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佐野勇斗、着実に広げる表現の幅 『青夏 きみに恋した30日』『3D彼女 リアルガール』から分析する

リアルサウンド

18/9/24(月) 10:00

 7人組ボーカルダンスユニット・M!LKのメンバーとして活躍する佐野勇斗。役者としてもメキメキと頭角をあらわし、現在公開中の映画『3D彼女 リアルガール』では、2次元を愛する超絶オタク・筒井光役をコミカルに演じている。

【写真】2018年、数々の映画に出演する佐野勇斗

 2015年に映画『くちびるに歌を』で俳優デビューした佐野は、2016年放送のドラマ『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS系)で演じた高野亜紀(菅野美穂)の長男“お兄ちゃん”役で注目を集めて以降、その活躍はめざましい。とりわけ今年に入ってからは、ドラマ『トドメの接吻』(日本テレビ系)にはじまり、映画『ちはやふる -結び-』『羊と鋼の森』『青夏 きみに恋した30日』『3D彼女 リアルガール』が続々公開と、ブレイク街道を爆走中である。

 映画初主演となった『青夏 きみに恋した30日』(以下『青夏』)で演じた吟蔵は、田舎育ちの高校生。小麦色の肌にガッチリとした体つき、それでいて女性にも優しいイケメンだ。とはいえ、それは表面的なカッコよさばかりでなく、芯の通った男気あふれるイイ男。決して濃いキャラクターとはいえず、あくまで内側からカッコよさを滲ませねばならない難しい役どころである。佐野は、役作りのために肉体改造したことも明かしているが、その佇まいと面持ちは『青夏』が持つ、どこか懐かしくて純朴な世界観に合致。キラキラ輝くと言うよりは、メラメラと燃える熱さを持つ吟蔵に、佐野らしい瑞々しさを加えたことで生まれた好青年ぶりが印象的だった。

 そんな『青夏』公開から1カ月あまり、現在公開中の『3D彼女 リアルガール』(以下『3D彼女』)で佐野が演じているのは、2次元を愛し、リアルを遠ざけて生きてきた超絶オタクで、通称つっつん。フィギュアを愛でる目付き、少し早口な話し方にクネクネとした歩き方……周囲から気持ち悪いと蔑まれるつっつんは、誰からも愛される吟蔵とは逆を行く役柄だ。

 『3D彼女』は、学校一の美女とオタクというあり得ない恋愛を描いた物語。ヒロインの五十嵐色葉は中条あやみが演じており、劇中に登場する「よくできたフィギュア」というセリフに何の違和感も抱かないほどの美しさ。つっつんはそんな色葉から告白を受け、“新手のイジメ”ではないかと疑いながらも、ワケあって交際をスタートさせる。

 オタクと美女の恋愛といえば、『電車男』のように冴えない男子が外見も磨いていくストーリーかと想像する人も多いだろうが、『3D彼女』はそうではない。佐野はイケメン力を封印し、最後の最後までその武器を使わずに戦い続ける。見た目に大きな変化を付けずに、つっつんの内面的な成長を描いているところが作品のひとつの醍醐味であり、ほろりと感動を呼ぶ要因でもある。コテコテの“胸キュン”ではなく、つっつんの素直な優しさを通してじんわりと広がる“胸キュン”は不意打ちで、“ヤラれた”感が心地いいのだ。

 そして、劇中の同級生たちがつっつんの人柄に惹かれていくのと一緒になって、こちらもいつしか、彼のことが大好きになってしまう。その理由は、もちろんつっつんの人柄にもあるのだが、佐野が心から “つっつん役”を満喫していることによるところが大きい。佐野は今作で初めて本格的なアドリブにチャレンジしたことを本サイトのインタビューでも明かしているが、この作品で佐野が役者として一段階ステップアップしたことを客席からも確信できるほどに、イキイキとした演技を披露。溢れんばかりのパワーで、物語へと引き込んでくれるのだ。

 11月公開の映画『走れ!T校バスケット部』には、バスケ部のキャプテン・矢嶋俊介役で出演。さらに又吉直樹原作の『凜』(今年度公開予定)では本郷奏多とW主演を務めるなど、その活動は勢いを増すばかり。話題作への出演という実績のみならず、作品ごとに着実に表現の幅を広げてきた佐野勇斗。まだ20歳、今後の活躍にも期待したい。

(nakamura omame)

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