沙莉

 最終回を前に、制作統括の管原浩氏に、新たな光源氏を登場させた本作の魅力や、映像化の肝となった千葉と伊藤のキャスティング理由、現場でのふたりの様子、制作秘話などを聞いた。

■若者狙いが老若男女に支持されるドラマに

――「よるドラ」枠には、前作の『伝説のお母さん』や、再放送が始まる『腐女子、うっかりゲイに告る。』など、若者向けのイメージがありましたが、『いいね!光源氏くん』は老若男女を問わず人気になっています。

管原浩(以下、管原):今作ももともとは20代、30代の若い層を狙いたいと思って企画を選んだんです。それが蓋を開けてみると、50代の女性の視聴が多かった。普段朝ドラを観ている層といいますか。「雅なイケメンに惹かれるのは、若い人だけじゃないんだな。年齢層が上の女性たちも時めきたいんだな」と。若い視聴者はあとから追いついてきた感じです。男性の方も観てくれているのは、癒されたい人に響いたんでしょうね。

――女性コミックが原作です。どうしてこの作品を実写化しようと?

管原:まず「光源氏が現実世界に現れる」という一目瞭然の面白さがいい。ビジュアル的にも惹かれますし、企画募集の段階で、女性陣がすごく食いついてたんです。僕なんかは「光源氏っていろんな女性に手を出すんでしょ? みんな観てくれるの?」と思っていたので女性スタッフに聞いてみると、「こういう雅なイケメンだったら許しちゃうんですよ」と。「あぁ、そうなんだな」と勉強になりました(笑)。それに原作がイケイケな感じではなくて、非常にキュートなので、そこに倣えば面白いものになるんじゃないかと思いました。

■見事にハマった千葉と伊藤のキャスティング

――光源氏がOLの家のソファに腰かけているなんて、それだけで笑えます。しかし、だからこそキャスティングが重要だったかと思います。特に光源氏。

管原:そうですね。実際に企画が動き出したのも、キャスティングの目途がついてからです。イケイケのカッコよさではなく、キュートさや純粋さといった光源氏像を考えたときに、千葉さんなら愛くるしい和み系の光源氏になるだろうと思いました。原作の絵柄とはちょっとイメージが違いますが、逆に実際の平安貴族は顔が少しふっくらしていますしね。それから千葉さんは大河ドラマ『平清盛』で高倉天皇の役もされていて、雅さも出せるだろうと。あと考えたのは沙織のキャスティングです。

――伊藤さんもぴったりです。

管原:現在、千葉さんは一皮むけてよりいい役者さんになっていますが、キャスティング当初は千葉さんがどれだけコメディっぽい演技ができるのか、雅さと面白さを両立したお芝居ができるのか、正直未知数なところもあったんです。なので沙織は、千葉さんの芝居を受け止めて、ちゃんと応え、突っ込んでくれる芝居のしっかりした人にしなければいけないと。伊藤さんは子役時代から芝居の上手さに定評がありましたし、すごくハマりました。

――伊藤さんのハスキーボイスもいいですね。

管原:千葉さんのちょっとぽわんとした空気感と、そこに伊藤さんがハスキーボイスで突っ込むのがいい噛み具合になりました。最初に本読みをしたとき、ふたりは初共演ですし、手探りな感じもあったんです。千葉さんは、光源氏という超有名ではあるけれど、実際のモデルは誰も見たことがない人物をどう演じようかと迷っていましたし。でも彼なりに膨らませていってくれましたね。対する沙織はセリフの量がすごく多い。伊藤さんも「こんなに心の声をバンバン言えるかな」と漏らしていました。現場に入ってからは、千葉さんと伊藤さんが一緒に相談しながら作られていました。

■撮影後半の千葉と伊藤は親友のような雰囲気に

――改めて千葉さんと伊藤さんに、今のおふたりの役者としての勢いは感じましたか?

管原:感じました。千葉さんはこれまで明るい学園モノもやってきたでしょうけど、光源氏というそれにも増してとても大きな役を背負ってくれました。「こういう光源氏っていいな」と思えるのは、役者としての幅があるからだと思います。やはりこの人はいい役者になっていくと感じました。伊藤さんは、もともとうまいのは分かっていましたが、どちらかというと今までは脇に回る役どころが多かった。今回、前面に出たことで、より彼女に親近感が湧いて、もっともっと彼女を見たいという気持ちになった人は多いんじゃないでしょうか。

――相性もいいですね。

管原:ふたりとも思い切りこの世界観を楽しんでいる感じが出ています。中途半端じゃない。撮影後半の現場でのおふたりは、同級生のような、親友のような感じになっていました。何が好きだとか、色々なことを楽しそうに話してましたし、ノリで一緒に踊り合っていることもありました(笑)。キャスト全体の雰囲気も良かったです。

――ほかのメインキャストというと、中将役の桐山漣さんは漫画からそのまま抜け出てきたようです。

管原:中将は光源氏とは違うタイプのイケメンです。桐山さんに関しては、『これは経費で落ちません!』でもキャスティングさせていただきましたが、独特のオーラのある役者さんだなと思っていました。女性にも人気がありますし、彼をハメたら面白いんじゃないかと思いましたが、想像以上でした。

■ファンタジーだからこそ、平安貴族の佇まいはきっちりと

――和歌とSNS、中将とホストなど、平安時代と現代の掛け合わせがユニークです。

管原:平安時代の考え方とかしきたり、所作といったことを僕らもちゃんとわかっていなかったので、まずはちゃんと勉強しようとなりました。よく大河ドラマの芸能指導なんかもされている友吉鶴心さんを中心に、キャストもスタッフも、当時の人々のものの考え方だったり、色々なことを学びました。たとえ現代の空間にいようとも、平安貴族としての佇まいは貫こうと。ちゃんと重心を低くして歩いたりと、千葉さんも桐山さんも頑張ってくれました。中将がホストになるという点については、原作のえすとえむ先生のセンスの良さですよね。平安貴族風のホストがいたらどうなるんだろうと読んでいて笑ってしまいました。

――和歌とSNSはとても合いますね。

管原:これもえすとえむ先生が話されていましたが、現代人はSNSで色々呟いているけれど、和歌はそれと似ているんじゃないかと。平安も今も、みんな自分を表現したいんですね。

■柔らかな色合いでまとめた世界観

――光源氏と中将の衣装もステキですが、沙織や同僚たちなど作品全体の衣装が温かな色合いで統一されていて、世界観を支えています。

管原:演出家がこだわった部分です。23時台の作品ということもあり、あまりかしこまって観るというテイストではなく、観てほんわかできる感じにしたいと。なので演出のほうから衣装も全体を柔らかい色合いでまとめるようにお願いしています。小物や美術についても同様ですね。

――すべてを温かい感じで。

管原:今回の作品に関しては、「よるドラ」枠としての尖る意味合いが、これまでとは異なっているというか。柔らかさで突き抜けるという意味での尖り方になりました。

――世界観という意味では、原作に比べると職場でのシーンが多いです。

管原:ドラマの特性として、光がいないときのヒロイン沙織を表現するためには、職場が必要だと感じました。現代のひとつの象徴というか、光は働いていないけれど、沙織はちゃんと働きながら地味に毎日暮らしている。そこは沙織の基盤として必要だろうと。それから時には平安貴族ではない普通の人たち、同僚たちと話をすることで、平安貴族との会話の面白さをより発見できるのではと考えました。

■いよいよ最終回!

――岡崎体育さんのエンディング曲『ニニニニニ』も好評です。最初にお話に出たような、年齢層が上の、岡崎さんを知らない人たちも楽しく聴いているそうです。

管原:そのようですね。最初はやはり若い世代やネット世代に届けたいということから、岡崎さんが挙がりました。どんな出来上がりになるだろうとドキドキな部分もありましたが、チャレンジしてお願いしてみようと。すると岡崎さんも台本を面白く思ってくれたようで、いい感じで岡崎さんらしいユニークな表現で、なおかつドラマのテイストに合わせたほんわかした歌に仕上げてくれました。

――さて、ドラマはいよいよ最終回を迎えます。フィリップ(厚切りジェイソン)の登場あたりから、急展開を迎えていますが、ラストへ向けてひと言お願いします。

管原:これまで光のほんわかした部分に満たされてきた沙織ですが、現実を考えるといろいろ問題が見えてきました。同居人として楽しく過ごすだけならよかったんだけど、男女のラブを考えたとき、果たして自分たちはどうすればいいのだろうと。光も沙織も突き詰めていく。第七絵巻の後半で大ゲンカしてしまいましたが、一体ふたりはどうなるのか。最後まで見届けていただければと思います。

(取材・文=望月ふみ)

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