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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

カムバック・トゥ・ハリウッド!!

2019年のNETFLIX作品『アイリッシュマン』はマーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロの四十数年に及ぶコンビ作の、集大成的意味を持つ傑作だった。多くの殺人事件に関与したフランク・“アイリッシュマン”・シーランを演じたデ・ニーロの、底光りする渾身の演技が傑作足らしめた。 それから3年、本作『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』でのデ・ニーロは狂気と正気の狭間を往還する、“殺人”をも辞さないマッド映画プロデューサー役を楽し気に演じている。儲かる映画のためなら何でもありという設定は少々エグいが、トミー・リー・ジョーンズ、モーガン・フリーマンというレジェンドたちとの共演作とあらば、見逃すわけにはいかない。デ・ニーロ77歳、M・フリーマン83歳、T・L・ジョーンズ74歳、3人の平均年齢は何と78歳!!! 舞台は1970年代のハリウッド。B級映画プロデューサーのマックス(デ・ニーロ)は、ギャングのレジー(M・フリーマン)から借金して作った映画が大コケして破産寸前。そこで起死回生の大トリックを思いつく。危険なスタント撮影で俳優の死亡事故が起きれば、保険金がガッポリ入って大儲けができる、という訳だ。老人ホームから往年のスター、デューク(T・L・ジョーンズ)を担ぎ出して、西部劇の撮影を開始する。ただし真の目的は、撮影初日にデュークに死んでもらうこと。ところがデュークは思いの外タフで、彼の思惑は……というお話。 西部劇を撮影しているという設定の映画中映画撮影風景が、笑える。馬を暴走させての落馬死、吊り橋に仕掛けを施しての墜落死。ドタバタ騒動の中に、出資者、製作者、主演者三人三様の屈折した“映画愛”をにじませて映画ファンの心をくすぐる。 監督・脚本のジョージ・ギャロは1956年生まれの65歳。大学でグラフィックアートを専攻していたが、マーティン・スコセッシ監督の『ミーン・ストリート』(73)を観て専攻を映画に変更。デ・ニーロ主演の『ミッドナイト・ラン』(91)の脚本を執筆した監督だけあって、デ・ニーロの演技のツボを押さえているのがよく分かる。

21/5/19(水)

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