待望のブルーレイ＆DVD発売を記念して
深川麻衣にロングインタビュー！
『おもいで写眞』特集

“遺影”ではなく“おもいで写真”を──。東京での夢に破れ、故郷でそんな企画を立てた女性が、さまざまなお年寄りの思い出の場所で写真を撮っていくうちに、自らが抱えるトラウマにも向き合っていくことに……。

『君に届け』『ユリゴコロ』の熊澤尚人監督が長年温めていたオリジナルストーリーを、全編、富山ロケを敢行して映画化した本作。高良健吾、香里奈といった魅力的な俳優陣の中で堂々主演を務めたのが、『パンとバスと2度目のハツコイ』『愛がなんだ』など話題作への出演が続く、そして＜ぴあアプリ＆Web＞では連載エッセイ『マイペース語り』でもおなじみの深川麻衣だ。

2021年初頭の劇場公開を経て、8月25日には本作のブルーレイ＆DVDが待望のリリースとなるが、本特集ではそんな深川麻衣に単独インタビュー！　監督や高良、香里奈と共に収録したビジュアルコメンタリーであらためて本作を振り返ったばかりの彼女に、たくさんの“おもいで”を語ってもらった。

深川麻衣インタビュー①

深川麻衣インタビュー②

事務所の先輩たちの姿を見てたくさんのことを学びました

── ビジュアルコメンタリーの中で、香里奈さんが「コロナ禍の前だったからよく食事に行った」というお話をされていましたが、相談やアドバイス、印象に残った話はありますか？

深川　香里奈さんは、本当にお姉ちゃんのような感じでいつも気にかけてくださったり私の話を聞いてくれて。暑くて大変な時期の撮影だったんですけど、さりげなく冷たい飲み物や栄養ドリンクを差し入れしていただいたり、優しさが身に染みました。撮影中、考えすぎていっぱいいっぱいになってしまった日があって。撮影が終わった後、香里奈さんとふたりでごはんに行ったんですけど、地元のおいしい魚とかごはんを食べながら他愛ない話をして、その時間にすごく助けられました。

── 高良さんからはいかがですか？

深川　私が撮影をしているうちに、自分の中でどんどん深みにハマっていってしまうというか……何が正解か分からなくて、何度かテイクを重ねてしまったときがあったんです。そのときに高良さんがポロッと言ってくれたひと言に助けられました。今でも鮮明に覚えていて、違う現場に入っても思い出すことが度々あります。

香里奈さんも高良さんも事務所の先輩ですけど作品でご一緒したのは初めてで、おふたりが現場に立つ姿勢や背中からたくさんのことを学ばせていただきました。何気ないひと言ですごく助けていただいたり……。（井浦）新さんもですけど、なかなかこんなに事務所の先輩とがっつりご一緒できる機会は今までなかったですし、もしかしたらこれからもそうそうないかもしれない。自分にとってはすごく贅沢で恵まれた時間でした。

── 先輩方の姿を見て学ぶところが多かったんですね。

深川　そうですね。考え方や、その役に対しての向き合い方とか、そういったことを本読み、衣装合わせ、現場での佇まいから見させていただいて、とても勉強になりました。

それぞれの先輩方が培ってきた中で導いたやり方や答えがあって、私が全く同じことをしようと思ってもきっとそれは違うけど、自分もいつかこんなふうに現場に立ちたいな、余裕をもって楽しめるようになりたいな、と自分の中での目標ができました。先輩たちにしてもらったことを、いつか私も返していけるぐらいの力を身に着けられるように頑張らなければと思っています。

作品のメッセージが伝わった喜び

── 『おもいで写眞』の撮影後にもさまざま作品に参加されていますが、今回の作品がご自身にどんな影響を与えていると思われますか？

深川　熊澤監督は、画面の中での見せ方や、呼吸や息遣いなど、セリフ以外の身体の状態や間もとても大切にされていて。今までにない演出や、言葉をかけていただいたり、新しい発見がたくさんありました。あと今回、結子を通して“怒り”という感情に長い時間向き合って。でも同じ怒りでも、いろいろな表現の仕方があって。同じ喜怒哀楽の感情の中でもさまざまな幅や深さがあることを実感しました。人間ってとても複雑だなぁと。

── 公開後、印象に残っている感想や反響はありますか？

深川　ファンの方が教えてくれたのですが、名古屋にある写真館で働いている方が、『おもいで写眞』を見て無料で写真を撮るサービスを始めたみたいなんです。それを知ったときはとても嬉しかったですね。

監督は今回この映画の撮影に入るまでに、構想を9年間くらいかけてあたためてきたとお聞きしていたのですが、そう考えると遺影写真の問題って約10年前、それかもっとずっと前からあって、でも未だに解決は難しい問題なんですよね。

写真を撮られるのって、普段あまり慣れていない方からしたら恥ずかしさもあるかもしれませんが、私はこの作品を経て、形に残すことの大切さをあらためて実感して。本人にとっても、残された人にとって大切なものとして残っていくって、とても素敵なことだから、デジタル化が進む世の中ですが、もっともっと写真や形に残すというものが広がっていったらいいですよね。

だから、映画を観てくださった方から「自分もこれを機に写真に撮ってみようかな、と思いました」とか、感想をいただけたのは嬉しかったです。

── 高良さんもメイキングで、おじい様の遺影写真に関して後悔されたことがあるとおっしゃってましたね。

深川　そうですね。高良さんと香里奈さんも、結子と同じ経験があるっておっしゃっていました。もちろん写真だけが全てではないけれど、自分の大切な人がその人らしく写っている写真って、その人にとっても周りの家族にとってもとても大切なものになると思うんです。

撮る側の役を演じて、撮られることへの見方が変わった

── 今回、写真を撮る側、ということでカメラマンさんに指導を受けるシーンがメイキングにもありましたが、ご自身がカメラを触る中で変わったことはありましたか？

深川　普段は景色や人をよく撮るんですけど、人を撮るときは親しい友達を撮ることが多いんです。『おもいで写眞』では、初対面の人に対して、どうやってリラックスしてもらってその人を引き出すかを考えたんですけど、自分が普段のお仕事でカメラマンさんにしてもらっていることなんですよね。だからカメラマンさんのすごさを実感して。

相手との距離の取り方とか、その方なりのリズム、シャッターを切るときのリズムがあるな、って分析してるわけじゃないんですけど、『おもいで写眞』の撮影から見方が変わったところはあります。

── 撮られる側としても意識は変わりましたか？

深川　「こういうふうに映ろう」って意識は特にないんですけど、ちゃんとコミュニケーションを取りながらやっていけたらいいな、って。