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水先案内人のおすすめ

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話題作、アート系作品を中心に

恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス

1974年の作品だが、今こそ見るべきだと思う。米ジャズ界の奇才、サン・ラーの世界観が乱反射するSF映画。あえて分類すれば、ブラックスプロイテーション映画ということになるのだろうが、見るほどに心にしみいるのは、宇宙的調和を希求するサン・ラーの音楽世界である。 冒頭、「世界は終わったとまだ気づかないの?」という声が響く中、なまめかしいフォルムの物体が大宇宙を進んでいく。そして登場するのは、太陽神の姿をしたサン・ラー。大宇宙の使者である彼は、音楽の力をもって、人種差別や抑圧が渦巻く地球から、選ばれし人々を解放しようとする。 独特の美意識に貫かれた映像の中、俗悪な「監視者」や、銀河間移動のノウハウを盗もうとするNASAとの闘いが描かれる。最初は面食らうが、自由なステージと、サン・ラーの音楽に希望を託す熱い心の若者たちを見ていると、こちらの心も熱くなって、差別や分断、商業主義など、今日に至るまで私たちが解決できずにいる問題についての思考が自然に促される。宇宙の調和から「地球だけがズレている」という言葉もなんと心に迫ることか。 最終盤の演奏を聴くころにはもう、その音楽のとりこ。ありがたくて、サン・ラーの頭の飾りが螺髪、コスチュームが袈裟のようにも見えてくる。

21/3/1(月)

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