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佐藤B作×金子大地インタビュー『ザ・空気』シリーズ完結篇にむけて

ぴあ

金子大地(左) 佐藤B作(右)

永井愛主宰の二兎社が、2017年の『ザ・空気』、18年の『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』に続いて、2021年1月、『ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…』を上演する。『ザ・空気』ではテレビ局を舞台にニュース番組の内容が政治的圧力で改変させられるさまを描き、『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』では国会記者会館の屋上を舞台にメディアと政権の癒着に焦点を当てた永井だが、今作では再びテレビ局を舞台に、報道の自主規制を扱うという。出演の佐藤B作、金子大地に意気込みを語ってもらった。

演劇としてのレベルが高い永井作品

── 前2作はご覧になりましたか?

金子大地(以下、金子) はい。独特な空気に笑いが入っていたり、今の社会とリンクするところがあったりするのが面白くて。このような舞台に出演してみたかったので、今回とても嬉しいです。

佐藤B作(以下、佐藤) 今の社会に対して物申す芝居でありながら、ただ拳を挙げて反対を叫んだりシュプレヒコールをしたりしているのではなく、喜劇的な要素も入っていて演劇としてレベルが高い。最高ですよね。以前、自分の劇団(東京ヴォードヴィルショー)で、永井さんが書かれた『パパのデモクラシー』を上演させてもらいましたが、永井さんご自身の書き下ろし&演出は今回が初めて。何回か出演のお話はいただいていたのに、いつも自分のところの公演と重なるなどして泣く泣くお断りしていたので、やっと願いが叶って、僕も本当に嬉しいですね。

── ver.3の物語の舞台は、ver.1と同じテレビ局。B作さんが演じるのはテレビ局の元記者で、政治ジャーナリストです。ver.1と同じく自殺した桜木さんというキャラクターも登場人物の話題に上るようですね。

佐藤 僕が演じる横松輝夫は桜木さんの先輩にあたる人物で、報道の世界に入った当初の思いを捨てて、今は総理大臣に都合の良いことばかり言っている。なんとなく、実在する人物が思い浮かびますよね。永井さんからはポスター撮影の際、作品の構想を色々とうかがったのですが、聞きながら「俺の役、ずっと出ている。大変だ!」と思いました(笑)。

── B作さんは佐藤銀平さんとの演劇ユニット・東京No.1親子で今年8月に上演された『夜鷹と夜警』でも、それこそ出ずっぱりに近い状態で、濃いキャラクターをパワフルに演じていらして。

佐藤 もうちょっと力が抜けるようになれば、もっと良い俳優になれると思うんですけど、東北から東京に出てきた田舎者でしょう? どうしても力が入っちゃうんですよ(笑)。年を取ったら抜けるかと思ってたんだけど、なかなか抜けない。今回も力いっぱい、いい勝負をしたいですね。

佐藤B作 撮影:源賀津己

── 金子さんが演じるのは、アシスタントディレクター、袋川翔平です。

金子 和田正人さん演じるディレクターの後輩です。永井さんからは、今どきの若者だとうかがいました。これから自分の役を深く知っていくのが楽しみでもあり、難しさもあるだろうなと気を引き締めてもいます。

── 劇は、テレビ局の検温で熱があったため一時的に隔離された横松が袋川に文句を言う場面で始まります。ADの立場からしたら、横松のような政治ジャーナリストは怖い存在ですよね、きっと。

佐藤 俺達の時代のADは人間扱いされていませんでしたから。給料は安いし寝る時間もなくて。局の社員の場合は将来ディレクターになれるということだけで頑張るけれど、なれるのはほんの一握りだし、契約やアルバイトのADは出世の見込みもない。袋川は制作会社のADだから、絶対に大変だ!

金子 映像の現場で見ていても、ADさんは忙しそうですし、気を遣うお仕事だろうと思うので、見えないところで大変なことが色々とあるんでしょうね。

金子大地 撮影:源賀津己

── おふたりが劇の中でどのような関係性を作っていかれるのか気になります。現時点で、お互いの印象は?

佐藤 爽やかでカッコよくて、モテるだろうなあ。羨ましいですね。若い時はモテたい一心で頑張っていましたから(笑)。俺もこんなふうに生まれていたら、全然違う人生を送っていたと思いますね。

金子 そんなそんな(笑)。B作さんは尊敬する大先輩。色気がありますし、とても温かい方だなと感じます。稽古が始まってわからないことがあったら、色々なことをうかがってみたいです。

── 俳優の先輩として、B作さんから金子さんにアドバイスはありますか?

佐藤 とにかく永井さんのホンをよく読むことですね。芝居の答えはホンにあるので、行間だったりセリフの裏の気持ちだったり、どこまで読めるかが役者それぞれの勝負。それが分からないとセリフは喋れません。あと、どうしても自分のセリフのことばかりを考えがちなんだけど、相手のセリフを聞く姿勢が大事な気がします。

金子 肝に銘じます。

エンタテインメントはお客さんあってのもの
観客全員を巻き込む空気をつくりたい

金子大地(左) 佐藤B作(右) 撮影:源賀津己

── 金子さんは今春の『ヘンリー八世』で初舞台を踏まれたばかり。いかがでしたか?

金子 舞台というものが全くわからなかったので怖かったのですが、いざやってみたらものすごく楽しくて。自分をさらけ出す快感のようなものがあって、これからも舞台に立ちたいと思ったんです。今回はまた全然違う現代劇なので、1から始めるような感覚で、たくさんのことを吸収したいですね。

佐藤 舞台って、日によって雰囲気がガラッと変わって、同じセリフを言っても反応がある時とない時があったりする。その日集まったお客さんの雰囲気の中で、どう芝居を成立させるか、ということを考えてやっていく楽しみがありますよね。若い時は寝ている客がいると本当に腹が立ったけれど、最近は「劇場に来てるから寝られるんだね」「じゃあ起こさずにやろう」っていう優しい気持ちになって(笑)。

金子 すごいですね! 僕だったら寝ている人がいたら「起きて! 観て観て!!」となってしまいます(笑)。

── 2020年はコロナ禍に覆われた年となりました。おふたりは自粛期間はどのように過ごされましたか?

佐藤 毎日つまらなくて、正直、死んじゃおうかな、なんていう変な気持ちになったこともありました。でも、お酒が良い友達になってくれましたね。かみさんは文句を言うけれど(笑)お酒は黙って付き合ってくれますから。

金子 僕も自粛期間中はなんだか孤独で、あれこれ考えてしまって。来年はもっと明るい年になればいいなと、心から願っています。

佐藤 そうだよね。少しずつでも状況が良くなって、早くお客さん全員が何も心配せず劇場に来られるようになってほしい。劇場が満員になっている情景って、やっぱり良いですから。ぐっと密になって全員で劇場が揺れるくらいの活気が戻ってほしいですね。

── 2021年に送る、空気シリーズの集大成。期待が高まります。

金子 『ザ・空気』だけに、皆さんを巻き込むくらいの空気作りをして、その日によって違うお客さん全員を、舞台の世界にお連れしたいです。エンタテインメントはお客さんあってのものですし、お客さんにとっても望んでいるものだと思うので、キャストもスタッフも一緒に1ヶ月間かけて作り上げるこの舞台を、なんとか無事に皆さんに観ていただきたいです。

佐藤 内容はシビアでも、観終わったお客さんが「楽しかった」「明日から元気に生きていけそう」と、前に歩き出せるような芝居が作れたらいいですね。“空気シリーズ”はファンが多いですから、ver.1、ver.2の座組に負けないよう、シリーズの“アンカー”として、良いゴールを決めたい。頑張ろうな!

金子 はい!



取材・文:高橋彩子 撮影:源賀津己
ヘアメイク:吉田太郎 スタイリスト:九(Yolken)

公演情報

二兎社公演44『ザ・空気 ver.3 そして彼は去った・・・』
作・演出:永井愛
出演:佐藤B作 / 和田正人 / 韓英恵 / 金子大地 / 神野三鈴

2021年1月8日(金) ~2021年1月31日(日)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
東京公演終了後、2021年2月4日(木)〜3月7日(日)埼玉・愛知・兵庫・滋賀・福岡・岩手・山形に巡回

東京公演チケットは12/12(土)10:00より、チケットぴあにて発売!

公演の最新情報は二兎社公式サイト


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