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水先案内人のおすすめ

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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

先生、私の隣に座っていただけませんか?

「先生」と呼ばれる職業は多い。教員、医者、弁護士、小説家、作曲家、作詞家、画家、マンガ家、映画監督も「先生」と呼ばれる。 しかし「隣に座る先生」とはどんな先生なのか。この映画を観る前、タイトルだけを見たときは、先生が隣にいるシチュエーションが思い浮かばなかったが、あったのである。それは観てのお楽しみ。 主人公はマンガ家「夫妻」。妻が先生で、夫はそのアシスタントなのだが、夫も以前は「先生」として描いていたようで、編集者は「先生」と呼ぶ。「先生夫婦」だ。 そこに、第三の「先生」、隣に座る職業の人物が登場して、夫婦の物語が動き出す。 最初は夫の不倫の話かと思わせておいて、妻の不倫がストーリーの中心となる。ところが、その不倫のシーンは妻が描くマンガを夫が読んで、想像する形で描かれるので、本当に不倫をしているのか、妻の創作なのか分からない。 虚実の境目がつかないのが、この映画の、まさに映画的手法による表現。 「夫婦映画」だという。たいがいの映画に「夫婦」は登場するのに、あえてそう呼ぶのはなぜなのか。 黒木華がいつもながら真意がつかめない役を、柄本佑がいつもながら自分の置かれている状況がわからない役を、それぞれ見事に演じている。観客は、柄本同様に、黒木に翻弄される。

21/8/23(月)

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