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水先案内人のおすすめ

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生きのいい日本映画を中心に、大人向け外国映画も

平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

アルプススタンドのはしの方

全国高等学校野球選手権大会が中止になった今夏こそ、見ていただきたい。夏の甲子園大会一回戦、夢の舞台でスポットライトを浴びる選手たちを観客席の端っこで見つめる、さえない4人(小野莉奈、平井亜門、西本まりん、中村守里)の物語。 原作は兵庫県東播磨高校演劇部が上演し、第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞に輝いた戯曲。弱小の県立高校が夢の舞台へ。その初戦を見守る4人。夢破れた演劇部員の2人(小野、西本)、遅れてやってきた元野球部員(平井)、帰宅部の成績優秀女子(中村)は応援しながらも、それぞれに悩みや葛藤を抱えている。一方、グラウンドは予想に反して、白熱した展開に。やがて、いろんなものを諦めてきた4人の声援に熱を帯びていく……。 試合展開は一切見せず、スタンドの熱、声、吹奏楽部の演奏だけで見せていく。舞台転換はほとんどないが、飽きず見せたのは演出力、若手の演技、編集のなせる技。監督はピンク映画を100本以上手掛けてきた城定秀夫氏。職人としての確かな腕が光る。 唯一残念なのは、ロケ地が甲子園球場ではないこと(ロケ地は平塚球場)。甲子園のアルプススタンドには独特な雰囲気がある。そこが使えないなら、舞台を地方大会の決勝にしてもよかったのでは、と思ったが、それを差し引いても、面白い。 このコーナーは基本、月3本というルール。今月は『二人ノ世界』『劇場』を紹介し、締めは大林宣彦監督の遺作『海辺の映画館 キネマの玉手箱』と決めていたが、あえて、“はしの方”にいるこのインディーズ映画を取り上げた。頑張れ、はしの方! 映画ファンだけではなく、高校野球ファンもぜひ!

20/7/22(水)

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