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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

トゥルーノース

人を故意に監獄のような閉鎖空間に押し込め強制労働させたり拷問することは、もちろんダメです。しかし現実世界ではそんなことが繰り返され、それを告発する映画も続々と登場しています。北朝鮮の政治犯強制収容所を舞台にした本作品もその一つです。 1960年代に日本から北朝鮮に帰還したパク一家は、家族全員が政治犯強制収容所に送還されてしまいます。そこでは監視、密告、そして処刑という陰湿でむごたらしい悪の連鎖が繰り返され主人公ヨハンは純粋で優しい心を失う一方、母と妹は人間性を失わず倫理的に生きようとします。絶望の淵でヨハンは「人は何故生きるのか」の意味を探究し始め、自分のためでなく他者に奉仕することに生きる意味を見つけます。やがてヨハンは他の収監者を巻き込み、収容所内で反逆の狼煙をあげるのですが。 多くの脱北者から聴き取りしたという衝撃的な内容は実写ではなく3Dアニメーションにすることで観客が共感しやすい寓話的なお話にすることに成功しています。 舞台も手法も異なりますが、カンボジアの内戦を描いたリティ・パニュ監督の『消えた画 クメール・ルージュの真実』も土人形を使った静止画像は観客に次の動きを想像させ、かえって虐殺の非人間性を告発する内容となっていました。悲惨さを強調するのも、逆に和らげるのもアニメは得意なのかも知れません。

21/5/29(土)

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