Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

三鷹市芸術文化センターで、演劇・落語・映画・狂言公演の企画運営に従事しています

森元 隆樹

(公財)三鷹市スポーツと文化財団 副主幹/演劇企画員

MONO『その鉄塔に男たちはいるという+』

この『水先案内人』コーナーは、今後上演される公演のご紹介ということで依頼されているので、「AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)」「サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)」「四日市市文化会館」「北九州芸術劇場」であれば観劇に行けたという方々には、誠に申し訳なく思っています。今回は、東京公演を残すのみとなっております、劇団MONO『その鉄塔に男たちはいるという+』のご紹介であることをお許しください。 //////// 『その鉄塔に男たちはいるという』 残念ながら初演(1998年12月/伊丹AI・HALL)は拝見していない。それゆえ、初見となったのは2001年5月、中野ザ・ポケットにおけるOMSプロデュース公演の時であった。と書くと、MONOの公演としての『その鉄塔に男たちはいるという』は拝見できていないことになるが、このプロデュース公演においては、 作・演出=土田英生 出演=水沼健/奥村泰彦/尾方宣久/金替康博/土田英生 美術=奥村泰彦  作は言うまでもなく演出も土田英生さんだし、出演もMONO不動の男優陣5人、そして美術も奥村泰彦さんということで、ほぼほぼMONOの公演を拝見したとさせていただいても良いのではないかと思う。 そして、その公演が素晴らしかった。もう本当に素晴らしすぎた。賛辞を贈るのに、ありふれた修飾語を用いるのが躊躇(ためら)われるほどの舞台がそこにあり、劇場を出て中野駅までの道のりを、舞台の反芻が脳内を撹拌させ、およそふらつきながら歩いていた記憶がある。 脚本・演出・役者の演技、そして音響・照明・舞台美術と、そのすべてに隙がなく、ただただ圧倒されたのである。 特に、男たち3人が会話をしていて、なにげなくその会話が進んでいくうちに、その中の2人が実は仲が悪いことが炙り出されていく脚本のくだりがあまりにも見事で、「説明的なセリフを排し、会話の中から人間関係を浮かび上がらせていく」お手本のような脚本であった。これは好みの問題になるかとは思うが、説明的なセリフというのが私は苦手で、なんとか会話の中に落とし込んで、その時々の感情や関係性を浮かび上がらせていってもらえたらと思うことが時々ある。そんな時に思い出すのが『その鉄塔に男たちはいるという』の脚本であり、いつかまた拝見したいと、心から願っていた。 <<<>>> 外国の戦地に慰問に来ていたグループが突然消えた。噂によればその鉄塔に男たちはいるという。 1998年に初演。戦争という過酷な状況の中、鉄塔の上で交わされる下らないやり取りを描き好評を博した。それ以来、数々の団体によって上演され続けている劇団代表作をオリジナルメンバーで上演。同じ場所で展開する時間軸の違う短編をプラスし新たな地平で物語は完結する── <<<>>> 劇団ホームページにそう記されているとおり、劇団の代表作として、劇団創立30周年記念公演の掉尾を飾るべく、20年ぶりに再演。タイトルの末尾に付けられた + すなわち[同じ場所で展開する時間軸の違う短編]がもたらすシナジーにも期待しつつ、東京公演の客席に着きたい。

20/3/13(金)

アプリで読む