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日系移民の強制移住事件に迫るドキュメンタリー「オキナワ サントス」初上映

ナタリー

20/11/5(木) 22:57

「オキナワ サントス」 (c)玄要社

第21回東京フィルメックスのコンペティション部門出品作「オキナワ サントス」が、本日11月5日に東京・TOHOシネマズ シャンテで世界最速上映。監督の松林要樹がQ&Aに出席した。

本作は「花と兵隊」「祭の馬」などで知られる松林が、第2次世界大戦中にブラジルのサントスで起こった日系移民強制移住事件に迫ったドキュメンタリー。その6割が沖縄からの移民であったという事実に注目し、多くの人々の証言から沖縄とブラジルの間の埋もれた史実を明らかにする。

前作「祭の馬」は東京フィルメックスのコンペティション部門で上映され、2013年に劇場公開。松林はその後、準備していた新作が2016年に中止になりふさぎ込んでいた時期にこの事件を知ったという。当時文化庁の研修制度でブラジル・サンパウロに滞在していた松林は、ブラジル日本文化福祉協会の図書館で沖縄県人会が残している資料が他県と比べてひときわ多いことに気付いた。「ブラジル社会の中で沖縄からの日系移民が2番目に多いんです。1番目は熊本で、3番目が福岡。でも戦後に限ると、移民者数は沖縄が断トツで多い。村ごと、町ごとの移民史が残ってる。ブラジル社会の中で日本文化として紹介されているものも、空手とか琉球舞踊など日本文化というより琉球文化なんです」と沖縄とブラジルの関係性を紹介する。

現地のコミュニティと密接に関わるのは、移民でもなく沖縄出身でもない松林にとって難しい部分もあったという。「沖縄県人会の活動には突出したものを感じてました。サントス強制移住事件を調べていくと、6割の人が沖縄出身者だとわかって、その資料を持っていったんです。そしたら『ヒージャー(山羊)食うぞ』と。それをきっかけに仲間じゃないですけど、彼らの懐、コミュニティに入れさせてもらいました」と振り返る。この事件は日系移民6500人がブラジル政府の命令で強制移住させられた悲惨な出来事にもかかわらず、戦後ブラジルの日系人は公にも、家族の間ですら語ってこなかった。松林は「資料がきっかけでした。それが彼らの中に眠っていた何かに火をつけたんですね。残してこなかった記録をちゃんと残したいという動機につながりました」とコメント。また、生存者の証言集めや資料収集を行いながら取材を進めていったことを明かした。

2019年12月にはNHK BS1スペシャルで「語られなかった強制退去事件」という48分のバージョンも放送された。映画版との違いについて、松林は「NHKの作り方はその問題を初めて知る人にもわかるように、0から丁寧に説明をしていく。今回の映画は要素は同じですが、当事者の言葉が必ずしも説明的にはなっていません。またテレビ番組ではあまりできないんですが、映画では『私性』を強めてます」と明かす。さらに「遠隔地ナショナリズム」という言葉を用いながら、「マイノリティの人たちがマジョリティにいじめられるのはよく起こること。沖縄の人たちはアイデンティティを守ることに突出しています。移民の人たちは移住した土地で自分たちの文化を丁寧に守る。例えば移民3世の人たちは日本語はしゃべれないけれど、今の沖縄でほとんど使われていない“うちなーぐち(沖縄の方言)”をしゃべるんです。そういう面白いことも起きています。彼らがどのように生き残ったかという道しるべとしてこの映画があったらいい」と語った。

「オキナワ サントス」は2021年に劇場公開予定。

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