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「LINEマンガ」担当者が語る、ウェブトゥーンの次なるステップ 「グローバルで人気になる可能性は十分にある」

リアルサウンド

20/11/12(木) 12:00

 マンガアプリとしてダウンロード数が3000万超と日本最大のサービス「LINEマンガ」。日本においてスマホでマンガを読む習慣を付けた立役者のひとつといっていい存在が、次に狙うものとは?

 LINE Digital Frontier株式会社 COO 平井漠氏に現在の戦略を訊いた。

■LINEマンガでしか読めない作品からヒットを作っていく

――日本でマンガアプリがリリースされるようになって6、7年経ちますが、今の状況をどう捉え、LINEマンガをどうしていきたいと考えていますか。

平井漠(以下、平井):電子書籍の市場環境はしばらく拡大傾向が続くと思います。一方で紙媒体の市場は縮小傾向が続いており、これは作品発表の場が少なくなっている事を意味していると思います。デジタルで作品を発表し、ヒットが生み出される構造が作れないとマンガ文化が廃れていくのではないかという思いがあるので、我々としてはLINEマンガのオリジナル作品や出版社と組んだ独占作品の配信を通じてヒットを生み出していくプラットフォームを目指していきたいです。

――LINEマンガでは、大きく分けると、電子取次のメディアドゥ経由で出版社から調達したほかの電子書店でも販売されている作品、出版社と組んでの独占配信作品、LINEマンガオリジナル作品(LINEマンガ編集部によるものと、韓国のNAVER WEBTOONのもの)の3種類が配信されています。巻売りではなく話売り(話レンタル)作品は、以前はすべて「曜日連載」のタブにまとめられていたと思いますが、現在では出版社が提供する作品は「毎日無料」にまとめられ、出版社の独占配信作品やLINEマンガオリジナル作品は「曜日連載」と分かれています。結果、出版社から提供されるマンガはかつてより目立たなくなったように感じますが、これはどういう意図ですか?

平井:読者と作品との出会いをいかに生み出すかを一番重要なミッションと考えています。読者からすると出版社から提供いただく非独占作品でもオリジナルでも、知らない作品であれば「新しい作品」ですから、その意味において私たちは分け隔てなく作品との出会いを多く生み出そうと日々取り組んでいます。ただ、LINEマンガでしか読めないオリジナル作品や独占作品というのは連載中の現役作品となり、私たちのプラットフォームの中でも特別な作品です。我々のプラットフォームからヒットを生み出したいという思いにもつながりますが、ユーザーにも特別な作品だと示す必要があると思います。そこで、LINEマンガでしか読めない現役の連載作品を「曜日連載」に、完結した作品を「毎日無料」に表示を分けるようにしています。

 LINEマンガのオリジナル作品は完結したものも含めてすでに370以上あり、これらのオリジナル作品や独占配信作品は今後プラットフォームの大きなコアバリューになっていくだろうと考えています。

――集英社の「ジャンプ+」からは単巻100万部クラスの『SPY×FAMILY』が生まれました。そうした出版社発のマンガアプリオリジナル作品と比べるとLINEマンガオリジナルには目立ったヒットがないと感じているマンガ関係者も多いようですが、何が課題だと認識し、どのような取り組みをしていますか。

平井:ヒットの基準を何に置くかですが、LINEマンガオリジナル作品では読者数が月間200万人を超える作品もあります。我々としては作家さんが発表しやすい環境、読者に読まれやすい環境や仕組みをいかに作っていくかが重要だと考え、注力しています。

――具体的には?

平井:発掘に関してはインディーズ(作品投稿)サービスを運営し、学校訪問や出張編集部への参加など作家を目指している方にインディーズでの発表を呼びかけています。インディーズでは担当者が1人でも面白いと感じた作品に声をかけ、期間限定で「トライアル連載」を実施しています。そして読者から人気が得られれば継続して連載していく仕組みを採用しています。

――インディーズでトライアル連載をしている作家にも編集者が就く?

平井 担当は必ず付きますが、インディーズ経由の作家さんには自由に描いていいというスタイルを貫いています。編集者は作家さんに作品実績の共有やアドバイスをし、作家さんが描きやすい環境づくりに集中してもらうのが仕事です。

――NAVER WEBTOONの作家と編集者の関係に近いですね。

平井:そうですね。ただ、作家さんの特性によって編集者といっしょに作っていったほうがよい場合もあり、そのあたりは作家さんに合わせながら柔軟にやっています。

――LINEマンガオリジナル作品の編集者と作家の関係は?

平井:出版社さんの編集部に近く、二人三脚で企画を考え、ネームから見ていく作り方をしています。ヒットに関しては狙って出せるものではないですし、紙のマンガ雑誌でも長い期間をかけて1つ2つ出るかというのが普通ですから、作家さんとしっかりコミュニケーションを取りながら一緒に作品づくりに取り組んでいます。

■日本発の作品をNAVER WEBTOONを使ってグローバル展開させたい

――LINEマンガは2018年にLINE Digital Frontier(以下LDF)運営となり、NAVER WEBTOONと資本・業務提携していますね。運営が変わり、NAVER WEBTOONと提携して以降、何が変わりましたか。

平井:今年の8月からWebtoon Entertainment Inc.が我々の親会社となり、NAVER WEBTOONと同じ親会社を持つ企業としてグループ間の連携を本格化させた体制になりました。コンテンツや人的リソース、データ分析などに関する知識など、様々な部分でグループ間のシナジーを高めています。NAVER WEBTOONは北米や韓国を中心に世界各国でマンガサービスを展開しているプラットフォームですから、今後は出版社から提供いただいている独占配信作品も含め、LINEマンガ発の作品を同社のプラットフォームを活用し、グローバルで展開できればと思っています。まだ始めてから1年程度ですが、すでに『マリーミー!』や『文学処女』など数作品はグローバル展開しています。世界で配信されると読者数の桁が変わり、その分、収入も増える点は作家さんにも魅力に思ってもらえたら嬉しいです。『女神降臨』や『外見至上主義』などのウェブトゥーンが日本でもヒットしていることを思えば、日本で人気の作品がグローバルで人気になる可能性は十分にあります。

――ただ、日本のマンガ市場は4300億円台で世界最大ですよね。アメリカですら1100億円台と約4分の1しかありません。読者数はともかく、金額ベースで見て本当に稼げますか。

平井:成長速度が違います。ここ数年、日本の電子書籍市場をはるかに上回る成長率でウェブトゥーン市場は大きくなっており、グローバルではウェブトゥーン(縦スクロール作品)がスタンダードになっています。たとえばNAVER WEBTOONはグローバルMAUで各国およそ67000万人以上の読者がいますが、将来的には日本よりグローバル市場の方が大きくなる可能性もあると思います。

■『神之塔』はTVアニメ化を機に飛躍的に伸びた

――今年NAVER WEBTOON作品の『神之塔』『ゴッド・オブ・ハイスクール』『ノブレス』が続けてアニメ化されました。LINEマンガにどんな影響がありましたか。

平井:アニメ化以前から、全世界累計閲覧数では『神之塔』が45億回、『ゴッド・オブ・ハイスクール』が38億回、『ノブレス』が46億回以上を記録する人気でしたが、LINEマンガの読者数や売上はアニメ化以前と比べるとかなり増えました。特に『神之塔』は原作ファンの熱量が高く、SNS上の反応も大きかったこともあり、大きく伸びました。

――フルカラー縦スクロールのウェブトゥーンは日本国内で浸透したという認識ですか?

平井:配信当初から読者はタテヨコを意識せずに読んでくれていると感じています。とくに若年層はそうですね。LINEマンガでは女性には『女神降臨』のような恋愛マンガが、男性向けだと『喧嘩独学』のようなアクション要素のあるものが人気です。ただ、作品はバランスよく幅広いニーズに応えるラインナップを意識しています。

――ウェブトゥーン作品はほとんどコミックス化されておらず、LINEマンガでは課金しても1週間しか閲覧できない「話レンタル」しかできないため、長編を読み返す際、不便です。この点、改善の予定はありますか。

平井:検討しています。紙の単行本は縦描きで作ったものを横に組み直して紙でフルカラー印刷するコストがかかるため簡単にはいきませんが、なんらかのかたちでファンの保有ニーズは解消していきたいと思っています。

――2020年は韓国ドラマが日本で大きく注目された年でした。LINEマンガで配信されているウェブトゥーンを原作にした作品として『少女の世界』『恋愛革命』などが今年ドラマ放映され(もっとも、日本の地上波で、ではないですが)、『Sweet Home』もNetflix配信が予定されています。ドラマファンの流入はありますか。

平井:我々が日本でプロモーション活動をしていたわけではないので分かりかねるのですが、今年韓国でドラマ化される『女神降臨』はSNSを見ているとファンのアカウントがあるくらい人気で、著名なキャストが主演することもあり、日本で放送されることになればドラマファンの流入も見込めるのではと思っています。

――LINEマンガとしての中長期的な目標と、直近の告知事項があればお願いします。

平井:国内でユーザー数と売上で圧倒的なナンバーワンを取ることが目標です。そのためにも、サービスのレベルを上げ、毎日使いたくなるような仕組みや人気の作品を生み出せる仕組みづくりに注力していきたいと考えています。

 また、目下の告知事項としては、『マリーミー!』のTVドラマと『ノブレス』のアニメが放送中なのでぜひご覧ください。

 他にも、『女神降臨』『外見至上主義』をはじめとする人気作品のグッズを販売する期間限定ポップアップショップを10月29日から全国のマルイでオープンしています。作家全面監修のもと、ここでしか手に入れることができないグッズを多数用意していますので、ぜひ足を運んでみてください。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

■関連情報
『マリーミー !』ドラマ情報 https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3405
『ノブレス』アニメ情報  https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3406
ポップアップ情報  https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3455

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