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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

歌舞伎座九月大歌舞伎

大河ドラマ『真田丸』でもおなじみ、大坂夏の陣の真田兄弟をモデルにしたといわれる第二部『近江源氏先陣館』の『盛綱陣屋』。北条時政(徳川家康)、佐々木盛綱(真田信之)が鎌倉側、佐々木高綱(真田幸村)が京側と置き換えて描かれる。 京と鎌倉の合戦の最中、佐々木兄弟は敵味方に分かれて戦っている。兄盛綱の陣屋では高綱の息子小四郎を捕らえたが、高綱の使者和田兵衛が小四郎を返すように申し入れてくる。盛綱は戦に強い高綱らしくないと拒絶。また小四郎は、高綱の首かどうかの首実検に際し、首を見た途端に「父上様」と言って切腹をする。だがその首は明らかに高綱のそれではない。高綱の息子の小四郎にそれがわからないはずはない。小四郎はなぜ切腹を? 盛綱はそのからくりを考え抜き、小四郎のけなげさに胸を打たれ、高綱の作戦に思いをはせる。 盛綱はこの間ずっと黙したまま、複雑な心情を表現しなくてはならない。盛綱役者の腕の見せどころだ。今月は松本幸四郎が初役で勤める。 子役たちが大事な局面を担うこの狂言、今回は高綱一子小四郎に尾上丑之助、盛綱一子小三郎に坂東亀三郎。先に『春興鏡獅子』の胡蝶で息の合ったコンビぶりを見せてくれた二人が勤める。 さらに盛綱は母微妙に対して、高綱が戦意を失わないようにと、人質にとった小四郎を微妙の手で殺めてくれと頼む。この微妙は、『廿四孝』の越路、『道明寺』の覚寿とともに、歌舞伎の老婆の「三婆」とよばれる難役。今月微妙を勤めるのは中村歌六。珍しく女方を勤める。 ときおり涼やかな風の吹き始めるこの候、こってりとドラマチックな時代物狂言の傑作を堪能できそうだ。

21/8/25(水)

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