Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

Honda VEZEL CMソングにも抜擢 世界が色めき立つFriday Night Plansの流儀

リアルサウンド

19/11/30(土) 18:00

 キラリと輝くルーキーたちの台頭によって、未だかつてない多彩なフェーズを迎えている和製R&Bの世界。SNSや定額制音楽配信サービスの発展も手伝って、今や四方八方で若きスターが誕生している状況だが、中でも“彼女”の音楽には圧倒的な求心力を感じずにはいられない。

 Friday Night Plans。日本人の父とフィリピン人の母を持つMasumiによるアーティスト・プロジェクトだ。2018年にデビューして1年数カ月、未だ詳しい本性はベールに包まれている謎めく新星だが、その神秘的すぎる佇まいを音楽ファンが放っておくはずもなく、注目度はあれよあれよと上昇。先日リリースされたばかりの2nd EP『Complex』はiTunes R&B/ソウルランキングで1位を獲得したほか、注目株を続々と輩出するHonda VEZELの新CMソング(夜篇)に、彼女書き下ろしの楽曲「HONDA」の起用が決定(同CMの昼篇にはKing Gnuの書き下ろし楽曲「小さな惑星」が起用)。あまねく人々にその名前が知られるのは、もはや秒読みの状態にある。

VEZEL TVCM「PLAY VEZEL 昼夜」篇

 Friday Night Plansの特性を挙げるとするならその“発火ルート”だろう。例えば『Complex』のリード曲である「All The Dots」がUK版「iD MAGAZINE」のプレイリストに選出されたり、続く「Decoy」もアメリカの人気メディア「FADER」でミュージックビデオがプレミア公開を果たすなど、日本以外の国でピックアップされる機会がじつに多い。さらに遡れば、多くの外国人がシティポップに沸く契機となった竹内まりやの「Plastic Love」をカバーした際も、その楽曲を韓国の人気グループ・NCTのメンバーがダンス動画のBGMに起用したことでムーブメントに。これらの異例とも言える快挙からは、Friday Night Plansがグローバルに羽ばたくことを前提に推し進められた、裏を返せば音楽性のガラパゴス化を意図的に回避しているプロジェクトであることが見て取れる。事実、ほぼ全ての楽曲が英語詞で綴られており、海外の人々にとっては近い距離感で享受しやすい大きな拠り所となっている。

Friday Night Plans – ‘Plastic Love’ Cover Version (Original Song by Mariya Takeuchi)

 無論、他のアーティストが彼女と同様に英語詞で歌ったところで、このような立派な結果を招くとは断言し難い。Friday Night Plansはまずもって、Masumiのボーカルがとにかく素晴らしく、作業中でも思わず手を止めて耳をすませたくなるほどの秀でた個性を有する。エアリーかつウィスパーじみた発声を敬愛し、たとえ低音のパートであっても重量感を断じて醸さない。その何とも涼しげな所作は、「All The Dots」やadidas Originalsとのコラボ曲としてJJJ、STUTSと共に制作された「PRISM」など、ファルセットを強く打ち出した楽曲で遺憾無く発揮されている。

Friday Night Plans – All The Dots (Prod.Tepppei)
Friday Night Plans, JJJ, STUTS – PRISM

 またサウンド面においても、心地よい意匠が随所で炸裂。デビュー当初から初のEP作品である『LOCATION -Los Angeles』を発表するあたりまで、すなわち2018年のうちは、間違いなくR&Bが彼女の最優先言語だった。エレクトリックな味付けが芳しい1stシングル曲「Happy Birthday」やブランディ、シアラ、ティナーシェといった歴代のディーヴァを自ずと想起させるセクシャルな「UU」など、洋楽にも引けを取らないオーセンティックな手法は、Masumiの哀愁がかった歌声との呼応も抜群。結果、息つく間もないリリースペースも相まって、この時点で彼女の稀有な存在感は早くも確立されるに至った。

 しかしその路線も、翌2019年には早くもアップデートされることに。昨今のR&Bの主流にあたるオルタナティブな質感こそ引き継がれてはいるものの、最新作『Complex』を聴く限り、それはあくまでもエッセンスとしての話。デビュー時からMasumiと共作を続けてきたTepppeiとの本格的なセッションから生まれた楽曲群は、雨上がりの地面のごとく芳醇な土臭さを湛え、ただでさえ危うさを秘めたMasumiの歌声がより一層儚げに響き渡るようになった。前のめりな4つ打ちビートを敷いたエレクトロポップの「Decoy」ですら、2018年には存在していた明るいアップナンバーとは似て非なるアンニュイさを放出しているから驚きである。聞けば本作は、彼女自身が抱えるネガティブな側面との対峙が大きなキーポイントになっているという。デリケートなパーソナリティを臆することなく曝け出した末、退廃的な空気で魅了する。しばしば比較されるビリー・アイリッシュとの共通性を見出すとともに、Friday Night Plansの高度なステップアップにまたしても心を奪われる一作となった。

Friday Night Plans – Decoy (Prod.Tepppei)

 諸外国とは異なり、日本の音楽チャートは洋楽がほとんどランクインしない傾向にある。だが冒頭でも伝えた通り、Friday Night Plansのチャートアクションはすこぶる好調。つまり彼女は今、まるで逆輸入のような形で、世界標準の音楽を日本人の趣味嗜好に浸透させつつある。これは実のところ、大した離れ業である。気になるCM曲「HONDA」では久しぶりに明快なアップナンバーへ臨んでおり、またここから新たなフェーズへ突入しそうな予感大。彼女のブレイクに乗り遅れないよう、今のうちに耳と脳にその名前をしっかりと焼き付けておいておくことをおすすめする。

Friday Night Plans – HONDA (Teaser) [2019.12.6 Release!!]

■白原ケンイチ
日本のR&B作品をはじめ、新旧問わず良質な歌ものが大好物の音楽ライター。当該ジャンルを取り上げるサイトの運営、コンピレーションCDのプロデュース、イベント主催の経験などを経て、現在はささやかに音楽ライフを満喫する日々。Twitter

Friday Night Plans『Complex』

■リリース情報
『Complex』
配信中
配信はこちらから

<収録曲>※全5曲
1.Decoy 
2.Nameless 
3.All The Dots 
4.Miss Me? 
5.Antiquities

■関連情報
Friday NightオフィシャルInstagram
Friday NightオフィシャルTwitter
Friday NightオフィシャルYouTube
Friday NightオフィシャルFacebook
Friday NightオフィシャルSoundcloud
レーベル「MIYA TERRACE」(@MiyaTerrace)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む