Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

“理論派”の小西遼と“感覚派”のAAAMYYYが語る、インターネット以降における音楽家のあり方

リアルサウンド

19/10/13(日) 16:00

 バークリー音楽院への留学から帰国後、自らがリーダーとなるCRCK/LCKSを結成しつつ、サックスやボコーダーを演奏するマルチプレイヤーとして、幅広いアーティストをサポートしている小西遼。ソロアーティストに軸足を置きつつ、昨年Tempalayにメンバーとして加入し、近年サポートやフィーチャリングに引っ張りだこのAAAMYYY。現在はTENDREのサポートとしても活動する2人は、ともに個の活躍が際立つ今の音楽シーンを体現する存在であると同時に、理論派と感覚派というまったくタイプの違う音楽家でもあるのが面白い。それぞれのスタンス、TENDREでの活動、時代感まで、幅広く話を聞いた。(金子厚武)

(関連:【写真】小西遼(CRCK/LCKS)とAAAMYYY(Tempalay)

●AAAMYYY「感覚的にかっこいいと思った人としかやってない自負はあります」

――アーティスト活動とサポート活動を並行して行うことによって、自らのクリエイティブにどんな還元があると考えていますか?

小西:俺は基本的にソロ、バンド、サポートをあんまり分けて考えてなくて、最初は「好きな音楽を好きなだけやる」みたいな、「話が来て、面白そうだったらやる」っていう、ただそれだけだったんですけど、結果的には自分に還元されてるものはめちゃめちゃありますね。例えば、TENDREと一緒に音楽をやるようになって、太朗ちゃん(TENDRE/河原太朗)が聴いてる音楽をすごく聴くようになり、それは間違いなく自分の糧になってます。今よく聴いてる音楽の基本的な方向性って、太朗ちゃんと会ってから知った音楽の方向に僕が流れた結果なので。

――以前とはどう違うのでしょうか?

小西:それまでは、僕はそもそもジャズの人間なので、ジャズと、高校のときに聴いてたJ-ROCKみたいなものと、あとは映画音楽、その3つをないまぜにしてる感じだったけど、LAとかロンドンの音楽を太朗ちゃんに教えてもらって、自分でディグるようになって。

――その変化はCRCK/LCKSにも影響を与えていると言えますか?

小西:もちろん影響はあると思うんですけど、CRCK/LCKSはあくまで5人の音楽だから、俺の変化がそこまで強く反映されてるってことはないかもしれない。ただ、ボーカリストに対するバンドの中の人間としてのアティテュードに関しては、TENDREで学んだことは大きくて。太朗ちゃんがどういう風に歌いたいのかを把握して、「じゃあ、こうアプローチすれば歌いやすい」とか、「こうすれば歌が立つ」みたいに考えるようになったのは、CRCK/LCKSにも反映されてると思います。

――AAAMYYYさんはどうでしょう? アーティスト活動とサポート活動を並行させることによるクリエイティブへの還元について。

AAAMYYY:私は(音楽家としては)小西とは真逆で、ずっと感覚で音楽をやってきて、だから携帯のアプリとか、身近にあったもので音楽を作るところからソロ活動が始まっていて、その分知らないことが多過ぎるから、いろんなことを知るためにサポートをやっている節はあって。でも、何でもやるわけではなく、Tempalayにしろ、TENDREにしろ、Ryohu(KANDYTOWN)にしろ、ホントに感覚的にかっこいいと思った人としかやってない自負はあります。すごくかっこいいけど、でも言葉にはできないその人の何かを解読したくて、それが音楽なのか、人間性なのか、生活なのか、周りにいる人なのか、そういった部分を知ることで、自分の音楽にも還元していると思います。

――音楽の知識を吸収するだけではなく、「その人のことを知りたい」という欲求も強いと。

AAAMYYY:それをすることで、「じゃあ、自分の強みは何なのか?」っていうのを見つけていった感じもあって、それが歌だったり、佇まいだったり、協調することだったりするのかなって。もともと自分が持っていたけど、ぼんやりとした輪郭だったものが、サポートで誰かと関わることによって、自分でちゃんと理解できようになってきたと思います。

ーー小西さんの場合は、サックスという楽器の特性もあって、ワンポイントでの参加も含め、様々なアーティストに関わっていると思うんですね。

小西:面白いのが、サックスは「吹く」楽器だからっていうのもあって、体感として、受け取るものというより「出すもの」なんですよ。どちらかというと、「提供する」みたいな意識になる。この間、Tempalayのリキッドルーム公演(『TOUR「21世紀より愛をこめて」× LIQUIDROOM 15th ANNIVERSARY』)に呼んでもらったときも、「自分の中のどの手札を出して、どうやったら一番Tempalayに貢献できるか」っていう考え方で。

――なるほど。

小西:でも、TENDREとかCharaさんはちょっと違って、単純に、一緒にいる時間が長いからっていうのもあると思うけど、太朗ちゃんは俺自身を見てくれてる感じがすごくするから、そうなると、こっちもいろいろ考えるし、ただの放出じゃなくなる。Charaさんにしても、昔は出す意識が強かったけど、今はバンマスをやらせていただいているので、もっと包括した目線があるというか。だから、今自分の中にポンポン情報が入って来るのを明確に感じてるのは、TENDREとCharaさんかな。

――近年のAAAMYYYさんはフィーチャリングでの参加も含めて、いろんなアーティストに関わってていると思いますが、そのなかで特に今の自分の活動に影響を与えたコラボレーションを挙げることはできますか?

AAAMYYY:一言で「フィーチャリング」と言っても、アーティストごとにやることは全然違うんですよね。例えば、踊Foot Worksとやった曲(「髪と紺」)は、キイチ(Tonedenhey)がすでにメインのメロディを用意していて、私は歌うだけだったから、与えられたものがあるなかで、それをよりよくするために自分にできることを考えて、コーラスワークに力を入れて。でも、TSUBAMEさんと一緒にやった曲(「YOU」)は、TSUBAMEさんにトラックをもらって、メロディと歌詞は自分で書いたので、プロセスが全然違って。どんな形にせよ、私は作曲者やバンドの良さを引き立てる存在であり、ぶちかます存在でもある、そういう自覚を持ってやってるので、ほんとに全部面白いです。誰でもいいような案件っていうのはほぼないと思いますし。

――相手の表現をただバックアップするだけではなくて、自分自身の表現を出すことによってバックアップするというか。

AAAMYYY:Tempalayに関しては、最初は「キーボードが弾ける女の子なら誰でもいいんじゃないのかな?」っていうスタンスだったんです。でも、やっていくうちに、「これは誰にでもできることじゃない。自分がここにいることの意味がある」って思えるようになって。

――だからこそ、メンバーにもなった?

AAAMYYY:そうですね。今Netflixで『アリサ、ヒューマノイド』っていうドラマがやってて、それに出てくるAIがめちゃめちゃ頭よくて。すべての物事を学習して、吸収して、自分を構築していくんです。あるときそのロボットが誘拐されて、犯罪者に囲まれて、「これをやれ」って言われたときに、「それを受け入れたら、そうじゃなかった自分とは別の方向に狂暴化してしまうこともありますよ」って、ロボット自身が言ってて、「オオッ!」って思って(笑)。

――作用し合う関係性という意味で、バンドの関係性とリンクした?

AAAMYYY:その選択をすることによって、その人がそのバンドの一部になるわけだから、一緒にやっていくっていう時点で、それはすごい選択だなって。

●小西遼「アーティストが変わったというよりも、むしろ社会の方が変わった」

――お二人のように多方面で活躍している「個人」の存在は、ある種の時代感の表れでもあると思うのですが、音楽家のあり方の変化について、活動の中で実感していることはありますか?

小西:インターネット以降で個人のあり方が変わってきて、アーティストのあり方が変わってきた部分もあるとは思うんですけど、でも本当は、The Beatlesにしても、Radioheadにしても、もともと一人ひとりがアーティストだったと思うんです。メディアのあり方として、バンドを総体として打ち出していったので、コアなファンやマニアだけがそれぞれの人にフォーカスしていたけど、アーティスト自身は昔から変わってない。そもそもソロの集まりで、その上でバンドがあったと思うんです。

――なるほど。

小西:ただ、インターネット以降は、バンドをやりながらでも、個人の意見を発信することがマイナスに働かなくなってきたというか、一人ひとりが好き勝手なことを言ってても、それが集まったときの面白さがあるし、一人のときの面白さもあるっていう、そこがイコールになったっていうか。だから、アーティストが変わったというよりも、むしろ社会の方が変わったっていうイメージが俺にはありますね。

――アーティストのあり方自体は昔と基本的に変わっていないけど、インターネットによって本来のあり方が可視化されて、顕在化した。

小西:解像度が上がったというかね。AAAMYYYにフィーチャリングの話が多いのもそういうイメージで、すべてが並列になった中で、AAAMYYYと何かやってみたいっていうのが、そんなに難しくないというか、みんながそれを面白いって共有し合える状態になってるっていう、そんな感じがしますね。

AAAMYYY:私はもともとアーティストに対して完璧主義的なイメージを持ってたんですけど、そういう音楽業界ではなくなってきた気がして、実際はもともと完璧じゃなかったんだなって。小西の言ったことと同じになっちゃうけど、もともと個人の集まりで、それ以上でもそれ以下でもなかったんだけど、メディアとかマネジメントの力によって、より大きなものに、完璧主義的な、パーフェクトな商業物に見せていたというか……。

小西:プロダクトとしてね。

AAAMYYY:そう。そういうイメージがすごくあったんですけど、自分自身が音楽をやるようになって、レコーディングで完璧に歌おうとすると、それよりもっとニュアンスを大事にする人が多くて、「オオッ」って思ったり。そういうところに時代感が表れてると思っていて。タブーだったものがタブーじゃなくなったり、LGBTQがありのまま受け入れられるようになってきたり、時代に合わせてそうなっていったのかなって。

ーー契約でガチガチに縛って、完璧なプロダクトを作り上げるのではなく、個人を尊重して、幅広い活動が許容されるようになり、そこから新しいものが生まれている時代なった。

AAAMYYY:これまでと同じことをしていてもダメで、変化しないと難しい時代だっていうことでもあると思うんですけどね。

小西:間違いない。やっぱり、新しくないとね。

――現在お二人はTENDREのサポートで活動をともにしているわけですが、そもそもTENDREに関わるようになったのは、どんな経緯だったのでしょうか?

AAAMYYY:Ryohuが誕生日公演をやったときに、そのバックバンドがampelで、私はコーラスで、それが太朗ちゃんとの出会いです。そこからRyohuのサポートを一緒にやるようになり、TENDREでも一緒にやるようになったっていう。

小西:俺はもともと太朗ちゃんは大学(洗足学園音楽大学)の同期なんです。でも、全然絡んだことなくて、ampelとは一回CRCK/LCKSで対バンしてるんですけど、そのときも「洗足なんだよね?」みたいな話をちょっとしたくらい。でも、その後ドラムの(松浦)大樹と下北沢の飲み屋で仲良くなって、TENDREがマルチプレイヤーを探してるってことで、推薦してくれて。で、『Red Focus』(TENDREデビューアルバム)を聴いて、「絶対やる!」って。これは俺にとってめちゃくちゃ楽しい仕事だなって……いや、仕事とも思ってないくらい、「とにかくこの音楽をやりたい」って思ったので。

AAAMYYY:私もそれはある。『Red Focus』を聴いて、「え、かっこよ」って思って、会ったときに「歌いたい」って。

――いろんな巡り合わせもあったけど、作品自体の魅力が一番の鍵だったと。

小西:間違いないですね。最初に『Red Focus』を聴いたときは衝撃だった。

●AAAMYYY「(TENDREの曲は)全部ホントにお気に入りの音しか入れてない」

――お二人の思うTENDREの魅力とは?

小西:総体として、すごくいいバランスだっていうのもあるし、僕はもともとプレイヤーなので、楽器が上手いとか、音楽のアカデミックなところがすごくよくできてるから、掘っても掘っても楽しめる。でも、太朗ちゃんがすごくいいのは、音大で勉強したいやらしさみたいなのがないことっすね。俺の場合、「むずい!」って感じさせちゃうのが癖だと思うから、それをどう面白くするかっていうやり方なんですけど、太朗ちゃんはもっとナチュラルで、湧き出るものをきれいに使ってる。身のこなしの軽やかさが音楽に出てて、変な話、太朗ちゃんは音大出てなくてもああいうのが作れると思う。

AAAMYYY:私一回太朗ちゃんが家でどんな風に曲を作ってるかを見たことがあるんですけど、オタクすぎて、気持ち悪いくらいいろんなことを知ってて(笑)。

小西:DAWの使い方とかってこと?

AAAMYYY:ビートの構築の仕方とか、一つひとつへの執着がすごくて、全部ホントにお気に入りの音しか入れてないし、一曲にパッションがギュッと詰まってて。

小西:太朗ちゃんはこだわるとこうるさいよねえ(笑)。

AAAMYYY:でもはっきり言うから、嫌味はないし。

小西:そう、音楽に対する愛だからね。

――太朗さんがほぼ一人で作った音源をバンドに置き換える上では、どんなことを重視してセッションが行われているのでしょうか?

AAAMYYY:最初にバンドセットをやって思ったのは、音源の再現ではないってことと、あと「TENDREの音楽を愛してる人を集めて、一緒に演奏する」っていう行為なんだと思いました。そこから生まれるグルーヴ重視っていうか。

小西:人とやる音楽は人と作るっていうかね。最低限、核となる部分だけ押さえたら、あとはみんなで作っていく感じがすごくあって、生き生きとした音楽にしようっていうのはすごくあると思います。

AAAMYYY:その場のバイブスを非常に大事にしてますね。

小西:太朗ちゃんがイニシアティブをとってディレクションする場面ももちろんあるんだけど、みんなのことを信じ切ってるから、「こういう感じでやってみて」って、丸投げも全然あって。最初からそれでいい人選をしてるっていうか、それで大丈夫だって思ってもらえてる感じもある。

AAAMYYY:なので、私もバンドセットをやるときは、「好きにやってください」って言えるメンバーを集めるようにしていて。それで素晴らしいものになるっていうのは、太朗ちゃんが教えてくれたことですね。

――一緒に活動をするようになって、お互いの魅力をどのように感じていますか?

AAAMYYY:小西は音楽が好き過ぎて、常に音楽のことか、ご飯のことを考えていて(笑)。ホントに「そこまで考える?」ってくらいずっと考えてて、でもその「これかな? これかな?」ってやってる時間がすごく楽しそう。「ずっと吹かせてたい」って感覚になるような、そういう音楽家ですね。

――太朗さんともまたタイプが違う?

AAAMYYY:太朗ちゃんよりもっともっと音楽狂っていうか……太朗ちゃんも音楽狂だけど、小西はもっと違う次元に行ってるっていうか。

小西:自覚ないんだけどねえ。

AAAMYYY:こういうところが素晴らしいです(笑)。

小西:俺は太朗ちゃんとか周りの人の方が音楽好きだと思ってて。自分では音楽はツールでしかないと思ってるから。

AAAMYYY:でも、打ち上げでもずっとサックス吹いてて、「まだ吹くんだ?」って(笑)。

小西:ガジェット好きなんで、おもちゃがあると触りたくなる節はある。

――逆に、小西さんから見たAAAMYYYさんの魅力は?

小西:俺より音楽を楽しんでる人だと思う。俺は音大2つ行っちゃったんで、音楽をプリミティブなレベルで楽しむことを忘れちゃったのかなって、冷めた目で自分を見てる節があって。俺絶対音感はないんですけど、音楽が流れると、瞬時に解析をする癖があって、音像、メロディ、コード進行、元ネタとか、そういうのをすぐ解析しちゃうんですよ。だから、お酒を飲んでないと、「お前最高だぜ!」みたいな感じでは音楽を聴けなくて、よっぽど感動する音楽と出会わない限り、「なるほど」って、冷めて音楽に触れちゃってて。

――そこがAAAMYYYさんとは違うと。

小西:自分でも「感覚でやってる」って言ってたけど、「よくわかんないけど、めっちゃいい」って感覚をちゃんと今でも持ってるのって、俺はミュージシャンとしてすごく大切だと思うんです。「音悪いけど、これでよくない? だって、いいものはいいじゃん」ってところには俺はもう行けない。「これ音もっとよくできるから」ってなっちゃう。でも実はそうじゃなくて、テープでグシャグシャに伸びてても、「いい歌はいい歌じゃん」っていう感覚を、AAAMYYYはちゃんと持ってると思うんですよね。あとは、さっき「一緒にやる人のことを知りたい」って話もしてたけど、俺より音楽を総体で見てるというか、全体を把握して、そのなかでちゃんと音楽を味わって生きてるんだなって思うから……いいなあって(笑)。

AAAMYYY:私も小西のこと「いいなあ」って思ってるけどね。

――理論派と感覚派の2人が一緒にクリエイトすることによって、お互い刺激を与え合っているんでしょうね。

小西:最近一緒にい過ぎてよくわからなくなってるんですけどね(笑)。でも改めて考えてみると、きっとそうなんでしょうね。(取材・文=金子厚武)

アプリで読む