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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙

1933年に竣工したアール・デコ様式の旧朝香宮邸。何度も訪れてきた美術館であるにも関わらず、現代美術作品が置かれることで、これまでほとんど認識してこなかった建物の細部に目が止まる。例えば正面入り口に置かれているブロンズ製の一対の狛犬像。庭沿いに歩いて建物アーチの左側から美術館受付に向かうことが多く、この狛犬を注視することなどほとんどなかった。 ところが、狛犬の両側に加藤泉の小さな立体作品があり、近寄って改めて見ると、かなり凝った作りの見事な狛犬像であることに気づく。アール・デコ建築と狛犬という取り合わせの妙(?)に「んんん??」と思ったり。 そしてフランスの国立セーヴル製陶所に特注された「香水塔」が常設展示されている次室のガラス扉。通常はドレープつきの白いカーテンが掛けられているのだが、今回は山口啓介の植物や種を封じ込めた「カセットプラント」で覆われている。ステンドグラスのような植物の彩りが、香水塔の優美な形態を引き立てる。 姫宮居室のドアの上には小林正人の小品。それを見ようと後ずさりすると赤・白・黄の星型正多面体の照明が目に入る。「あれ?こんなところに照明があったっけ?」。壁の質感や壁紙の色、床のモザイク、暖炉の火除け、照明器具、窓から差し込む穏やかな自然光......。内装や調度品を含め細やかなデザインの行き届いた空間と現代美術作品との対話を体験しつつ、まるで邸内探索しているようなワクワク感が楽しい。半開きの扉や思いがけない場所、受付の背後の壁なども要チェック。明るい時刻では視認しずらい志村信裕の映像作品が2点あるため、訪問する時間帯にも気を配りたい。

20/11/8(日)

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