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水先案内人のおすすめ

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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

ニュースで報じられるほど大ヒットしているので、それなら観てみようかと、予備知識なしに観に行くと、わけがわからないと思う。 『少年ジャンプ』に連載された原作コミックは、1巻200ページ前後で全23巻(現在出ているのは22巻まで)という長編。最初の6巻がTVアニメになり、その続き、7巻から8巻の途中までの約300ページが、今回の映画『無限列車編』にあたる。 映画の冒頭に「これまでのあらすじ」とか「登場人物の紹介」はない。敵である「鬼」とは何なのか、主人公とその仲間はどういう関係なのか、そもそもなぜ闘うのかなどは、何も説明されない。その意味では不親切で、「一見さんお断り」の映画だ。 公式サイトで最低限の予習をしたほうがいいし、映画館で、これまでのあらすじが書かれた小冊子が無料でもらえるので、開場と同時に入り、開演までに読むのもいい。 というわけで、映画はいきなり主人公たちが列車に乗るところから始まる。このオープニングは『オリエント急行殺人事件』を思わせる雰囲気。この列車上で、主人公たちと鬼との壮絶な戦いが展開される。 TVアニメもそうだが、この『無限列車編』も、原作をカットしたり、原作にないキャラクターやエピソードを加えたりせず、原作をそのままアニメにしている。「原作の改変問題」が起きない作品だ。アニメは絵が動くし、音も出るし、色もついているので、原作の魅力が何倍にも何十倍にも増幅されているのだ。戦闘シーンは、アニメのほうが迫力がある。背景の色彩の美しさと音楽は、凄惨な物語を浄化させる。原作とその映像化作品との、まれに見る幸福な関係がここにはある。 前述したように、『無限列車編』はコミックスの8巻の途中まで。つまり、これで終わりではなく、まだまだ物語は続く。つまり『スター・ウォーズ』の『帝国の逆襲』とか『最後のジェダイ』のような作品だ。

20/10/22(木)

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