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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

ドライブ・マイ・カー

小説の映画化には、大まかに二通りが考えられる。原作をほぼ忠実に映像に置き換えること、もうひとつは設定などを変えて翻案することだ。村上春樹の同名小説が原作の本作は後者に該当する。 文字で表現された小説の世界を単に視覚化しただけでは魅力が伝わりにくいことがある。物語の舞台を変えたり、場面を長くしたり、原作にはない挿話を挟んだり……という作業は、映画づくりにはある意味必然なのだろう。 原作を大幅に変えた例としては、スタンリー・キューブリック監督『シャイニング』が有名だ。ロバート・アルトマン監督『ロング・グッドバイ』も、チャンドラーの原作から遠く離れたものだった。しかし、両作とも映画史に刻まれる名作だ。 濱口竜介監督はインタビューで「原作が短編なので、映画にするためには材料が明らかに足りない」と語り、原作収録の短編集『女のいない男たち』から他の2編をモチーフで使ったと明かしている。その試みは見事に成功している。作品同士の“継ぎ目”に違和感を持つ観客はいないだろう。 主人公の家福(西島秀俊)が、みさき(三浦透子)の運転する愛車サーブのどのシートに座っているかを注視してほしい。圧巻の179分。長さを感じない。

21/8/18(水)

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