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水先案内人のおすすめ

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時代劇研究家ですが趣味は洋画観賞。見知らぬ世界に惹かれます。

春日 太一

映画史・時代劇研究家

モスル~あるSWAT部隊の戦い~

年間ベスト級の傑作だ。 舞台はイラク第二の都市・モスル。ISに蹂躙され、破壊し尽くされていた街で、ISと対峙するイラクSWAT部隊のあまりに壮絶な死闘が描かれる。 家族をISに殺された者たちで構成された部隊は、なぜだか国軍からも米軍からも孤立し、独自に動いていた。そして、自爆テロ、狙撃、ドローン爆弾。あらゆる手を使いながら襲いかかる敵の攻撃により、ひとりまたひとりと命を落としていく。 細部までリアルに作られたモスルの廃墟となった街並のセット、ドキュメントタッチの生々しい映像、恐ろしさを耳に伝えてくる銃声の効果音……といった要素が抜群の臨場感をもたらし、この生き地獄のような世界に自分も足を踏み込んでいるような錯覚に囚われる。例え話ではなく本当に息を吐くことすら忘れてしまうほどだ。 銃声も爆音も硝煙も死も、日常の光景の中に当然のものとして存在している世界。主人公たちは投降する者も容赦なく射殺、銃撃により息も絶え絶えのIS兵を「苦しませておけ」とあえて放置するなど、非情な描写が連続し、綺麗事の入り込む余地は全くない。 徹底してシニカルな展開なのだが、これまで観客に明かされてこなかった彼らのミッションが終盤に明らかになる瞬間、たまらない感動が巻き起こる。 歴戦をくぐり抜けた刻印がそれぞれに浮かび上がる、隊員たちの横顔もたまらなく魅力的。 とにかく何もかも圧巻である。

21/11/17(水)

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