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水先案内人のおすすめ

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時代劇研究家ですが趣味は洋画観賞。見知らぬ世界に惹かれます。

春日 太一

映画史・時代劇研究家

デッドロック〈1970年〉

1970年に製作されたドイツ映画で、これが日本初上陸になる。 照りつける太陽。どこまでも広がる真っ白な岩だらけの荒野。鉱山が閉鎖され、廃墟同然となった町。正気を失っている元娼婦の母娘。大金を巡って錯綜する男たち。 ……と書くと、マカロニウエスタン的な世界を思い浮かべる人も多いだろう。黒づくめのニヒルな殺し屋、土漠に林立する十字架の墓、砂塵の舞うゴーストタウン……と、たしかにマカロニウエスタンを思い起こさせる要素は多い。 が、実際に観て受ける印象は、その正反対だったりする。 マカロニウエスタンは汗臭く泥臭い、ギラギラした世界。それに対して本作に描かれるのは、どこまでも虚無的な世界。 大金を何とか我が物として、この不毛から抜け出したい。そう思って必死に足掻くものの、どうやってもそこから出られない。ある男の、そんな理不尽な悪夢が展開されていく。そして迎える、あまりに惨めな最期……。 男を追いつめる殺し屋を演じるアンソニー・ドーソンが見た目からして実に恐ろしく、そのサディスティックな言動とあいまって死神にしか見えなくなる。 が、実は死神は別にいた。そして、その死神もまた不毛な虚無を抱えてさまよい続ける……。そんな想いに駆られるラストシーンだった。 この悪夢感、病みつきになりそうだ。

21/5/16(日)

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